機能訓練指導員とサービス管理責任者の配置基準とは?厚労省通知をわかりやすく解説
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厚生労働省の通知文書に基づき、障害福祉サービス事業で重要な役割を持つ機能訓練指導員とサービス管理責任者について解説します。専門的な用語も出てきますが、やさしくシンプルに説明します。特に、機能訓練指導員に他の職種で代替できる条件や、サービス管理責任者の専従(せんじゅう)の原則・兼務(けんむ)の例外、1人あたり利用者60人という上限ルールなど、現場で押さえておくべきポイントを丁寧にまとめます。
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機能訓練指導員とは?代替可能な職種と柔軟な訓練内容
機能訓練指導員(きのうくんれんしどういん)とは、障害者施設などで利用者の日常生活機能の維持向上のための訓練を担当するスタッフです。法律上は理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)といったリハビリの国家資格を持つ人を配置することになっています。しかし「PT・OT・STを雇いたくても見つからない…」ということもありますよね。厚労省の通知では、こうした専門職の確保が困難な場合には、代わりに看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師など「日常生活に必要な機能の衰えを防ぐ訓練ができる能力を持つ者」で代替してもよいと示されています。要は、リハビリの専門資格者がいない場合でも、利用者の機能訓練がきちんとできるスキルを持った人であれば機能訓練指導員の役割を担えるという柔軟な取扱いです。
では、機能訓練として具体的に何をするのでしょうか? 実は堅苦しく考える必要はありません。機能訓練とは、利用者が生活する上で必要な体の機能が落ちないようにするための運動や動作の練習です。専門的なリハビリテーションだけでなく、日常生活やレクリエーション(余暇活動)の中で行う簡単な体操や動作練習も立派な機能訓練になります。厚労省の通知でも、生活の中やレク行事を通じて行う機能訓練であれば、普段の生活支援員(ケアスタッフ)が兼務して行っても差し支えないとされています。例えば、レクリエーションで体を動かすゲームをしたり、日常の家事動作を練習したりすることも機能訓練の一環です。それらは専門職だけでなく介護職員が日々の支援の中で担当しても問題ないということです。このように機能訓練指導員の役割は意外と幅広く、事業所の状況に応じて資格を持つ他職種で代替したり、日常活動に組み込んだりできるようになっています。
サービス管理責任者とは?専従の原則と60人ルール
サービス管理責任者(サービスかんりせきにんしゃ)とは、障害福祉サービス事業所において個別支援計画の作成やサービス提供の質の管理を担う責任者です。利用者一人ひとりの課題を把握し、適切な支援計画を立て、提供したサービスの効果を評価する――いわばサービスの舵取り役となる重要なポジションです。そんなサービス管理責任者については、まず専従で配置するのが原則と定められています。専従とはその仕事に専念すること、つまりサービス管理責任者は本来、日常の介護・支援業務を行う生活支援員とは別の職員をあて、サービス管理業務に集中させるべきだという考え方です。サービスの客観的な評価や計画改善を行う立場なので、現場で直接ケアをするスタッフと兼ねると公正な視点が保ちにくいためです。
とはいえ、事業運営上どうしても人手に余裕がない場合もあります。そこで通知では例外的な兼務も認められています。利用者へのサービス提供に支障がないことを前提に、サービス管理責任者が他の職務を掛け持ち(兼務)することも可能です。ただし、その際の注意点として人員基準の数え方にルールがあります。サービス管理責任者が兼務先で働いた時間は、兼務先のスタッフ配置数に含めてはいけないとされています。言い換えると、サービス管理責任者が現場のケアを手伝ったとしても、それはあくまで「プラスアルファ」の助けであり、必要な職員数を計算する上では最初からいないものとして扱う必要があるのです。例えばデイサービスの人員配置基準で「生活支援員○名以上」と決まっている場合に、サービス管理責任者が介護業務を兼務しても、その人を生活支援員○名の中に数えてはいけないという意味です。現場の柔軟なやりくりは可能ですが、人件費節約のためにサービス管理責任者に他の仕事もやらせて人数をごまかす、ということはできないので注意しましょう。
さらに覚えておきたいのが、サービス管理責任者1人あたりが担当できる利用者数の上限です。厚労省の通知によれば、1人のサービス管理責任者が計画作成等を担当できるのは利用者最大60人までとされています。この「60人」という数字がいわゆる担当上限人数です。では61人いる場合はどうするのかというと、サービス管理責任者を2人に増やす必要があるということになります。実際の配置基準では、利用者数に応じて必要なサービス管理責任者の人数が決まる仕組みです。事業規模が大きく利用者が多い場合は、それに見合ったサービス管理責任者を複数配置しなければなりません。
逆に、小規模な事業所が複数ある場合はどうでしょうか。通知では、この60人ルールの範囲内であれば1人のサービス管理責任者が複数事業所の責任者を兼務することも差し支えないとされています。例えば、利用者30人の施設Aのサービス管理責任者が、利用者10人の施設B(訓練施設など)のサービス管理責任者を兼ねるケースでは、合計40人で60人以内に収まるため問題ありません。一方、合計利用者数が60人を超えるような兼務は認められないので注意が必要です。グループホーム(共同生活援助)など定員が小さい事業所では、一人のサービス管理責任者がいくつかの拠点を受け持って効率よく管理することもできます。その際もトータルで利用者60名までという条件を守り、サービスの質が落ちないようにしましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 機能訓練指導員は他職種で代替可能: PT・OT・STなどリハ専門職が確保できない場合、看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などでも機能訓練指導員の役割を代替できます。ただし、利用者の機能維持の訓練ができるスキルを持つ人であることが条件です。
- 日常生活上の活動も立派な訓練: 機能訓練は特別なリハビリだけでなく、日常生活やレクリエーションの中で行う運動や作業も含まれます。普段の生活支援員が兼務して訓練を行っても差し支えないので、日々の活動にうまく取り入れて利用者の機能低下を防ぎましょう。
- サービス管理責任者は基本専従: サービス管理責任者は原則として現場のケア業務と兼務せず専従で配置する必要があります。計画作成・モニタリング業務に集中させ、客観的な視点でサービス向上を図るためです。
- 兼務する場合は人員算定に注意: サービス管理責任者が他の職務を兼務すること自体は可能ですが、その人の働いた時間は兼務先の必要職員数を計算する際に含めてはいけません。兼務させるときは、あくまで追加で手伝ってもらう感覚で、人員配置基準は別途満たすようにしましょう。
- 担当できる利用者数は最大60人まで: サービス管理責任者1人が受け持てる利用者は60人が上限です。61人以上の規模ならサービス管理責任者を増やす必要があります。また、一人で複数事業所を兼務する場合も合計利用者数が60人以内であることが条件となります。
