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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 3 運営に関する基準 (30) 

害者支援施設における「食事」の解釈通知をやさしく解説 


記事の概要:
この記事では、障害者支援施設に関する基準第34条「食事」について解釈通知の内容をやさしくシンプルに解説します。食事の提供や栄養管理の基準を正しく理解し、現場で実践できるようにすることが狙いです。

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食事提供の基本と「正当な理由」

障害者支援施設は、基本的に利用者に対して適切な食事を提供しなければなりません。「正当な理由」がない限り、食事提供を安易に断ってはいけないとされています。では正当な理由とは何でしょうか?解釈通知によると、例えば以下のような場合です:

  • 利用者自身が明らかに適切な食事を確保できる状態にある場合(自分で必要な食事を用意できる場合)。
  • 利用者の心身の状態から見て、明らかに適切でない内容の食事を求められた場合(健康状態などから見てその要求する食事内容が明らかに不適切な場合)。

これらに該当するときは食事を提供しなくてもよい正当な理由になります。しかし、正当な理由がないのに「利用者に食事を出したくない」といった都合で提供を拒むことは認められません。事業者は利用者の食事確保を支援する責任があることを忘れないようにしましょう。

栄養管理と管理栄養士の関与

提供する食事は、利用者の健康や生活に大きく影響します。そのため施設等で食事を出す場合は、利用者の年齢や障害の特性に応じて適切な栄養量・内容の食事を確保する必要があります。具体的には、管理栄養士または栄養士(食事の専門家)による栄養管理を行うことが求められています。管理栄養士や栄養士は、献立(メニュー)を作成し栄養バランスを計算したり、食事内容について専門的な助言を行ったりする役割を担います。事業所でこうした専門家を配置し、利用者の栄養面をしっかりサポートすることが望ましいでしょう。

※なお、障害福祉サービスの報酬(事業者への支払い)には、管理栄養士や栄養士を配置するためのコストも含めて評価される仕組みがあります。つまり、栄養管理の体制を整えることは事業運営上も想定されたものになっています。

食事提供の外部委託と利用者への配慮

施設での食事提供を外部の事業者(仕出し業者やケータリング等)に委託することも可能です。解釈通知でも、食事の提供を外部に委託しても差し支えないとされています。しかし、その場合でも利用者の嗜好(好き嫌い)や障害特性が食事内容にきちんと反映されるように、定期的に委託先と調整を行わなければなりません。例えば、噛む力が弱い利用者には柔らかい食事にする、おかずの味付けは利用者の好みに合わせる、といった配慮です。外部委託だからといって任せきりにせず、利用者一人ひとりに合った食事になるよう事業者側でしっかり管理・調整しましょう。

食事内容のバランスと多様性

提供する食事の中身については、できるだけ変化に富んだメニューにすることが求められています。毎日同じような食事ではなく、季節感を出したり、見た目に変化をつけたりすることが大切です。また、利用者の年齢や障害の特性にも配慮しましょう。例えば、高齢の利用者には塩分控えめの家庭的な料理、若い利用者には見た目が楽しいメニューを取り入れるなど工夫します。さらに栄養的にもバランスのとれた食事にすることが必要です。主食・主菜・副菜を適切に組み合わせ、タンパク質やビタミン類など必要な栄養素が偏らないようにしましょう。「美味しくて楽しい、しかも健康に良い食事」を目指すことが、利用者のQOL(生活の質)向上につながります。

食品衛生と衛生管理の徹底

食事の調理や配膳(料理を盛り付けて利用者に提供すること)を行う際には、衛生管理を徹底する必要があります。具体的には、食品そのものの鮮度や品質管理はもちろん、調理に使う器具や利用者が使う食器類を清潔に保つことが重要です。調理前の手洗いや、調理場の清掃・消毒をしっかり行い、食中毒などの事故を未然に防ぎましょう。また、厚生労働省からは食品衛生のチェックリスト(「食品衛生監視票」)が示されています。こうしたガイドラインも参考にしながら、利用者に安全な食事を提供できる環境を整えてください。

栄養士がいない場合の対応

小規模な事業所などでは、必ずしも栄養士や管理栄養士を配置できないケースもあるでしょう。しかし、栄養の専門職が事業所にいない場合でも適切な栄養管理を怠ってはいけません。 解釈通知では、事業所に栄養士を置かない場合は保健所など外部の指導を受けるよう努めなければならないと定められています。具体的には、地域の保健所や栄養相談窓口の職員に献立の内容や栄養価の計算、調理方法について助言・指導を仰ぐことになります。栄養士不在の場合でも、こうした外部機関のサポートを受けて献立作成や栄養計算を行い、利用者に提供する食事の質を保つことが必要です。「専門家がいないから難しい」と諦めず、周囲の支援を借りてでも利用者の栄養管理をしっかり行いましょう。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 利用者への食事提供体制を整えること: 利用者に適切な食事を提供できるよう準備し、正当な理由がない限り提供を拒まない。万一提供しない場合も、利用者自身の状況や健康に配慮した合理的な理由が必要。
  • 栄養管理は専門家の力を借りること: 献立作成や栄養バランスの確認は、できる限り管理栄養士・栄養士などの資格者が行う体制を整える。専門家を常勤で置けない場合は非常勤や外部相談の活用も検討する。
  • 外部委託時の定期的な調整 : 食事提供を調理業者等に委託する場合でも、利用者の嗜好や障害特性が反映されるように定期的に業者と打ち合わせを行う。提供メニューのフィードバックを伝え、必要に応じて改善してもらう。
  • 衛生管理の徹底: 調理場や食器の衛生を常に保ち、食材の温度管理や消毒を徹底する。スタッフにも衛生教育を行い、食中毒事故を起こさないよう万全の体制を敷く。
  • 栄養士不在時の対応策: 事業所に栄養士等がいない場合は、保健所等の外部機関に相談・指導を依頼する仕組みを用意する。地域の栄養士会や保健センターなどとも連携し、献立や調理法について助言をもらうよう努める。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。