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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 1 人員に関する基準 (1) ⑥

設入所支援とは?生活介護・就労継続支援との違いと夜勤体制などをわかりやすく解説


記事の概要:
「施設入所支援」とはどんな障害福祉サービスでしょうか? 本記事では、厚生労働省の通知にある「施設入所支援(基準第4条第1項第6号)」の記述をもとに、このサービスの特徴をやさしくシンプルに解説します。指定障害者支援施設に付随する支援であるという独自性から、通常の生活介護や就労継続支援とどう違うのかを丁寧に説明します。

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施設入所支援とは何か?

「施設入所支援」は、障害のある人が入所して生活する施設(障害者支援施設)で提供されるサービスの一つです。簡単に言うと、夜間を中心に、入所者の日常生活を支える介護やサポートを行うサービスです。たとえば、夜寝る前や早朝の入浴・排せつ・食事の介助、夜間の見守り、生活上の相談やアドバイスなど、24時間体制の施設生活で必要となるお世話全般を担当します。

ポイントは、施設入所支援は単独では成り立たないサービスだということです。これは「障害者支援施設」に入所している人だけが対象であり、その施設の中で提供されるものだからです。別の言い方をすると、施設入所支援は“住まい(入所施設)”で受ける夜の支援であり、これと対になるように同じ施設の昼間には別のサービス(後述する生活介護、自立訓練、就労支援など)が提供されています。したがって、施設入所支援だけを切り離して受けたり、事業者が施設入所支援だけを提供したりすることはできない仕組みになっています。

施設入所支援は夜間の生活場面を支えるサービスであり、生活介護や就労支援などは昼間の活動を支えるサービスです。また、生活介護・就労支援等は利用者が自宅や他の施設から通って利用できるのに対し、施設入所支援はその施設に入所している人限定のサービスです。言い換えれば、生活介護等は「通いのサービス」、施設入所支援は「住まいのサービス」という違いがあります。

夜間の支援体制:夜勤と宿直の違い

施設入所支援の最大の特徴は夜間のケアです。夜の間、入所者は眠って過ごしますが、トイレ介助が必要になったり、体調を崩したりと、介護職員の助けが求められる場面が出てきます。そのため施設入所支援では、午後10時から翌朝5時を含む連続16時間にも及ぶ夜間帯にわたり、適切な介護を提供できるよう生活支援員(介護スタッフ)を配置しなければならないと定められています。

では「夜勤を行う生活支援員」とはどんな勤務形態でしょうか?一般に「夜勤」とは、職員が夜間の時間帯に起きて働き、利用者の介助や見守りを行う勤務を指します。例えば交代制で夕方から翌朝まで通しで勤務し、その間は仮眠程度で基本は起きてケア対応するイメージです。夜勤者がいることで、夜中にトイレに起きた入所者や体調変化があった入所者にすぐ対応できます。

一方で、通知では例外的な夜間支援の形も示されています。それが「宿直」です。通知によれば、利用者が生活介護以外の昼間サービス(例:就労移行支援や自立訓練など)を利用している場合には、夜間の支援について宿直勤務の職員1名以上を確保すれば足りるとされています。これは、比較的自立度の高い入所者(昼は他のサービスを利用している人)ばかりのユニットでは、夜間に常に起きて働く職員を配置しなくてもよいという意味です。宿直とは、職員が施設内で夜を過ごし待機する勤務のことです。宿直の職員は原則として夜間に寝ることが許されており、何か緊急時や利用者から呼ばれた時だけ起きて対応する役割です。したがって、夜間に頻繁な介助が不要な比較的支援度の低い入所者グループには宿直対応でも十分と判断されるわけです。

サービス管理責任者は兼務が可能

障害福祉サービス事業には、利用者一人ひとりの支援計画のとりまとめやサービス品質の管理を行うサービス管理責任者(略してサビ管)というスタッフを置くことが義務付けられています。通常、生活介護や就労継続支援B型といったそれぞれのサービスごとに専任のサービス管理責任者を配置する必要があります。しかし、施設入所支援に関しては例外があります。

厚労省の通知では、施設入所支援に係るサービス管理責任者は、原則としてその施設で昼間提供しているサービスのサービス管理責任者が兼ねるものとする、と明記されています。簡単に言えば、同じ障害者支援施設内で昼間行われている生活介護や就労支援などのサビ管が、夜間の施設入所支援もまとめて受け持ってよいということです。したがって、新たに別のサビ管を追加で雇う必要は基本的にありません。これは施設入所支援が独立した事業ではなくあくまで付随サービスであることを踏まえた運用と言えます。もちろん、兼務によって支援内容の管理に支障が出ないことが前提です。規模が大きかったり業務負担が重い場合は、施設ごとに体制を整える配慮も必要でしょうが、制度上は一人のサービス管理責任者が昼も夜も両方のサービスを管理できるようになっています。

「入所単位30人以上」の基準とは?

通知にはもう一つ重要なポイントとして、「施設入所支援の単位ごとの利用定員は30人以上である必要がある」と記されています。この「単位」とは、施設入所支援を提供する一つのまとまり(グループ)のことです。平たく言えば、障害者支援施設で施設入所支援を行う場合、少なくとも30人以上の入所枠を一つの単位として持ちなさいという基準です。

なぜこんな決まりがあるのでしょうか?これは施設入所支援がある程度規模の大きい施設向けのサービスであることを示しています。30人というのは利用定員(ベッド数)の規模を指しており、小規模ではなく中~大規模の入所施設であることが前提になっています。仮に入所者が数名~十数名程度しかいないような場合、そもそも障害者支援施設としての運営が想定されていないのです(そうした少人数での共同生活支援はグループホーム等別のサービス形態があります)。30人以上という基準により、ある程度まとまった人数の障害者が生活する施設だけが施設入所支援を提供できるようになっています。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 単独サービスではない点:施設入所支援は指定障害者支援施設に付随するサービスです。独立した事業所として開設することはできず、必ず生活介護や就労支援など昼間サービスとの一体運営になります。
  • 夜勤vs宿直の人員配置:夜間支援には夜勤職員を配置するのが原則。特に重度の障害で夜中も定期的な介護が必要な利用者がいる場合、起きて対応する夜勤体制が必須です。一方、昼間に生活介護以外のサービスを利用する利用者のみのユニットでは宿直対応も認められるため、人員計画に柔軟性が持てます(宿直は基本睡眠可ですが緊急対応要員として配置)。
  • サービス管理責任者の兼務:施設入所支援専属のサービス管理責任者を新たに配置する必要は基本ありません。既存の生活介護等のサービス管理責任者が兼務できるため、人材確保の面で負担が軽減されます。ただし兼務によって利用者支援の計画・管理がおろそかにならないよう、業務配分やサポート体制を工夫することが大切です。
  • 定員30人以上の規模要件:障害者支援施設として30名以上の入所定員を持つことが施設入所支援実施の前提です。小規模では成り立たないサービスであり、それだけ運営には十分なスペース・設備と人員が必要になります。新規開設を検討する際は、施設の規模要件を満たす計画(建物の確保や入所希望者数の見込み)であるか、自治体とも事前に確認しておきましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。