障害者支援施設等におけるサービス管理責任者の責務とは?
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障害福祉サービス事業を運営する上で欠かせないのが「サービス管理責任者」です。法律で各事業所にこの配置が義務付けられており、サービスの質を支える要となる重要な役職です。本記事では、厚生労働省の通知文書(基準第24条)に示されたサービス管理責任者の責務について、やさしくシンプルに解説します。
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サービス管理責任者とはどんな役割?
サービス管理責任者は、障害福祉サービス事業所で提供する支援全体を管理する役職です。利用者一人ひとりに対する個別支援計画(正式名称:「施設障害福祉サービス計画」)を作成し、その計画に基づいて支援が適切に行われるよう調整します。また、事業所内のスタッフを指導・育成します。
サービス管理責任者の主な責務
厚生労働省が定める運営基準(基準第24条)では、サービス管理責任者の具体的な責務として次のような業務が挙げられています。
- 利用者情報の把握・共有: 新しくサービスの利用申込みがあった際に、その利用者の生活環境や心身の状態を把握し、他に利用中の障害福祉サービスがあればその状況も確認します。必要に応じて関係機関と情報共有し、他サービスとの過不足がないよう調整します。
- 自立生活への支援計画・見直し: サービス利用中も定期的に利用者の様子をチェックし、その人が将来的に施設の外で自立できるかどうか検討します。自立できそうな場合は、地域で生活できるよう支援計画を見直し、必要な支援を行います。
- スタッフへの技術指導・助言: 事業所内の他のスタッフに対し、サービス提供の方法について技術的な指導や助言を行います。サービス管理責任者がスタッフをサポートすることで、事業所全体の支援スキルが向上しサービスの質が安定します。
利用者の意思決定支援の推進と体制整備
サービス管理責任者は、利用者本人の「こうしたい」という気持ちや希望に沿ったサービス提供ができるよう支援する責任を負っています。本人が自分の意思を言葉で伝えるのが難しい場合でも、周囲のスタッフと協力しながら「本人の本当の意向は何か?」を丁寧にくみ取る工夫が求められます。
その中で重要なのが、「意思決定支援」という視点です。これは、本人が自分で選んだと実感できる支援のあり方を意味し、近年ますます重視されています。厚生労働省が示す「意思決定支援ガイドライン」においても、意思決定支援を担う意思決定支援責任者という役割が示されており、この責任者の業務内容は、サービス管理責任者の役割と一部重なります。
ただし、サービス管理責任者と意思決定支援責任者を同一人物が兼ねることも可能ですが、別の職員を意思決定支援責任者として配置し、業務を分担する柔軟な運用も認められている点は重要です。現場の実情に応じて、役割分担しやすい体制づくりを考えることが推奨されます。
また、意思決定支援の質を高めるためには、専門的な知識の習得も欠かせません。特に、都道府県が実施する「意思決定支援コース」は、サービス管理責任者にとって非常に有益であり、受講することが望ましいとされています。これは、単に法令遵守のためだけでなく、実際に本人の意思を尊重するための実践力を高めるためのものです。
事業者・起業希望者が押さえるべきこと
- 責務の遂行がサービスの質を左右: サービス管理責任者が担う業務(支援計画の作成、利用者情報の把握、自立支援の検討、スタッフ指導、意思決定支援など)をしっかり実践することで、支援の質が向上します。これらを怠るとサービスの質が低下するだけでなく、行政からの指導や報酬減算(給付の減額)といったペナルティにつながる可能性があります。
- 利用者本位の支援を全スタッフで共有: サービス管理責任者は利用者本人の意思や将来像を尊重した支援をコーディネートする立場です。事業者・起業者はこの理念を事業所全体で共有し、利用者本位のサービス提供体制を整えることが求められます。
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