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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 3 運営に関する基準 (19)

域連携推進会議の義務化で知っておくべきこと


記事の概要:
障害者支援施設などの障害福祉サービス事業所では、地域との連携を強化する新しいルールが始まっています。地域連携推進会議の開催義務化を中心に、その背景や具体的な実施内容、事業者が押さえるべきポイントをわかりやすく解説します。地域住民との交流や第三者評価の活用など、やさしくシンプルにまとめました。この記事を読めば、地域連携の重要性と対応策がしっかり理解できるでしょう。

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はじめに:地域連携推進会議が義務化された背景

2024年度(令和6年度)の制度改正により、障害者支援施設や共同生活援助(グループホーム)で地域連携推進会議を定期的に開催することが求められるようになりました。これは従来努力義務(努めるべきこと)とされていた取り組みが、2025年度(令和7年度)から完全な義務になったという意味です。背景には、障害者が暮らす施設が外部から見えにくく閉鎖的になりがちだったことがあります。地域の人との交流が少ない環境では、支援の質の低下や利用者の孤立、場合によっては虐待の見逃しといった問題が指摘されてきました。そこで、地域の方々や専門家など外部の目を定期的に取り入れ、事業運営の透明性とサービスの質を確保し、利用者の権利を守ることが重要だと考えられるようになりました。こうした目的で制度化されたのが「地域との連携等」に基づく地域連携推進会議です。

1.地域に開かれた事業運営を行うこと

まず事業者には、地域に開かれた事業運営を行う責務があります。難しく聞こえますが、簡単に言えば「障害者支援施設等は、地域の一員として積極的に地域住民と交流・協力しましょう」ということです。具体的には、利用者が地域で安心して暮らせるよう、地域の住民やボランティア団体と日頃から連携・協力していくことが求められています。この交流により、事業所が地域から孤立せず開かれた存在となり、地域全体で障害のある方を支える土壌が育まれます。たとえば、地域のイベントに利用者と参加したり、ボランティアを受け入れたりすることで、お互いの理解が深まり、地域に根ざした支援につながっていくのです。

2.地域連携推進会議の設置と開催(年1回以上)

次に最も重要なポイントが、地域連携推進会議の設置と開催です。この会議は事業所が主体となって企画・開催するものです。会議のメンバー(地域連携推進員と呼ばれます)は、利用者本人やその家族、地域住民の代表、福祉や経営の有識者、市町村(自治体)の担当者など、外部の関係者を含めて構成します。このメンバーにより、事業所が提供しているサービス内容や運営状況を地域に向けて明らかにし、意見や助言をもらう場となります。会議では効果的な事業運営やサービスの透明性・質の確保、利用者の権利擁護といった目的について話し合いが行われます。

各事業所は少なくとも年に1回以上、この地域連携推進会議を開催しなければなりません。新規に事業所を開設する場合は、指定申請(行政への事業所指定申請)時点で既に会議の体制が整っているか、少なくとも確実に設置する見込みがあることが求められます。つまり、これから起業して障害福祉サービス事業を始めようという方も、開業準備の段階で地域連携推進会議のメンバー選定や開催計画を立てておく必要があるということです。また、この会議はオンライン(ウェブ会議)で開催することも可能です。遠方の家族や忙しい専門家にも参加してもらいやすくなりますが、オンライン実施の場合でも個人情報保護のルール(厚労省のガイドライン等)をしっかり守るようにしましょう。

3.地域連携推進員による施設見学(年1回以上)

地域連携推進会議で議論するだけでなく、会議のメンバーが実際に施設を見学する機会を設けることも義務付けられました。こちらもおおむね年1回以上、地域連携推進員となったメンバーが事業所(施設)を訪問し、運営の様子や利用者の生活ぶりを直接見てもらう取り組みです。実際に目で見てもらうことで、書類や口頭の説明だけでは伝わりにくい現場の状況を理解してもらえますし、地域の安心感にもつながります。

見学にあたって一つ注意が必要なのは、プライバシーへの配慮です。例えばグループホームの利用者さんの居室(自分の部屋)を見学したい場合、当の利用者本人の了承を得てからでないと見せてはいけないと定められています。利用者の生活空間ですから、勝手に見せることのないよう、事前に許可を取ることが大切です。見学の際は、個人情報やプライバシーに配慮しつつ、できる範囲で日常の様子を開示すると良いでしょう。

4.会議記録の作成と5年間の保存義務

会議を開いたら終わり、ではなく、内容をきちんと記録(議事録)に残して保管する義務もあります。地域連携推進会議における報告内容や、参加メンバーから出た要望・助言などをまとめた議事録を作成し、それを5年間保存しなければなりません。この保存期間は、運営指導や実地指導(行政による監査・指導)の際に過去の経緯を確認できるようにするためです。

5.第三者評価の活用(会議開催の代替措置)

地域連携推進会議の開催と施設見学の実施は義務ですが、一定の条件を満たす場合には代替措置をとることも可能です。それが福祉サービスの第三者評価の活用です。もし事業所が都道府県に認証された第三者評価機関による評価(いわゆる外部評価)を受審し、その結果を公表している場合、当該年度については地域連携推進会議の開催および施設訪問に代えることができます。簡単に言えば、「外部の専門評価を受けて公開しているなら、その年は地域連携推進会議をやったこととみなしますよ」ということです。

ただし、この場合でも情報公開と記録保存は欠かせません。評価を受けた場合は、その評価結果の実施状況(直近の実施年月日、評価機関の名称、評価でどんな結果だったか)をしっかり公表し、その記録を先ほどと同じく5年間保存しなければなりません。第三者評価を活用すれば会議を省略できるからといって情報開示を怠ると、基準違反となってしまいますので注意しましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 年1回以上の会議開催と施設見学: 地域連携推進会議は各事業所ごとに年に1回以上開催し、構成メンバーによる施設見学も年1回以上実施することが義務です。計画的に日程を調整し、参加者を集めましょう。
  • 幅広いメンバー構成: 会議メンバーには、利用者や家族、地域住民代表、福祉・経営の有識者、自治体職員など外部の目を入れることが重要です。地域との交流に前向きな方々に参加を依頼しましょう。
  • 議事録の公表と長期保存: 会議で出た報告・意見は議事録にまとめ、事業所のウェブサイト等で公開して透明性を確保します。議事録や関連記録は5年間保管し、行政から求められたときすぐ提出できるようにしておきます。
  • 新規開設時は計画必須: 新しく事業を始める場合、指定申請時に地域連携推進会議の体制が整っているか計画を示す必要があります。開業前から誰をメンバーにするか、どのように開催するか準備しておきましょう。
  • 第三者評価の活用も検討: 毎年の会議開催が難しい場合、福祉サービス第三者評価を受けて公表すれば、その年は会議開催に替えることが可能です。ただし評価結果の公開と記録保存は忘れずに行いましょう。外部評価の実施状況(日時・評価機関・結果など)は必ず公表し、証拠として保管しておくことが大切です。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。