障害福祉サービスにおける健康管理と緊急時対応のポイント
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指定障害者支援施設の人員・設備・運営基準の中でも、利用者の 健康管理 と 緊急時の対応 は特に重要な項目です。厚生労働省の通知文書にも示されているとおり、基準第36条(健康管理)と基準第37条(緊急時等の対応)は、利用者の安全と健康を守るために事業者が遵守しなければならない義務を定めています。本記事では、これら基準の内容をやさしくシンプルに解説し、障害福祉サービス事業者や開業を目指す方に向けて実務上のポイントを紹介します。
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基準第36条:健康管理の責任体制と健康診断の実施義務
指定障害者支援施設の指定基準・第36条は、利用者の健康管理について定めた規定です。このルールにより、事業者は利用者の健康状態に常に注意を払い、適切な健康管理体制を整備しなければなりません。
まず、施設には「健康管理の責任者」を置く必要があります。具体的には、医師や看護師などの資格を持つスタッフ、またはそれにふさわしい人物を選び、利用者の健康管理を任せます。この責任者は日々のバイタルチェックや服薬管理など、利用者の体調変化を見逃さないようにする役割を担います。また、地域の保健所(公的な保健機関)とも連携し、感染症対策や健康相談など専門的な支援を受けられる体制を作っておくことも求められます。
さらに、定期健康診断の実施義務もこの基準で明示されています。施設の利用者に対しては毎年2回以上の定期的な健康診断を行い、その結果をきちんと把握・記録する必要があります。年2回ということは、おおむね半年に一度のペースで健康チェックをするイメージです。健康診断では、血圧測定や血液検査、体重・栄養状態の確認などを行い、利用者の体調の維持・改善に役立てます。定期健診を怠らずに実施することで、利用者の健康上の問題を早期に発見し、重篤化を防ぐことができます。以上のように、第36条は「責任者の配置」と「年2回の健康診断」という二本柱で利用者の健康を守る仕組みを求めているのです。
基準第37条:緊急時等の対応と運営規程の整備
指定基準・第37条は、利用者の緊急事態への対応について定めています。障害福祉サービスの提供中に、例えば利用者の容体が急変したり、怪我や急病といった緊急事態が発生した場合、事業者はただちに適切な措置を講じる義務があります。
この「適切な措置」とは具体的に何を指すのでしょうか?基準では、各施設が「運営規程」(施設の運営ルールを定めた文書)に緊急時の対応方法をあらかじめ定めておくことを求めています。緊急時対応のマニュアルには、発生しうる事態ごとの対処手順を記載します。例えば、利用者の病状が急に悪化した場合は、救急車を呼ぶ、嘱託医や看護職員に連絡する、家族に状況を報告する、必要に応じて同行して医療機関へ搬送する、等の手順を定めておきます。実際に緊急事態が起きたときには、その運営規程に従って速やかに医療機関への連絡や応急処置など必要な対応を行わなければなりません。ポイントは、「 事前に決めて訓練しておいた対応策 を確実に実行する」ことです。
また、緊急時に備えて職員間の情報共有や連絡体制を整えておくことも大切です。例えば夜間や休日に備えてオンコール担当を決めておく、緊急連絡先リストを用意する、非常用の医療物資(AEDや救急箱等)の設置場所を周知しておくといった準備が必要でしょう。第37条はこうした緊急対応体制の整備を義務づけることで、利用者の安全を確保し、万一の際にも適切な対処ができる環境を求めています。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 健康管理責任者の配置: 施設には医師または看護師等を健康管理責任者として任命し、利用者の健康管理体制を明確にしておく。日々の観察記録や健康相談の窓口として機能させます。
- 定期健康診断の実施: 利用者に対して年2回以上の定期健康診断を計画し実施する。健診結果はカルテや記録簿に残し、異常があれば早期に受診・治療につなげます。
- 運営規程への緊急対応策の明記: 施設の運営規程に、緊急時の具体的な対応手順を盛り込んでおく。想定される状況(急病、怪我、災害など)ごとに連絡先や対応方法を定め、定期的に見直しましょう。
- スタッフへの周知と訓練: 緊急時対応マニュアルを職員全員に共有し、定期的に訓練を行っておく。例えば、倒れた利用者への対応訓練や救急連絡のシミュレーションを実施し、いざという時に慌てず対応できるようにします。
【免責事項】
