障害福祉サービス「地域移行支援」の具体的取扱方針をわかりやすく解説
記事の概要:
厚生労働省が発行した「指定地域移行支援の具体的取扱方針(基準第19条)」は、障害福祉サービスの一つである地域移行支援について、事業者が守るべき具体的な運営上の方針を示した通知です。地域移行支援とは、障害者支援施設や精神科病院などから退所・退院する障害者の地域生活への移行を支援するサービスのことで、住まい探しの手伝いや外出同行、関係機関との調整などを行います。本記事では、この地域移行支援を提供する事業所がどのような体制や配慮のもとでサービスを提供すべきかについてやさしくシンプルに解説します。
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地域移行支援計画の作成は専門スタッフが担当
通知ではまず、支援計画(地域移行支援計画)の作成など重要な業務は、適切な資格・役割を持つスタッフ(指定地域移行支援従事者)が行うよう求めています。具体的には、事業所の管理者(管理者=施設長のような責任者)は、自らが全て行うのではなく、地域移行支援従事者と呼ばれる専門スタッフに対し、「基本相談支援」や「地域移行支援計画の作成」など地域移行支援に関する業務を担当させなければならないとされています。これは、専門の従事者が適切に計画を立てて支援を進めることで、サービスの質を高めるための仕組みです。要するに、計画作成や相談対応はきちんと資格を持ったスタッフに任せましょうということです。
相談支援専門員が他スタッフを技術支援
次に、相談支援専門員(計画相談支援などの有資格者)の役割についての方針です。事業所の管理者は、相談支援専門員に対し、自分以外の他の地域移行支援従事者への技術的な指導や助言を行わせることと定められています。簡単に言えば、相談支援専門員がチームの指導役となり、利用者一人ひとりの状況に応じて適切で効果的な支援が提供できるよう、他のスタッフをバックアップする体制を整えるということです。例えば、支援経験が浅いスタッフに対して相談支援専門員がアドバイスを行い、より良い支援計画や支援方法を一緒に考えることで、サービス全体の質を底上げします。こうした内部研修・指導の仕組みによって、どのスタッフが対応しても一定水準以上の支援ができるようになるのです。
利用者の意思決定を尊重しサポート
第4号では、利用者の意思決定の支援について特に配慮すべきことが示されています。利用者が地域で自立した生活を営めるように、その人の意思決定(物事を自分で決めること)を支えることが重要です。厚労省は「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」という指針も出しており、事業者はこれに基づいた次の基本原則を念頭に置いて支援するよう求められています。ガイドラインで示される主な原則は以下のとおりです:
- 利用者本人への支援は、本人の自己決定を最大限尊重して行う。職員が「あの人には無理では?」と思うようなことであっても、まずは本人の意思を尊重して支援を組み立てます。
- たとえ職員から見て不合理に思える決定でも、他の人の権利を侵害しないのであれば利用者の選択を尊重する姿勢が求められます。周囲から見て「それはやめた方がいいのでは?」と思う選択でも、本人が望み、周りに大きな迷惑をかけない内容であればできる限り叶える方向で支援します。
- 本人の意思決定や意思の確認がどうしても難しい場合(例えば重度の知的障害で希望を言葉にできない等)は、本人をよく知る家族や支援者が集まり、様々な情報を集めて根拠を明確にしながら本人の意思や好みを推定するよう努めます。つまり、「本人は本当は何を望んでいるのか」を周囲みんなで考えるということです。
また、相談支援専門員については、こうした意思決定支援を適切に行うために、都道府県が実施する意思決定支援に関する研修(専門コース別研修の一つ)を受講しておくことが望ましいともされています。以上をまとめると、第4号では利用者の意思を尊重し、自己決定を支える支援を心がけることが強調されています。
利用者目線で懇切丁寧に説明と支援
第5号では、利用者やその家族に寄り添った丁寧な支援の提供について述べられています。地域移行支援は、利用者および家族が主体的に支援に参加し、自分の課題解決に意欲を持つことと相まって初めて効果が上がります。そのためにまず、事業者側は提供する支援内容について利用者・家族に十分理解してもらうことが必要です。支援を行う際には、常に利用者の立場に立って懇切丁寧に対応し、サービスの内容や提供方法についてわかりやすく説明するよう心がけます。専門用語ばかり並べず、図や例を使うなどして、中学生にも理解できるくらい噛み砕いた説明をすることが理想です。また必要に応じて、同じ障害のあるピアサポーター(先輩当事者)による支援なども活用すると効果的でしょう。同じ経験を持つ人からの助言は利用者の安心感につながりやすく、地域生活への不安軽減にも役立ちます。つまり、第5号では利用者ファーストの姿勢で、わかりやすく丁寧な支援提供を行うことの大切さが示されています。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 支援計画の作成は有資格スタッフに任せる:事業所の管理者が全てを抱え込まず、相談支援専門員などの地域移行支援従事者に支援計画の作成や相談業務を担当させる体制を整えていますか。専門スタッフに任せることで、質の高い支援計画が実現します。
- 相談支援専門員を指導役として活用する:チーム内の相談支援専門員に対して、他のスタッフへの技術的な指導や助言を担ってもらい、支援の質向上を図る仕組みができていますか。これにより、全スタッフが効果的な支援を行いやすくなります。
- 利用者の意思を尊重し、個別支援を徹底する:利用者の「やりたい」「こうしたい」という意思を最大限尊重し、支援内容がマニュアル通りの画一的対応になっていないか常に振り返っていますか。意思決定が難しい場合は、周囲と協力して利用者の希望を推し量る取り組みも必要です。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
