施設入所支援利用者の入院期間中の取扱いについてをわかりやすく解説
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「施設入所支援利用者の入院期間中の取扱い(基準第38条)」では、入院が短期間の場合に利用者の退所扱いをしないための条件や対応が示されています。この記事では、その通知の内容を、いわゆる3か月ルールとも呼ばれるポイントについてやさしくシンプルに解説します。
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基準第38条の趣旨と「3か月ルール」とは?
まず、基準第38条(施設入所支援利用者の入院期間中の取扱い)の内容を簡単に押さえましょう。条文では、施設入所支援を利用する人が入院する場合において、「入院後おおむね3月以内に退院することが見込まれるとき」は、その人の希望を考慮しつつ必要な支援を行い、特別な事情がない限り退院後に再びスムーズに施設入所支援を利用できるようにしなければならないと定められています。平たく言えば、「入院してもだいたい3ヶ月以内には戻って来られそうなら、退院後に元の施設に戻れるよう席を確保しておくべき」というルールです。この3か月という期間が現場でいう「3か月ルール」の目安になります。では、通知文書ではこの条文中の重要キーワードについてどのような解説がされているのか、順番に見ていきましょう。
通知文書で示された4つのポイント
通知文書「施設入所支援利用者の入院期間中の取扱い」では、条文中の重要なポイントについて次のように解説されています。
- 「入院後おおむね3月以内に退院することが見込まれる」 – 利用者が入院してから約3ヶ月以内に退院できそうかどうかの判断基準です。その見込みがあるかどうかは、利用者が入院している病院や診療所の医師に確認するなどの方法で判断することと示されています。つまり、施設側は主観で決めるのではなく、主治医の意見を聞いて入院期間の見通しを立てる必要があります。
- 「必要に応じて適切な便宜を供与する」 – 直訳すると「必要に応じて適切な便宜を提供する」となりますが、ここでいう「便宜」とは利用者にとって都合の良い取り計らいのことです。通知では具体的に、利用者およびその家族の同意の上で入退院の手続を手伝ったり、個々の状況に応じたサポートを行ったりすることを指すと解説されています。要するに、入院の際の事務手続きや、退院後に施設へ戻る準備などについて、必要なら施設が積極的にお手伝いしましょうという意味です。
- 「やむを得ない事情がある場合」 – 条文では「やむを得ない事情がある場合を除き…再入所できるようにしなければならない」とあります。この「やむを得ない事情」について通知は注意を促しています。まず、施設側の都合による理由(例えば予定していた退院日に施設が満床で戻すベッドが無い等)だけでは「やむを得ない事情」には該当しないと明言されています。一方で例として、利用者の退院が当初の予定より早まった結果、ベッドの確保が間に合わなかった場合など、施設側でも避けられないケースが「やむを得ない事情」に当たるとされています。また、たとえそのようなケース(予定より早い退院など)であっても、できる限り利用者の生活に支障をきたさないように配慮する必要があるとも記載されています。具体的には、元の施設に再入所できるベッドを準備するまでの間、短期入所(ショートステイ)を利用するなどして利用者の受け入れ先を確保するといった対応が求められます。要は、施設の都合で利用者を締め出すようなことがないようにし、万一どうしようもない事情が起きても利用者が困らない策を講じましょうということです。
- 入院期間中のベッドの活用 – 利用者が入院して不在の間、その人が使っていた居室やベッドを他の目的に使ってはいけないのか?という点についても触れられています。通知によれば、入院中の空いたベッドを短期入所など別の利用者のために活用しても差し支えないとされています。ただし重要なのはその次で、当該利用者が退院して戻ってくる際に円滑に再入所できるよう、ベッドの利用計画を立てておかなければならないとも明記されています。つまり、一時的に別の人にベッドを使わせる場合でも、元の利用者が退院する時には必ずそのベッドを空けておけるよう、利用期間や代替措置をきちんと計画しておく必要があるということです。
以上の4点が、厚労省通知文書で解説されている内容です。簡単にまとめると、「おおむね3ヶ月以内に帰って来れるなら退所扱いにしない。必要なサポートを提供し、特別な事情がない限りまた同じ施設で暮らせるように準備しておく」というのが基準第38条とその通知の趣旨になります。
なお、この「おおむね3月以内」という期間について補足します。通知には明確な日数の定義は書かれていませんが、3ヶ月を超える長期入院になる場合は原則として一旦施設を退所(支給決定の取消し)とする運用であることが、過去のQ&A等で示されています。つまり3ヶ月程度を超えて入院が長引くようなら、利用者は一度施設サービスの利用契約が終了扱いになる可能性が高いということです(※自治体によって若干扱いが異なる場合がありますが、厚労省の方針としては同様です)。そのため、入院が長引きそうかどうかを早めに主治医に確認し、3ヶ月以内で退院できる見込みなのか、あるいは長期療養になるのかを見極めておくことが大切です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 主治医への確認: 利用者が入院したら、まず医師におおよその入院期間(3ヶ月以内に退院できそうか)を確認しましょう。3ヶ月程度以内に退院可能であれば、施設として支援継続の準備を始めます。
- 入退院手続のサポート: 利用者やご家族の負担を減らすため、入院時の手続きや退院調整において施設職員がサポートできることは積極的に行いましょう。ただし、必ず利用者本人・家族の同意を得てから行うようにします。
- ベッドの確保と活用: 利用者が入院中、その空いたベッドを短期入所サービス等に活用すること自体は可能ですが、退院予定日には元の利用者が戻れるよう必ずベッドを空けておく計画を立ててください。予定退院日に満床で「戻れません」では済まされないので、短期入所の受け入れ期間を調整するなど計画的な運営が必要です。
- 「やむを得ない事情」の慎重な判断: 施設側の都合(スタッフ不足や他利用者の受入れなど)を理由に利用者の再入所を拒むことは認められません。本当に「やむを得ない事情」と言えるのは、施設ではコントロールできない特別なケースに限られます。
- 長期入院時の対応: 入院期間が3ヶ月を超える見込みの場合は、原則として施設サービスの支給決定の解除(退所)につながります。この場合、市町村(行政)との連絡調整も必要です。利用者・ご家族とも相談の上、退所手続や退院後の受け入れ先(必要なら再入所の手続きし直し等)について早めに検討しておきましょう。
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