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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 3 運営に関する基準 (16)

害者支援施設等における障害福祉サービスの取扱方針について


記事の概要:
本記事では、障害者支援施設等の運営基準第22条に定められた「施設障害福祉サービスの取扱方針」について解説します。特に第2項〜第4項の内容を取り上げ、利用者の意思決定支援、異性介助への配慮、サービスの質の向上という3つのテーマについてやさしくシンプルにまとめます。

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意思決定支援ガイドラインの基本原則(第2項)

基準第22条第2項では、サービス提供にあたり利用者の意思決定の支援に配慮することが求められています。具体的には厚生労働省の「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(平成29年通知)に示された基本原則を踏まえて支援を行う旨が明記されています。ガイドラインの主な基本原則は次のとおりです。

  • 原則1: 本人の自己決定を尊重すること … 支援において何よりも利用者本人の意思を尊重します。職員は利用者が自分で決めるために必要な情報をわかりやすく説明し、理解を助ける工夫をします。例えば、難しい選択肢が多いときは選択肢を絞って提示したり、写真やイラストを使って説明するなど、利用者が安心して意思表示できる工夫を行います。
  • 原則2: 本人の選択をできる限り尊重すること … 職員から見て「それはやめた方がいいのでは?」と思うような決定でも、他の人の権利を侵害しない限りは利用者の選択を尊重する姿勢が求められます。たとえその選択が利用者本人にとってリスクや不利益を伴う場合でも、頭ごなしに否定せずに最大限意思を汲み取ります。その上で、例えば健康面で心配がある場合は医師に相談する、金銭的なリスクがある場合は専門職と対策を検討する、といったように事前にリスクへの対処策を考えておき、できる範囲で本人の意思と安全の両立を図ることが大切です。
  • 原則3: 本人の意思を直接確認することが難しい場合の対応 … 重度の知的障害や認知症などで本人の意思表示がどうしても確認できない場合は、本人をよく知る家族や支援者、職員など関係者が集まって話し合います。過去の生活歴や日常の様子、表情・感情の動き、支援記録など様々な情報を集め、根拠を明確にしながら「この人は本当は何を望んでいるのだろう?」と推定の意思決定を行います。本人の人生背景をチームで共有し、できる限り本人の気持ちに沿った結論を導き出す工夫が求められます。

これらの原則は、障害者支援施設等で日々支援を提供する上での基本的な心構えと言えます。つまり、「利用者さんが自分の人生を自分で決められるよう最大限サポートしよう。そのために情報提供の工夫をし、たとえ職員の考えと違う選択でも本人の意思を尊重しよう。もし意思を確認できなければ、みんなで知恵を出し合ってその人の本当の気持ちを考えよう」ということです。支援者はこのガイドラインを念頭に置き、日々のケアや計画作成に当たる必要があります。

異性介助や支援計画の記録等への配慮(第3項)

基準第22条第3項では、支援上必要な事項を取扱方針に含めること、および支援提供時の配慮事項が定められています。まず、「支援上必要な事項」とは何でしょうか? これは、その施設で提供するサービスについて、利用者ごとの施設サービス計画の目標・内容はもちろん、年間行事や日々の生活スケジュールといった日常生活に関わる事項まで含む幅広い項目を指します。障害者支援施設等では、利用者の生活全般を支える立場から、個別支援計画(施設サービス計画)の目標や支援内容だけでなく、レクリエーション行事や日課など生活リズムに関することも含めて計画し、適切に運営していくことが求められます。

次に、第3項の大きなポイントとして「本人の意思に反する異性介助の防止」が明記されました。これは、例えば入浴や排泄などプライバシーに関わる介助の場面で、利用者本人が望んでいないのに異性の職員が介助を行うことがないように配慮しなければならない、という趣旨です。具体的に、サービス管理責任者等の職員は事前に利用者の意向をしっかり把握し、「男性職員・女性職員のどちらに手伝ってもらいたいか」といった希望を確認します。その上で、本人の意向を踏まえたスタッフ配置に努め、可能な限り同性介助を実現できる体制を整えます。近年の運営基準の見直しでも、「本人の意思に反する異性介助は行わないように」という趣旨が強調されており、施設側の配慮義務が明確になっています。

しかし、人員体制やシフトの関係で、どうしても希望に沿えない場合もあるかもしれません。その場合の対応も基準で示されています。利用者の意思(希望)が判明したら、必ず記録に残しましょう。 個別支援計画やサービス提供記録、面談記録などに利用者の意向をしっかり記載します。そして、希望に沿った支援体制を整えるために人員配置の見直しなど必要な検討を行います。それでもなお、例えば慢性的な人手不足などで十分に対応することが難しい場合には、その理由を利用者に丁寧に説明し、理解を得るよう努めることが求められています。このとき大事なのは、利用者の尊厳に配慮した説明を行うことです。「本当に申し訳ないのですが…」といった姿勢で、なぜ希望に添えないのか、代替策はないか、一緒に考える姿勢でコミュニケーションを取りましょう。利用者に寄り添った説明を尽くすことで、不本意な異性介助となる場合でも利用者の心情に配慮し、納得を得る努力が必要です。

自己評価・外部評価によるサービスの質向上(第4項)

基準第22条第4項では、障害者支援施設等におけるサービスの質の継続的な向上について規定されています。その内容は、簡単に言えば「事業者は自ら提供するサービスの質を評価し、さらに第三者による外部評価の導入にも努めて、常にサービスの質の改善を図らねばならない」というものです。これは利用者により良い支援を提供し続けるために、内部と外部の両面から定期的に見直しを行う仕組みを作りなさい、という趣旨です。

まず自己評価についてです。自己評価とは、その施設の職員や経営陣が自施設のサービス提供状況を客観的に振り返り、評価することです。例えば、職員会議で支援内容を振り返って「利用者のニーズに合った支援ができているか」「生活支援の記録や計画に漏れはないか」などをチェックしたり、定期的にサービス自己評価チェックリストを用いて点検する方法があります。利用者や家族からのアンケートを実施し、満足度や改善要望を収集するのもよいでしょう。重要なのは、現状の強み・弱みを把握して具体的な改善策につなげることです。評価結果を職員間で共有し、「ではどこを改善しよう」「次回までにこれを試してみよう」といったPDCAサイクルを回すことで、サービスの質は少しずつ向上していきます。

次に外部評価についてです。外部評価とは、第三者の専門機関や評価員など施設とは独立した立場の人にサービス内容を評価してもらうことです。自己評価だけではどうしても主観的になりがちですが、外部の目を入れることで客観的で公平な評価を受けることができます。厚生労働省も、可能な限り外部評価の導入に努めるよう求めています。具体的には、障害者支援施設等向けの外部評価制度や認証制度を活用したり、福祉サービス第三者評価を実施している団体に依頼したりする方法があります。評価者からは施設の長所や課題についてフィードバックが提供されるため、自分たちでは気づきにくかった改善点が見つかることもあります。外部評価の結果や提言は、ぜひ職員全員で共有してサービス改善計画に反映させましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 利用者の意思決定を最優先にする支援体制:利用者が「自分で決めた」と納得できるよう、情報提供は平易な言葉や図解を使ってわかりやすく行い、選択肢を絞るなど工夫する。職員全員が「それは利用者さんの望みか」を常に意識し、たとえ職員の価値観と異なる選択でも、本人の意思を尊重してサポートする姿勢を共有する。
  • 異性介助やプライバシー配慮のルール化と記録徹底:入浴介助などで利用者が「異性には介助されたくない」と希望した場合は、可能な限り同性の職員を配置する方針を運営マニュアルに明記し、職員研修で周知する。利用者の希望は必ず個別支援計画や面談記録に残し、希望に沿えない場合は理由を丁寧に説明し、納得を得るよう努める。
  • サービス品質向上のための評価と情報更新:施設として年1〜2回の自己評価を行い、チェックリストや利用者アンケートで強み・課題を洗い出す。また、第三者評価や外部専門家の意見を取り入れ、客観的な視点で改善点を抽出し実行する。あわせて、法令やガイドラインの改正情報を定期的に確認し、内容を職員研修で共有することで、常に最新の実務基準に沿った運営を心がける。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。