指定福祉型障害児入所施設における身体拘束禁止:緊急時の例外条件と委員会設置のポイント
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指定福祉型障害児入所施設とは、障害のある子どもが入所して生活支援を受ける施設です。この施設では子どもの人権と安全を守るために、身体拘束(子どもの自由を物理的に制限する行為)は原則として禁止されています(基準第41条)。ただし、子どもの生命や身体を守るためにどうしても必要な緊急やむを得ない場合に限り、例外的に身体拘束が認められます。本記事では、その緊急時の具体的な条件や記録義務、そして各施設に設置が求められる身体拘束適正化検討委員会の役割について、やさしくシンプルに解説します。
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身体拘束は原則禁止(例外は緊急時のみ)
指定福祉型障害児入所施設では、児童福祉法に基づく運営基準により身体拘束は禁止されています。身体拘束とは、例えば子どもをベッドに縛り付けたり、動かないように体を押さえつけたりする行為のことです。これは子どもの権利や尊厳を著しく損なうため、通常は行ってはいけません。
例外は緊急時のみ認められます。障害児本人や他の子どもの生命や安全に差し迫った危険があり、どうしても身体拘束でしか安全を確保できない場合に限って許されます。この「緊急やむを得ない場合」には、以下の3つの条件を全て満たす必要があります(これを身体拘束の三要件と呼ぶこともあります)。
- 切迫性:利用者本人や周囲の人の生命・身体に今まさに危険が迫っていること(差し迫った状況であること)。
- 非代替性:身体拘束以外にその危険を回避する方法がないこと(他に代わりの手段がない状態)。
- 一時性:身体拘束が一時的な措置であり、必要な最小限の時間にとどまること(長時間連続して行わないこと)。
上記のすべてを満たして初めて「緊急やむを得ない場合」と認められます。さらに、施設は組織としてこれらの要件を満たしていたか確認する手続きを踏み、その確認を行った旨も記録しなければなりません。要するに、「本当に他に方法がなく今だけ拘束が必要だ」という判断を組織的にチェックし、それを残す必要があるということです。
なお、緊急時であってやむを得ず身体拘束を行った場合でも、詳細な記録が義務付けられています。具体的には、拘束の方法(態様)や実施した時間の長さ、拘束したときの子どもの心身の状態、そして緊急でやむを得なかった理由をしっかりと書き残さなければなりません。これらの記録は後で検証するために非常に重要です。記録をつけておくことで、「なぜ拘束が必要だったのか」「どういった状況で行われたのか」を第三者も確認でき、今後の支援に活かすことができます。
身体拘束適正化検討委員会を設置して対応策を検討
施設で万一身体拘束が発生した場合に備え、身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会(略して身体拘束適正化検討委員会)を設置することが求められています。この委員会は、施設内の幅広い職種の職員で構成しましょう。たとえば、施設長や現場の支援員、看護師、保育士など様々な立場のスタッフが参加します。それぞれの役割と責任分担を明確に定め、さらに身体拘束の適正化対策を専門に担当する責任者をあらかじめ決めておくことが望まれます(いわば「身体拘束対策リーダー」のような担当者です)。
また、委員会には可能な限り第三者や専門家の協力も得るよう努めます。具体的には、外部の医師(精神科医など心の専門家)や看護職員といった有資格者に参加してもらい、専門的な視点から助言を受ける方法が考えられます。自社内に限らず外部の知見を取り入れることで、より適切な対応策を検討できるでしょう。なお、この委員会は事業所単位(各施設ごと)で設置するのが基本ですが、運営法人が複数施設を持つ場合には法人単位で1つの委員会を設置することも可能です。施設の規模に応じて、効率的かつ効果的な体制を検討してください。
委員会の開催頻度にも決まりがあります。少なくとも年に1回は開催しなければなりません。定期的に委員会を開いて状況をチェックし、必要な対策を講じることが大切です。また、既存の虐待防止委員会との統合も認められています。身体拘束の問題は虐待防止とも深く関係するため、メンバーが重なるようであれば、身体拘束適正化委員会と虐待防止委員会を一体的に設置・運営しても差し支えありません(例えば、虐待防止委員会の中で身体拘束の適正化について議題に上げる形でも構いません)。
ここで強調しておきたいのは、これらの仕組みを作る目的です。指定福祉型障害児入所施設が「身体拘束の報告や改善策の周知徹底」を行うのは、施設全体で情報を共有し、不適切な身体拘束の再発防止や“身体拘束に頼らない支援方法”を検討するためです。決して職員を罰するためではないことに留意しましょう。現場のスタッフが委員会というと「何かミスを糾弾されるのでは…」と身構えてしまうかもしれませんが、この委員会はあくまで建設的にサービスの質を向上させるためのものです。
では、具体的に身体拘束適正化検討委員会ではどのような対応を行うのでしょうか。ガイドラインでは、委員会の具体的な取り組み例として次のようなステップが想定されています。なお、委員会での対応内容は適切に記録し、5年間保存することが義務付けられています。
上記のように、委員会では報告→分析→周知→改善というサイクルを回し続けることになります。こうした取り組みを地道に積み重ねることで、施設全体で「身体拘束に頼らない支援」を模索し、実践していくことが期待されます。利用者である子どもたちが安全かつ尊厳のある生活を送れるよう、そして職員にとっても安心して支援に当たれる環境を作るために、ぜひ適切なルール運用と委員会活動を行っていきましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 身体拘束は原則禁止です。障害児や周囲の安全確保のための緊急やむを得ない場合のみ例外的に認められますが、その際は「切迫性」「非代替性」「一時性」という3つの条件すべてを満たす必要があります。やむを得ず拘束したときは、拘束方法・時間、子どもの状態、理由を詳細に記録しておかなければなりません。
- 身体拘束適正化検討委員会の設置が必須です。施設内の様々な職種の職員で構成し、拘束削減対策の担当者を明確化します。可能であれば医師や看護師等の専門家も交えましょう。委員会は少なくとも年1回の開催が必要で、既存の虐待防止委員会と統合して運営することも可能です。
- 委員会の主な役割は、身体拘束が発生した際の報告と記録の徹底、事例の集計・原因分析、そして再発防止策の検討・実施です。分析結果や対策内容は全職員に共有し、実施した対策の効果検証まで行います。これにより、不適切な拘束の再発防止と、拘束に頼らない支援方法の改善につなげていきます。
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