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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 1 人員に関する基準 (1) ⑤

害者支援施設で就労継続支援B型を提供する場合の人員配置要件


記事の概要:
障害者支援施設が就労継続支援B型サービスを提供する際に必要となる人員配置の基準について、厚生労働省の通知(基準第4条第1項第5号)に基づきやさしくシンプルに解説します。この記事では、該当する基準の逐条解説を行い、職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者に関する具体的な配置要件についてみていきます。

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職業指導員・生活支援員の配置基準

職業指導員とは、利用者に対して仕事の指導や作業訓練を行うスタッフのことで、生活支援員は利用者の生活面でのサポートや身の回りの支援を担当するスタッフです。就労継続支援B型ではこの両方の役割が必要とされます。では、その配置基準の中身を具体的に見てみましょう。

まず、大前提として「職業指導員と生活支援員の合計人数」が、常勤換算方法で利用者数を10で割った数以上でなければなりません。これは簡単に言うと、「利用者10人につき少なくともスタッフ1人」という割合です。例えば利用者が25人であれば、25÷10=2.5人となりますので、切り上げて最低でも3人の職業指導員・生活支援員を配置する必要があります。利用者が10人以下の場合でも、スタッフの合計は必ず1人以上確保しなければなりません。人数計算にはパート職員も時間に応じて換算(常勤換算)できますが、いずれにせよ必要な延べ人数を満たすよう配置します。

さらに、職業指導員と生活支援員のそれぞれの職種について最低1名以上は配置しなければなりません。つまり、どんなに利用者が少なくても職業指導員ゼロ、生活支援員だけという体制は認められず、両方の職種をそれぞれ1人以上置く必要があります。小規模な事業所でも職業指導員1名+生活支援員1名は最低でも確保することが求められます。

最後に、職業指導員と生活支援員のうち少なくとも1人以上は常勤でなければならないという決まりがあります。常勤とはフルタイムで勤務する職員のことで、利用者支援の中心となる人員は常勤であることが望ましいという趣旨です。

サービス管理責任者の配置基準

サービス管理責任者(いわゆる「サビ管」)とは、個々の利用者ごとの支援計画の作成や進捗管理を担う責任者であり、事業所におけるサービスの質を管理・向上させる重要な役割を果たすスタッフです。

サービス管理責任者の配置数は、利用者の数に応じて必要数を置くものとされています。具体的には、就労継続支援B型では利用者60人につき1人以上のサービス管理責任者を配置する必要があります。言い換えると、利用者が最大60人までならサビ管は1名で足りますが、61人以上になると2人目のサービス管理責任者が必要になる計算です(以降、60人増えるごとに1名追加)。この配置基準は生活介護など他の施設系サービスと同様で、日中活動系サービスでは「60対1」が目安となっています。グループホーム(共同生活援助)など居住系サービスでは基準が「30対1」と厳しくなっていますが、就労系サービスでは60名に1名という基準になっている点が特徴です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 最低2職種・計2名以上の配置が必要:就労継続支援B型を障害者支援施設で行う場合、どんなに利用者が少なくても職業指導員と生活支援員を各1名ずつは配置しなければなりません。極端な例として利用者が1~2名程度でも、スタッフは少なくとも2名(各職種1名ずつ)必要です。
  • 常勤スタッフと非常勤スタッフのバランス:人員計算上は非常勤スタッフの組み合わせで必要人数を満たすことも可能ですが、常勤スタッフが必須である点に注意が必要です。少なくともフルタイム職員を1人は置き、サービスの質と継続性を担保しましょう。常勤がゼロの体制では基準違反となるだけでなく、利用者対応や緊急時対応にも支障をきたす恐れがあります。
  • サービス管理責任者の資格要件と計画:サービス管理責任者(サビ管)になるためには一定の実務経験や研修修了などの資格要件を満たす必要があります。事業を新たに始める場合、サビ管となれる人材を事前に確保しておくことが重要です。小規模事業所では施設長や他の職員がサビ管研修を受けて兼任するケースもありますが、いずれにせよ計画的に人材育成・確保を行いましょう。また、利用者増加に伴い2人目のサビ管が必要になる可能性もあるため、中長期的なスタッフ育成計画も念頭に置いてください。

よくある疑問:なぜA型ではなくB型だけが対象なのか?

ここで、「どうして障害者支援施設ではA型(就労継続支援A型)ではなくB型だけが対象になっているのだろう?」という疑問について触れておきます。

障害者支援施設で提供される就労継続支援サービスは、A型ではなくB型のみが想定されています。その理由は、提供対象となる利用者層や制度設計の違いにあります。A型は利用者と雇用契約を結んで最低賃金以上の給与を支払う「雇用型」の事業であり、勤務時間や業務遂行能力の管理が厳格です。これに対し、B型は雇用契約を結ばず、利用者の体調や能力に応じて作業量を調整し、その成果に応じて工賃(作業報酬)を支払う仕組みです。施設入所者には、必ずしも定められた時間や業務内容をこなせない方も多く、A型では参加が難しい場合があります。一方B型なら、無理のない範囲で日中活動に取り組めるため、支援施設の主たる機能である生活支援や日中活動支援と親和性が高いのです。また、A型事業所は一般的に別法人・別事業所として運営されるため、障害者支援施設の指定基準には組み込まれていません。その結果、支援施設では利用者の特性に合わせた柔軟な支援が可能なB型が採用されているのです。

障害者支援施設はもともと、入所サービスや生活介護を中心に運営されてきた歴史があります。前身の「授産施設」時代から、入所者の生活と作業活動を一体的に行う流れがあり、2006年の制度再編後も多くの施設がB型事業を併設しています。こうした施設では、入所者が同じ場所で安心して作業に取り組める環境が整い、通勤の負担なく日中活動に参加できるメリットがあります。また、地域から通所利用する方にとっても、施設の設備や支援ノウハウを活かした手厚いサポートが受けられる点が評価されています。さらに、B型で作業経験を積んだ利用者が、体力や技能を高めてA型事業所や一般就労へステップアップするケースも増えており、B型は単なる「働く場」以上の役割を果たしています。利用者の可能性を広げる場として、障害者支援施設においてB型は重要な機能を担っているのです。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。