福祉型障害児入所施設の移行支援計画とは?15歳から始める将来への準備
記事の概要:
令和6年(2024年)4月の制度改正により、福祉型障害児入所施設で生活する障害児が原則15歳に達した時点で、将来の地域生活への移行を見据えた「移行支援計画」を作成することが義務付けられました。これは、施設から地域や適切な別の施設へスムーズに移れるように早めに準備を始めるための計画です。施設の児童発達支援管理責任者(※施設で個別支援計画を統括する担当者)が中心となって作成し、お子さん本人や保護者の希望、将来の目標、そして必要な支援内容をまとめます。本記事では、この移行支援計画の目的や内容、作成のタイミング、そして計画作成時に大切なポイントについて、やさしくシンプルに解説します。
▶︎ 福祉型障害児入所施設 関連記事まとめページはこちら
移行支援計画とは何か?
移行支援計画とは、障害のあるお子さんが現在の入所施設を出た後に、地域社会や障害者向け施設など新しい生活の場で安心して暮らせるように準備するための個別の計画です。福祉型障害児入所施設(※医療型の入所施設を除く、知的障害児施設等を含む施設)に入所している障害児を対象に、児童発達支援管理責任者が中心となって作成します。具体的には、お子さんが15歳の誕生日を迎えた頃から、その子の将来の生活を見据えた支援を計画的に進めるために、この移行支援計画を立てることになります。早い段階から準備を始めることで、18歳前後での退所や成人後の生活への移行(ステップアップ)をスムーズにする狙いがあります。
移行支援計画を作成する背景には、「障害児入所施設を出た後も途切れることなく支援を受け続け、本人にとって最適な環境で生活できるようにする」という考え方があります。施設で長く生活した子どもがいきなり地域生活に移ると、環境の変化に戸惑ったり必要なサービスにつながれなかったりするおそれがあります。そこで、15歳になったらできるだけ早く将来の住まいや日中活動の場(例えばグループホームや就労支援事業所など)の選択肢を考え始め、見学や体験利用を通して希望の方向性を一緒に探っていきます。その上で、お子さん一人ひとりに合った「卒園後」の人生設計をサポートする計画を立てていくのです。
移行支援計画に盛り込む内容
では、その移行支援計画には具体的にどんな項目を盛り込む必要があるのでしょうか?大切なポイントは、お子さん本人とその保護者の意思や希望を起点に、将来に向けて必要なことを整理することです。計画書には以下のような内容を記載します。
このように、「今後どう生きていきたいか」という本人・家族の思いと、「そのために何が必要か」という支援の具体策をセットで計画に落とし込みます。例えば「家族と暮らしたい」という希望があれば、自宅で生活する上で必要な福祉サービスや支援機関との連携を書き込みます。「将来働きたい」という目標があれば、就労支援事業所の利用計画や職業訓練の予定を記載します。短期目標と長期目標を設定し、それぞれに対していつまでに何をするかスケジュールを決めていくことで、着実にステップを踏める計画になります。また、退所後に関わる役所や相談支援事業所、学校・職場などの関係機関とあらかじめ情報共有し、どのような支援を提供してもらうかも具体的に書きます。こうした内容を盛り込むことで、施設を出た後も切れ目なく支援が継続できるようにしておくわけです。
計画書の様式(フォーマット)については、法律上決まった書式があるわけではありません。各施設が自由に定めて構いませんが、こども家庭庁が公表している「入所児童等の移行支援及び移行調整の手引き」(2024年7月発行)に様式例が示されていますので、必要に応じて参考にするとよいでしょう。この手引きには計画書に記載すべき事項の詳細も載っていますので、移行支援計画を作成・実施する際のバイブルとして活用できます。
計画作成のタイミングと対象:15歳以上が基本
移行支援計画はおおむね15歳に達した障害児について作成するとされています。これは高校進学や卒業後の進路を考え始めるタイミングであり、将来の生活環境を本人・家族と考えるのに適した時期だからです。福祉型障害児入所施設では、15歳になったら児童発達支援管理責任者が中心となり、その子のための移行支援計画を立て始めます。そして計画に沿って、退所(18歳前後が多い)の時期までに段階的な準備と支援を行っていきます。
では、15歳未満の子どもについてはどうでしょうか?原則は15歳以上ですが、例外的に15歳未満でも移行支援計画を作成することが望ましいケースがあります。それは、その子が近い将来施設を出ることがすでに決まっている場合です。例えば、「家庭に戻ることが決まった」「里親に託されることになった」など、退所の予定がはっきりしている場合には、年齢に関係なく早めに移行支援計画を作成しておく方が望ましいとされています。こうすることで、施設を退所してからも切れ目のない支援を続けるための準備ができます。小さいうちからでも必要な支援を整理し、地域の関係機関とつながりを作っておけば、退所後の戸惑いを減らせるでしょう。
一方で、全てのケースで必ずしも移行支援計画を作成する必要があるわけではありません。短期間の入所など、明らかにその施設での長期的な移行支援が不要と判断できる場合もあります。例えば、リハビリ目的で数ヶ月だけ入所して元の生活に戻るようなケースでは、わざわざ移行支援計画を作らなくても問題ないかもしれません。そのような場合には、代わりに通常の入所支援計画(入所中の支援計画)の中に、退所に向けたサポート内容を盛り込んでおくことで対応できます。このように、ケースバイケースで計画作成の必要性を判断し、効率的に運用することも可能です。
子どもの意見と「最善の利益」を尊重する
移行支援計画を立てるプロセスでは、障害のあるお子さん本人の意見をできる限り取り入れることが重要です。法律上も「障害児の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」と定められています。簡単に言えば、お子さんが十分に意思表示できる年齢・発達段階であれば、その考えや希望をしっかり聞いてあげて、計画に反映しましょうということです。
とはいえ、子どもの言うことをすべてそのまま実行するという意味ではありません。ポイントは、お子さんの意見を尊重しつつも、常に「この子にとって何が一番幸せか」を第一に考える(最善の利益を優先する)ことにあります。【最善の利益】とは、「障害児にとって最も善いことは何か」を判断基準にするという考え方です。場合によっては、お子さん自身が望んでいることと大人が考える最善の選択肢が異なることもありえます。例えば、本人は「早く独り暮らししたい」と望んでいても、年齢や自立の準備状況を踏まえると今すぐ一人で生活させるのは難しいかもしれません。このような場合、関係者でよく話し合った結果、「もうしばらくグループホームで生活力を身につけてから独り暮らしを目指す」という結論になることも考えられます。意見を聞いたうえで、専門家の視点から冷静に検討し、本当にその子のためになる道を選ぶ——これが「最善の利益の優先」という考え方です。
移行支援計画の策定にあたっては、以上のような子どもの意見尊重と最善の利益のバランスをしっかり保つことが求められます。お子さんにとって納得感があり、かつ将来の幸せにつながる計画となるよう、家族や施設職員、相談支援専門員などで丁寧に話し合いながら計画を練り上げていきましょう。そうすることで、計画が机上の空論ではなく、本人主体の生きた支援ツールとなります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 15歳になったら移行支援計画を作成:福祉型障害児入所施設では、入所中の障害児が15歳に達した時点で、その子の将来の地域生活への移行を見据えた個別支援計画の作成が義務化されています(早期から計画的な支援を開始)。※15歳未満でも退所が決まっている場合は早めに作成することが望ましいです。
- 計画には将来の生活設計を具体化:移行支援計画には、保護者と本人の希望(どんな生活を望むか)、移行に向けた課題、短期・長期の目標とスケジュール、退所後に連携する関係機関ごとの支援内容など、将来の生活に向けた具体的な支援策を盛り込みます。これにより退所後も切れ目ない支援を確保します。
- 子どもの意見を尊重し最善を考慮:計画作成時は、お子さんの意思を年齢や発達に応じて尊重することが大前提です。しかし同時に、常に「その子にとって何が最も良いか」(最善の利益)を第一に考えて判断する必要があります。専門職は子どもの希望と客観的な支援ニーズを照らし合わせ、本人にとって最善の移行先・支援内容を導き出すよう努めましょう。
【免責事項】
