地域移行支援計画の書き方とポイント
記事の概要:
この記事では、障害者支援制度「地域移行支援」で必要となる地域移行支援計画について、具体的な書き方のポイントをやさしくシンプルに解説します。厚生労働省の通知文書に記載された内容を、制度初心者でも理解できるように噛み砕き、誤解を避けつつ実務にも役立つポイントをまとめました。
▶︎ 地域移行支援 関連記事まとめページはこちら
地域移行支援計画の要点と書き方
地域移行支援計画とは、文字通り地域生活への移行を支援するための計画書です。厚生労働省の定める基準(基準第20条)では、地域移行支援計画について次のような内容を盛り込むことが規定されています。計画書には主に以下の項目を記載します。
- 利用者と家族の希望(生活に対する意向):利用者本人やその家族が「どのような暮らしを望んでいるか」という希望・要望です。地域でどんな生活を送りたいか、将来の目標や不安など、まずは本人・家族の意向をしっかり把握して記載します。
- 総合的な支援の方針:利用者の希望を踏まえて、全体としてどのような支援を提供していくかという方針です。支援の基本的な方向性(例:「できるだけ本人の自立を促す支援を行う」「家族の負担軽減を図る支援を行う」等)をまとめます。
- 生活全般の質を向上させるための課題:利用者の生活全体を見たときに、改善・解決すべき課題(困りごと)を整理します。たとえば「金銭管理が苦手」「地域での人間関係に不安がある」など、地域生活を送る上で支障となりそうな課題を書き出します。
- 地域移行支援の目標とその達成時期:具体的な支援のゴールと、いつまでにそのゴールを達成する予定かという期限を定めます。目標は利用者ごとに異なりますが、例えば「半年以内に地域で一人暮らしを開始する」「〇月までにアパート入居を完了する」など、達成時期を見据えた目標を書きます。
- サービス提供時の留意事項:支援を行う上で特に気をつけることや配慮すべき事項です。医療的ケアが必要な場合の対応、プライバシーへの配慮、コミュニケーション上の工夫(言葉の伝え方や意思表明の補助)など、支援提供時に留意すべきポイントを記載します。
アセスメントと意思決定支援の重要性
地域移行支援計画を作る際には、事前のアセスメント(評価・ニーズ把握)が非常に重要です。アセスメントでは、利用者の心身の状態、置かれている環境、日常生活全般の状況などを詳しく評価し、本人が「どんな生活を望んでいるのか」「直面している課題は何か」を把握します。この過程で浮かび上がった利用者の希望や課題をもとに、先述の計画書の内容(支援方針や目標等)を検討していきます。
計画作成にあたっては、利用者の自己決定の尊重を忘れてはいけません。支援者側が一方的に計画を決めるのではなく、利用者本人の意思を最大限尊重し、ともに計画を立てる姿勢が求められます。特に、知的障害や認知症等で自分の意思決定が難しい利用者の場合は、適切な意思決定支援が必要です。厚労省のガイドラインでも「利用者が自ら意思決定することが困難な場合、利用者の意思や選好、判断能力などを丁寧に把握し、意思決定を支援するよう努めること」と示されています。例えば、コミュニケーションが難しい方には表情やしぐさから意思を汲み取ったり、意思決定支援ガイドラインに沿った話し合いの場(意思決定支援会議等)を設けたりするなどの工夫が考えられます。ポイントは、利用者が「自分で決めた」と感じられるよう配慮しながら計画を作成することです。
計画書様式の柔軟性について
地域移行支援計画の様式(フォーマット)は、公的に決まったものがあるわけではありません。厚生労働省の通知でも「計画の様式は各事業所ごとに定めるもので差し支えない」とされています。つまり、国が統一の書式を示しているわけではなく、事業者が自由に作って構わないということです。
様式が自由と言っても、前述した必要項目がきちんと盛り込まれていることが大前提です。事業所によっては独自に工夫した計画書フォーマットを使っています。利用者にとって分かりやすいように項目名を平易な言葉にしたり、イラストやピクトグラムを交えて理解を助ける工夫をしている例もあります。重要なのは、必要な情報が過不足なく記載されていることと、利用者や家族にも内容が伝わりやすいことです。様式に決まりがない分、自社のサービス内容や利用者層に合わせて使いやすい計画書を作成すると良いでしょう。
なお、新たに障害福祉サービスで起業する場合は、各自治体が提供するモデル様式や他事業所の事例を参考にしつつ、自事業所の実情に合った計画書を整備すると安心です。公式様式がない分、「何をどう書けばいいのか?」と迷うかもしれませんが、上記の項目を押さえていれば行政的にも実務的にも問題ない計画書となります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 利用者の希望を最優先に: 計画作成では何よりも利用者本人の「こう暮らしたい」という希望を尊重しましょう。施設職員や家族の意見も参考になりますが、主役は利用者本人です。障害者支援において自己決定の尊重は基本中の基本です。
- 丁寧なアセスメントを実施: 計画の土台となるアセスメントをおろそかにしないことが大切です。利用者の現在の状況や課題を把握するために、時間をかけて面談したり、関係機関から情報収集したりしましょう。例えば入所施設の支援員や主治医などとも連携し、利用者のニーズを総合的に評価します。綿密なアセスメントが、実効性のある地域移行支援計画につながります。
- 意思決定支援を心がける: 利用者が計画内容を理解し、自分の意思で合意できるようサポートしましょう。意思表明が難しい方には、ゆっくり分かりやすく説明したり、代替的なコミュニケーション手段を用いるなど工夫します。利用者が「自分で決めた」と感じられる計画にすることで、支援への納得感も高まります。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
