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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第一 基準の性格 ②

害福祉サービスの指定取消後の再申請と基準条例化についてわかりやすく解説

記事の概要: 
障害福祉サービス事業を運営する上で知っておきたいポイントを、やさしくシンプルに解説します。本記事では、運営基準に違反して指定取消(指定の取り消し)となった場合に再び指定を申請するときの注意点と、指定基準が厚生労働省の省令から都道府県条例へ移行した制度変更(いわゆる基準条例化)について取り上げます。

運営基準違反による指定取消後に再申請するときの注意点

障害福祉サービス事業者がサービスの運営基準を守らず不適切な運営を続けた場合、行政から指導や勧告を受け、それでも改善されないと最終的に指定取消(指定の取り消し処分)を受けることがあります。指定を取り消されると、その事業所は障害福祉サービスを提供する資格を失い、以後サービスを提供できません。

指定取消となった事業者が再び事業を続けたい場合、すぐに再申請してもう一度指定を受け直したいところですが、法律上一定期間(通常は5年間)その事業者は新たな指定を受けることができません。つまり指定取消処分から5年が経過するまでは再申請できない決まりです。この期間は事業を立て直すための猶予とも言えます。

5年が経過して再申請できるようになった後でも、再指定を受けるハードルは非常に高くなります。行政側は過去に運営基準違反で指定取消しとなった事業者に対し、再び同じ過ちを繰り返さないか慎重に判断します。具体的には、運営基準を遵守できる体制になっているかを厳しくチェックし、改善が十分確認できない限り再指定は認められません。そのため、再申請に臨む事業者は、取り消しの原因となった問題(スタッフ体制の不備や記録ミスなど)を徹底的に改善し、改善内容を示す資料や再発防止策を用意しておく必要があります。

また、法人の場合は役員等に注意が必要です。仮に他の法人に名称を変えて申請しても、役員の中に過去5年以内に指定取消処分を受けた人物がいる場合、その法人も指定を受けられない決まりがあります。不適切運営で処分を受けた人が看板を付け替えて再参入することを防ぐための規定です。

基準が厚労省令から都道府県条例へ移行した制度変更とは

障害福祉サービスの指定基準(人員や設備、運営に関する基準)は、以前は国の厚生労働省令で全国一律に定められていました。しかし、2013年(平成25年)4月の制度改革により、これらの基準は各都道府県の条例で定める方式に変更されています。これを基準の条例化と呼びます。簡単に言えば、国が細かく決めていたルールを各都道府県が自らの条例として定め直したということです。

基準が条例化されたことで、地域の実情に応じた柔軟な運用が可能になりました。ただし、基準の内容自体が大きく変わったわけではありません。多くの都道府県では従来の厚労省令の内容を引き継いで条例を制定しており、事業者が守るべき具体的な運営基準の項目(例:人員配置や設備要件など)は基本的に全国共通です。とはいえ、一部の基準について自治体独自の追加ルールや緩和措置が設けられている場合もあるため、事業所の所在する都道府県の条例や施行規則を必ず確認しましょう。

基準条例化の趣旨や具体的運用については、厚労省が平成23年10月7日付の障害保健福祉部長通知(障発第1007第1号)で詳しく説明しています。事業者として制度変更の背景を理解しておくことは有益ですが、実際の運営では最新の都道府県条例と自治体からの案内に従うことが何より大切です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 指定取消後の再申請は容易ではない
    指定障害福祉サービス事業者の指定取消処分を受けた場合、法律で定める5年間は新規の指定を受けられません。5年経過後に再申請する際も、行政は以前の問題点の改善を厳しく確認し、改善が不十分なら再指定は認めません。
  • 再スタートには徹底した改善が必須
    再申請を目指すなら、運営基準違反となった原因(例:人員不足や記録不備)を洗い出し、すべて是正することが不可欠です。改善策の実施状況や再発防止の仕組みを整え、申請時に示せるようにしましょう。必要に応じて当事務所をはじめ専門家の助言を得て、信頼回復に努めてください。
  • 基準の条例化でローカルルールを確認
    2013年の基準条例化によって、障害福祉サービスの指定基準は各都道府県条例で定められています。地域ごとに細部が異なる可能性があるため、必ず所在地の都道府県の条例や関連規則をチェックし、最新の基準に沿った運営を心がけましょう。
  • 国の通知も参考に
    厚労省から出された基準条例化に関する通知(平成23年10月7日付障発第1007第1号)には、制度変更の背景や解釈が示されています。時間のあるときに目を通し、国が示す運営上の考え方も把握しておくと安心です。
  • 起業希望者は欠格要件に注意
    新規に障害福祉サービス事業に参入したい起業希望者は、自身や関係者が過去に指定取消し処分を受けていないか確認しましょう。5年以内に指定取消を受けた経歴がある場合や、そのような人物を役員に迎える場合は、法律上指定を受けることができません 。健全な運営体制と適切な人材でスタートを切ることが大切です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。