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独習 地域相談支援 指定基準 | 第二 指定地域移行支援に関する基準 2  運営に関する基準 (17) 

験的な宿泊支援(基準第23条)の実務解説


記事の概要:
体験的な宿泊支援とは、障害者の方がこれまで入所していた施設や病院を出て、一人暮らしなど地域で自立した生活を始める前に、短期間お試しで宿泊生活を体験してみるための支援サービスです。簡単に言えば、「地域での一人暮らしのリハーサル」をサポートするものです。例えば長く障害者支援施設や精神科病院に入っていた方が、いきなり完全な一人暮らしを始めるのは不安も大きいですよね。そこで事前に数日間、一般のアパートやグループホーム等で泊まってみて、地域で生活する感覚を掴んでもらうのが目的です。本記事では、この「体験的な宿泊支援」について、やさしくシンプルに解説します。

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体験的な宿泊支援に関する3つのポイント

1. 宿泊場所に関する条件:まず、体験的な宿泊支援を行う宿泊場所(滞在先)には、満たすべき最低限の条件があります。具体的には「利用者が宿泊を行うのに必要な広さの居室」が確保されており、生活に必要な家具や設備・備品が備わっていること、そして清潔で衛生的に管理された場所であることが求められます。要は、狭すぎず生活に不便のない普通の部屋で、きちんと掃除や衛生管理がされていることが条件です。また通知には「地域生活と同様の環境で実施すること」と明記されています。これはつまり、精神科病院の病室や施設の一角のような日常生活とかけ離れた環境ではなく、地域での暮らしと同じような環境(例えば一般のアパートや一軒家、グループホームの部屋など)で体験宿泊を行いましょう、という意味です。地域生活をリアルに体験してもらうことが大切なので、利用者が「ここなら退院・退所後に自分が暮らすイメージに近い」と感じられる場所を用意することが望ましいでしょう。

2. 実施方法の柔軟性(自前実施か委託か):次に、誰がその宿泊場所を用意・提供するかについてのルールです。基準第23条第2項では、指定地域移行支援事業者(=このサービスを提供する事業者)が自らアパート等を確保して実施するほか、別の事業者へ委託して実施することもできると規定されています。簡単に言えば、自分の事業所で部屋を用意できなくても大丈夫です。他の障害福祉サービス事業者、例えばグループホーム(共同生活援助の住居)や短期入所施設(ショートステイ)の空いている部屋を借りる形で実施することもOKということです。委託の場合は、地域移行支援事業者が利用者の体験宿泊を、そういった別事業者にお願いして行ってもらう形になります。ただし、この場合でも利用者の支援自体を丸投げして良いわけではありません。あくまで宿泊の場を提供してもらうだけで、後述するように利用者へのフォローやサポートは地域移行支援事業者の責任でしっかり行う必要があります。この委託制度により、これから障害福祉サービスの起業を考えている方でも、自前の寮やアパートを所有していなくても他施設との連携で体験宿泊支援を提供しやすくなっています。

3. 支援体制と連携(スタッフの付き添い・相談支援):最後に、体験的な宿泊支援を行う際のスタッフの関わり方や関係機関との連携についてです。厚労省の通知では、体験宿泊の提供に当たっては利用者に対する相談援助や見守りが必要となるため、原則として地域移行支援の従事者(支援員)は利用者に付き添って同行するか、あるいは宿泊先を訪問して支援を行うこととされています。要するに、利用者を完全に一人きりにせず、支援員がある程度そばでフォローしましょうということです。ある程度自立してできそうな方でも夜間に様子を見に行ったり電話で連絡するなど、定期的な見守りをする工夫が必要です。支援員は滞在中に利用者から生活上の相談を受けたり、不安を和らげたり、必要に応じて助言や手伝いを行います。また緊急時にすぐ対応できるよう連絡体制を整えておくことも重要です。

さらに、体験宿泊の前後には関係者との十分な情報共有と連携が求められます。通知では、支援員は利用者が元々入所・入院していた施設の職員(障害者支援施設や精神科病院、救護施設など)や、委託先のグループホーム・短期入所施設等の担当職員と、事前に緊密に連絡調整を行い、注意すべき点の情報共有を図ることとされています。例えば「服薬の管理はどうするか」「夜間パニックになりやすいので見守りを厚めにしよう」など、事前に把握すべき情報をみんなで共有します。また実際に体験宿泊を終えた後も、滞在中の利用者の様子や得られた課題・成果を関係者で共有し、今後の支援方針に生かすことが求められています。このように、体験的な宿泊支援は事業者内の支援員だけでなく、利用者を取り巻く様々な機関とのチームプレーで成り立つ支援なのです。地域移行支援を提供する事業者は、ぜひ日頃から地域の障害者支援施設や医療機関、行政機関等とネットワークを築き、円滑に連携できる体制を整えておくことが大切です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 宿泊場所は「地域生活と同様の環境」であることが必須:体験的な宿泊支援は、障害者が将来の地域生活を現実的にイメージできる場所で行う必要があります。アパートやグループホームなど、一般の生活環境に近い場所を選定しましょう。狭すぎたり病院的な環境ではNGです。
  • 自前で部屋を用意できなくても、委託による実施が可能:地域移行支援事業者が他の障害福祉事業者(例:共同生活援助や短期入所)と連携し、空き部屋を借りる形での体験宿泊も認められています。委託契約や責任範囲を明確にしておくことがポイントです。
  • 原則として支援員の同行や訪問支援が求められる:利用者を完全に一人にすることなく、原則として支援員が付き添うか、定期的に訪問して様子を見守る必要があります。体験宿泊の前後には、関係機関との情報共有や緊急時の対応体制も整えておきましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。