障害者支援施設における職場定着支援(基準第32条)と就職状況報告(基準第33条)とは?
記事の概要:
障害福祉サービスの事業者やこれから起業を考える方に向けて、厚生労働省の通知に定められた基準第32条「職場への定着のための支援の実施」と基準第33条「就職状況の報告」についてやさしくシンプルに解説します。それぞれ、障害者支援施設が提供するサービスに関する重要な規定で、利用者が一般企業などに就職した後のフォローアップと、その報告義務を定めたものです。類似の「就労移行支援」や「就労定着支援」といった就労支援サービスと混同しないよう、あくまで障害者支援施設が行う支援に焦点を当てて説明します。
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職場定着支援(基準第32条)とは何か?
障害者支援施設の利用者が企業に就職した後、職場になじみ長く働き続けられるようサポートする仕組みです。厚生労働省の基準第32条では、事業所は利用者が就職してから少なくとも6ヶ月間、職場訪問や家庭訪問などを通じて継続的に相談支援を行うことが定められています。具体的には、事業所の職員(支援員)が定期的に利用者本人や勤務先を訪ねて、仕事上の悩みや困りごとを聞き取り、必要に応じて会社の上司・人事担当者への助言を行います。また、地域の障害者就業・生活支援センター(就労支援の相談窓口)や職場適応援助者(ジョブコーチ)とも協力して、利用者の職場への適応を手助けします。これらの支援によって、利用者が新しい職場に円滑に定着できるよう後押しするのです。
支援の期間は、「就職してから少なくとも6か月の間」です。この間、障害者就業・生活支援センターや職場適応援助者(ジョブコーチ)等としっかり連携し、事業主への助言や職場訪問、家庭訪問などの方法で相談支援を提供することが定められています。なお、この定着支援は利用者本人が「もう大丈夫」と感じていても、必ず6ヶ月間は実施する義務があります。なぜなら、定着支援には企業や支援機関との情報共有・連携も含まれるためです。また、6ヶ月経過後は希望に応じて専門の「就労定着支援」(就職後フォロー専用のサービス)に移行できる制度も整っています。基準32条で定める支援期間は、こうした次の支援につなぐ橋渡し期間とも言えるでしょう。
就職状況の報告(基準第33条)とは何か?
続いて、基準第33条「就職状況の報告」です。こちらは、職場定着支援の成果を毎年行政に報告するルールです。具体的には、障害者支援施設等の事業所は毎年度、前年度に就職した利用者の人数と、そのうち就職後6ヶ月以上職場に定着できた人数を取りまとめ、都道府県(指定都市・中核市ではその市)に報告しなければなりません。この報告によって行政は事業所の就労支援の実績を把握できます。また、事業所自身もこれらの数値を振り返ることで、支援の課題を見直したりサービス向上に役立てたりできます。
報告は毎年行われ、通常は年度終了後に所定の書式で提出します。報告義務を怠ることはできませんので、就職者と定着者の数を正確に把握・集計し、期限までに届け出るようにしましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 6ヶ月フォロー体制の準備: 利用者の就職後、少なくとも半年間フォローできるように担当スタッフや支援計画をあらかじめ用意しておきましょう。誰がどの頻度で職場訪問や面談を行うか、就職前に方針を決めておくとスムーズです。
- 支援機関との連携: 地域の障害者就業・生活支援センターやハローワークなど公的支援機関との連携体制も重要です。就職後のフォローでは、こうした外部リソースの協力が利用者の職場定着成功につながります。
- 実績管理と報告の徹底: 就職者の人数や職場定着状況を日頃から記録・管理し、年度ごとに正確に集計しましょう。行政への報告はもちろん、事業所内で定着率などを把握することでサービス改善にも役立ちます。
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