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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 3 運営に関する基準 (17) 後半

ービス管理責任者の役割と実務フロー


記事の概要:
障害者支援施設では、一人ひとりの利用者に対して施設障害福祉サービス計画(いわゆる個別支援計画)を作成し、それに基づき支援を行うことが法律で義務付けられています。この計画は、利用者や家族の希望、総合的な支援の方針、生活の質を向上させるための課題、提供するサービスの目標と達成時期、サービス提供時の留意事項などを盛り込んだ重要な書類です。サービス管理責任者(略称:サビ管)は、この計画の作成と実施プロセス全体を統括し、継続的なモニタリング(経過観察)を通じてサービスの質を向上させる役割を担います。この記事では、厚生労働省の定める基準第23条第2項の内容を踏まえ、サービス管理責任者が担う役割と具体的な実務フローを、やさしくシンプルに解説します。

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サービス管理責任者の役割

まず、サービス管理責任者とは障害福祉サービス事業所において利用者ごとの支援計画を作成・管理する責任者です。サービス管理責任者は、相談支援専門員(計画相談支援事業者)が作成した全体的なサービス等利用計画(ケアプラン)を踏まえて、事業所としての具体的な施設障害福祉サービス計画(個別支援計画)の原案を立案します。計画を立てる際には、まず利用者の置かれた環境や日常生活の状況を評価するアセスメント(事前評価)を行い、利用者本人や家族の希望する生活や課題を丁寧に把握します。このアセスメントでは、利用者の自己決定(自分の意思で決めること)を尊重し、判断が難しい場合は意思決定の支援にも配慮します。得られた情報をもとに、支援の方針や目標、提供すべきサービス内容を検討し、個別支援計画の原案を作成します。計画には、必要に応じて事業所外の医療サービスや他の福祉サービスとの連携内容も含めて盛り込まれます。なお、利用者の地域生活への移行(例えば施設から地域での暮らしへの移行)の希望を確認する地域移行等意向確認というプロセスを別の担当者が行っている場合には、その担当者と情報を共有し、その内容を計画に反映できるよう連携して進めます。

サービス管理責任者による計画作成と実施の実務フローは、大きく次のとおりです。

  1. 個別支援会議の開催 – サービス管理責任者は、利用者本人および当該利用者に支援を提供するスタッフ(必要に応じて地域移行支援の担当者も)を招集し、個別支援会議を開きます。この会議では、利用者の生活に対する意向(どう暮らしたいかの希望)を改めて確認し、事前に作成した支援計画の原案について参加者から意見をもらいます。個別支援会議は利用者本人が原則同席して行われます。例えば重い病気などで会議への同席が極めて難しい場合には、例外的にテレビ電話等を活用し、同席できなくても利用者の意思を確認する方法をとっても構いません。
  2. 計画内容の説明と同意の取得 – 個別支援会議で意見を踏まえて支援計画を調整したら、サービス管理責任者は計画(施設障害福祉サービス計画)の内容を利用者本人およびその家族に対してわかりやすく説明します。そして、計画に納得してもらえたら文書により利用者の同意を得ます。この書面同意は、利用者が計画内容を理解し承諾した証拠となる重要な手続きです。
  3. 計画書の交付と関係機関との連携 – 完成した施設障害福祉サービス計画書は、利用者本人に交付するとともに、その利用者のサービス等利用計画を作成した相談支援専門員(計画相談支援事業者)にも渡します。また、サービス管理責任者は相談支援専門員が開催するサービス担当者会議(支援に関わる関係機関合同の打ち合わせ)に参加し、利用者に係る必要な情報を共有するなど他のサービス提供者とも連携します。例えば、グループホーム職員や就労支援事業所職員など複数の支援者がいる場合、サービス担当者会議で個別支援計画の内容や進捗を共有し、お互いに支援方針を調整します。
  4. 定期的なモニタリングと計画の見直し – 支援の提供が始まった後も、サービス管理責任者は計画に基づく支援が順調に進んでいるかモニタリング(継続的な状況把握)を行います。具体的には、支援開始後の利用者の様子や目標達成状況を定期的に確認し、少なくとも6ヶ月に1回以上(自立訓練や就労移行支援を利用している場合は3ヶ月に1回以上)の頻度で支援計画の見直しを実施します。この定期見直しにより、現在の支援内容で適切か、改善が必要かを検討し、必要に応じて計画を変更(アップデート)します。例えば、半年ごとのモニタリングで利用者の状況が大きく変化していれば、目標や支援方法を修正した新しい計画を作成し直します。なお、モニタリングを行う際にも相談支援専門員との連携が求められます。モニタリング結果は事業所内で記録すると同時に、相談支援専門員にもフィードバックしお互いに情報を交付・共有します。必要に応じてサービス担当者会議や個別支援会議を合同で開催したり、相互に会議へ出席するなどの方法で連携を強化し、支援の質を高めていきます。

以上がサービス管理責任者を中心とした個別支援計画作成から支援提供、見直しまでの流れです。ポイントは、利用者の意思やニーズを起点に計画を策定し、その計画に基づいてサービス提供→評価→計画見直しというサイクルを回し続けることです。サービス管理責任者はチームの調整役として、このサイクルが適切に機能するようリードしていくことが求められています。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 利用者主体の計画作成と同意取得:アセスメントを通じて利用者本人・家族の希望や課題を正確に把握し、自己決定を尊重した個別支援計画を立案します。計画原案は利用者本人と支援スタッフが参加する個別支援会議で意見交換し、その後、利用者・家族へわかりやすく説明したうえで書面による同意を必ず取得します。

  • 関係者連携の徹底(個別支援会議・サービス担当者会議):個別支援会議では利用者、支援担当者、必要に応じて地域移行担当者を一堂に集め、計画原案への意見調整を行います。原則として利用者本人が同席し、同席が困難な場合はテレビ電話等で意思確認を行います。完成した計画書は相談支援専門員(計画相談支援事業者)にも速やかに交付し、サービス担当者会議で医療機関や他サービス事業所と情報共有・連携を強化します。

  • 定期的なモニタリングと計画見直し:支援開始後は、生活介護・就労継続支援B型利用者は半年に1回以上、自立訓練・就労移行支援利用者は3か月に1回以上、必ずモニタリングを実施します。モニタリング結果をもとに計画の妥当性を評価し、必要に応じて支援目標や方法を修正・再設定します。モニタリング情報は相談支援専門員とも共有し、場合によっては会議を合同開催するなど連携を強化します。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。