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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 3 運営に関する基準 (13) 

害者支援施設:基準第19条「利用者負担額の受領」を解説


記事の概要:
障害者支援施設では、サービス利用者(障害者)が負担する費用のルールが法律で定められています。本記事では、厚生労働省の通知文書に示された基準第19条「利用者負担額の受領」の内容を、やさしくシンプルに解説します。

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「利用者負担額」とは?

これは障害福祉サービスを利用する障害者が、自分で支払わなければならない費用のことです。制度上、サービス費用の一部を利用者が負担し、残りを公費(自治体)が負担します。その利用者負担額は原則としてサービスに要した費用の1割(10%)と定められています。政令で定める上限額がこの1割より低い場合は、その定められた額が利用者負担額になります。

法定代理受領と直接受領の違い:障害者支援施設では通常、事業者がサービス費用の残り90%を市町村から直接受け取ります。これを法定代理受領といい、利用者に代わって施設が公費分を受領する方法です。利用者は自分の負担分(1割)だけを施設に支払えば済み、行政への請求手続きは施設が行います。もし施設が法定代理受領を行わず利用者が費用の全額を支払う場合は、施設は利用者負担額に加えて残りの費用も利用者から受け取ることになります(実際にかかった費用が上限)。この場合、施設はサービス提供内容や費用を記載したサービス提供証明書を利用者に交付し、利用者が自治体に給付を請求できるようにする必要があります。

施設が別途徴収できる費用とは?

利用者負担額(1割)以外に施設が利用者から徴収できるお金はあるのでしょうか? 基準第19条第3項では、障害者支援施設が提供するサービスに付随して生じる日常生活上の費用について、定められた項目に限り利用者から支払いを受けてもよいとしています。言い換えれば、公費でカバーされない日常生活の費用で、利用者が自己負担すべきものが具体的に列挙されています。

サービス種別ごとに利用者が別途負担する代表的な費用は次のとおりです。

サービス種別利用者が別途負担する費用の例
生活介護など(日中サービス)食事の提供にかかる費用(昼食代等)、創作活動の材料費、日用品費 など
自立訓練・就労支援サービス食事の提供にかかる費用、日用品費 など
施設入所支援(入所サービス)食事の提供にかかる費用、光熱水費(電気・水道代等)、
特別な居室の利用料、被服費、日用品費 など

つまり、日中サービスでは主に食事代と日用品費、就労支援・自立訓練でも食事代と日用品費、入所施設ではそれらに加えて光熱水費や個室利用料、被服費などが利用者負担となります。施設での生活に必要な基本的な費用は、公費ではなく利用者が一部負担する仕組みになっているのです。

領収書の発行と事前の同意

施設が利用者からお金を受け取った際は、その都度領収書を発行する義務があります。基準第19条第5項に定められており、利用者負担額(1割)や上記の食費等の追加費用を受領したら必ず利用者に領収証を渡して記録を残します。領収書によって利用者も支払いを確認でき、トラブル防止につながります。

さらに、基準第19条第6項では事前の説明と同意が求められています。先述の食費や日用品費など追加費用が発生するサービスを提供する際には、あらかじめその内容と費用を利用者(または家族)に説明し、同意を得なければなりません。利用者の負担が増えるサービス提供は、事前に合意を取ることが原則です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 利用者負担額(1割)の厳守: 利用者負担額は法律で定められたもので、原則として利用者から必ず受領しなければなりません。勝手に無料にしたり値引きしたりすることはできません(減免が必要な場合は行政の制度で対応)。事業者は利用者負担額を正しく計算し請求する義務があります。
  • 追加徴収できる費用の範囲を理解: 食費や日用品費など、生活費は利用者から徴収できますが、その範囲は基準で限定されています。サービスと無関係のもの、またサービス費用と区別が曖昧なものは徴収禁止です。
  • 契約時に費用事項を明示: 利用者と契約を結ぶ際には、利用者負担額のほか、食事代や日用品費など利用者が別途負担する項目を説明し、重要事項説明書や契約書に明記しましょう。利用者や家族から「聞いていない費用がある」と不信を招かないよう、開業準備の段階で料金体系をわかりやすく提示することが大切です。
  • 同意と記録の徹底: 利用者から追加費用をいただく際は、事前に書面で説明し同意を得てください。また、受け取った利用者負担額や費用は領収書を発行するとともに会計記録にも残しましょう。透明性のある対応が利用者の信頼につながり、監査にも耐えうる運営になります。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。