障害福祉サービス「指定重度訪問介護」のサービス提供責任者:人員配置基準をやさしく解説
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障害福祉サービスの事業者や起業希望者にとって、サービス提供責任者の人員配置基準を理解することは欠かせません。障害のある方を支援する障害福祉サービスの中には、「指定重度訪問介護」と呼ばれるサービスがあります。このサービスを提供する事業所では、サービス提供責任者という役職のスタッフを一定数配置しなければなりません。法律で定められた人員配置基準を守らないと、事業の運営ができなくなってしまいます。この記事では、指定重度訪問介護におけるサービス提供責任者の配置基準について、やさしい言葉で解説します。
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サ責は何人必要?配置基準の「3つのルール」と考え方を整理
指定重度訪問介護事業所では、事業の規模にかかわらず、必ず1人以上のサービス提供責任者(サ責)を置く必要があります。事業所の管理者がサ責を兼任することも可能です。この1人という人数はあくまで最低限の基準で、実際の業務量に応じて必要な員数を配置することが望ましいとされています。
また、事業規模(サービスの提供量やスタッフ数、利用者数)に応じて、必要なサ責の人数が増えるルールがあります。具体的には、次の3つの条件のいずれかに当てはまるようにサ責を配置しなければなりません。
- 月間サービス提供時間(合計): 1か月のサービス提供時間の合計が1000時間ごとにサ責1名 (例: 合計サービス時間が1200時間ならサ責2名必要)
- 従業者の数(スタッフ数): 事業所で働くヘルパーなどスタッフの人数が20人ごとにサ責1名 (例: スタッフ21人ならサ責2名)
- 利用者の数: サービスを利用する障害のある方の人数が10人ごとにサ責1名 (例: 利用者11人ならサ責2名)
ポイントは、3つの条件のうち最も多くサ責が必要になる条件に合わせることです。3つの条件それぞれで必要なサ責数を計算し、その中で最大の人数を配置しなければなりません。例えば、サービス提供時間ではサ責1人で足りても、利用者が11人なら2人配置する必要があります。このように、一番厳しい条件に合わせて人員をそろえましょう。
常勤換算(非常勤スタッフで補う場合)
常勤換算とは、パートタイム(非常勤)の職員を勤務時間に応じて常勤(フルタイム)スタッフの人数に換算して数える方法です。サ責を2人以上配置しなければならない場合には、この常勤換算を使って人員配置することが認められています。
- 非常勤スタッフをサ責に含める条件: 非常勤スタッフの勤務時間が常勤の半分以上であること(例: 常勤週40時間に対し非常勤週20時間以上)。この条件を満たせば、その非常勤スタッフ1人をサ責として算入対象にできます。
- 非常勤スタッフを組み合わせて必要人数を確保: 複数のパートスタッフを組み合わせて、必要なサ責人数を満たすことも可能です(常勤換算の活用)。例えば、サ責が2人必要な場合、1人を常勤サ責とし、残り1人分を2人の非常勤スタッフで補うことができます。
- 常勤サ責の最低配置数: 非常勤を活用する場合でも、一定数の常勤サ責を確保する必要があります。原則として、必要なサ責人数 X から1を引いた数以上の常勤サ責を配置しなければなりません(例: サ責が3人必要な場合、少なくとも2人は常勤)。
- 大規模事業所の場合: 必要サ責が6人以上と算定されるような大きな事業所では、さらに厳しい基準として、全体の3分の2以上を常勤サ責にする決まりがあります(端数は切り上げ)。例えば、サ責6人必要な場合は常勤4人以上、7人必要な場合は常勤5人以上とする必要があります。
以下の表は、必要なサ責人数と確保すべき常勤サ責人数の関係をまとめたものです。
※6人以上必要な場合は、3分の2ルール(全体の3分の2以上を常勤にする規定)が適用されるため、上記のような人数になります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 必ず最低1人のサ責を配置しましょう。小規模な事業所では、管理者がサ責を兼任して人件費を抑えることも可能です。
- 事業規模が拡大し、利用者やサービス提供時間が増えそうな場合は、早めにサ責を増員する計画を立てましょう。
- 毎月、サービス提供時間・スタッフ数・利用者数の3つの指標をチェックし、どれか1つでも基準を超えていないか確認しましょう。
- 非常勤スタッフをサ責に活用する際は、常勤サ責を必要数確保することを忘れないようにしましょう。規模が大きいほど常勤の割合を高く保つことが求められます。
- 人員配置基準は最低ラインです。現場の状況を見て、基準以上にサ責を配置することも検討しましょう。
- 人員配置基準を守らないと、行政から指定取り消し(事業ができなくなる処分)などを受け、事業が続けられなくなる恐れがあります。必ず基準を守りましょう。
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