障害者支援施設の管理者の役割と兼務をわかりやすく解説
記事の概要:
障害者支援施設とは、自宅での生活が難しい障害者が入所して暮らし、日中活動の支援や生活上の介護などを受けられる施設です。こうした施設には必ず管理者(施設長)が置かれ、その役割は法律の基準第40条で定められています。本記事では、障害者支援施設の管理者に焦点を当て、その役割と他の職務との兼務に関するルールを、やさしくシンプルに説明します。
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管理者の役割(基準第40条)とは?
障害者支援施設の管理者は、施設全体の運営を預かる重要な存在です。法律の「人員・設備及び運営に関する基準」の第40条では、管理者の主な責務(役割)が次のように定められています。
- 施設全体の一元的な管理:管理者は、その施設の職員や業務をまとめて管理し、施設内で提供されるサービスの状況をきちんと把握します。言い換えれば、施設の中で起きていることを全体的に見渡し、利用者さんへの支援が滞りなく行われるように指揮を執るのが仕事です。日々のケアや行事の様子まで把握し、必要に応じてスタッフに助言や調整を行います。
- 職員への指示・命令によるルールの徹底:管理者は、施設の職員に対して必要な指示や命令を行い、職員が定められたルール(運営基準)をしっかり守るようにする責任があります。施設運営のルールには、利用者への適切なサービス提供や安全確保、プライバシー保護、虐待防止、緊急時の対応など様々な決まりがあります。管理者はこれらが現場できちんと守られるよう目を配り、「ここはこうしてください」「ルールではこう決まっていますよ」とスタッフに伝えて徹底させます。
要するに、障害者支援施設の管理者は「施設の指揮官」です。全スタッフと利用者の日々の状況を把握して円滑に運営すること、そして法令で定められた運営上の決まりを現場に浸透させることが、管理者の大きな役割なのです。
管理者は他の仕事と兼務できる?
基本的な考え方:障害者支援施設の管理者は、原則としてその施設の業務に専念することが求められます。施設全体をまとめる役割のため、管理業務に集中したほうが望ましいからです。法律上も「専ら当該事業所(施設)の職務に従事するもの」と規定されており、これが大原則になります。
しかし、現実には施設の規模や運営形態によっては、管理者が他の仕事を兼ねる場面もあります。そこで基準第40条に関連するルールでは、条件付きで兼務が許可されています。その条件とは「利用者の支援に支障がない場合」です。簡単に言えば、利用者へのサービス提供に影響が出ないのであれば、管理者が他の職務を掛け持ちしてもよいということです。
例えば、小規模な障害者支援施設で利用者数や職員数が少ない場合、管理者が日中に介護スタッフとして現場でケアをしながら管理業務を行う、といったケースもありえます。また、同一法人が複数の障害者支援施設を運営しているような場合に、一人の管理者が複数の施設を兼任することも認められています。ただし「支障がない場合」に限るため、兼務によってどちらの業務もおろそかになるようでは許されません。
重要なポイントは、兼務をする場合でも施設運営に支障が出ないようにする責任は事業者にあるということです。管理者が他の仕事を掛け持ちすることで現場の目が行き届かなくなったり、判断が遅れたりして利用者に不利益が生じてはいけません。現行のルールでは、各施設ごとに職員の勤務表(月間のシフト表)を作成し、そこに誰がどの時間帯に働き、常勤か非常勤か、さらに管理者と兼務しているかどうかも明記することになっています。これは兼務状況をきちんと見える化し、問題がないか確認できるようにするためです。管理者が兼務する場合には、その勤務表で時間配分や勤務形態を整理し、監督官庁から見ても「支障なく運営できている」と説明できる状態にしておくことが望ましいでしょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 管理者の設置と役割理解:障害者支援施設ごとに必ず1名の管理者(施設長)を配置し、その人物が施設全体の責任者となります。管理者には職員管理とサービス運営の統括、および法令遵守の徹底という重要な役割があることを理解しましょう。適切な経験・資質を持つ人材を選び、責務を十分に果たせるよう支援することが大切です。
- 兼務の判断は慎重に:管理者の兼務は可能とはいえ、「利用者支援に支障がないか」を常に最優先で判断しましょう。人件費や人員確保の事情から一人に複数の役割を任せたくなることもありますが、結果的にサービスの質が下がっては本末転倒です。施設の規模や利用者の状態を見極め、管理者が無理なくその責務を全うできる体制を整えてください。必要に応じて管理業務をサポートする副施設長やリーダー職を置くことも検討しましょう。
- 運営体制の見える化と遵法精神:管理者の勤務状況や兼務状況はシフト表などで明確に示し、職員にも外部にもわかるようにしておきます。これは透明性を高め、組織としてサービス提供に万全を期すためです。また、基準第40条をはじめとする運営基準を遵守することは、行政からの指定を受け続ける上でも不可欠です。日頃から管理者を中心に運営体制をチェックし、「ルールに沿った運営ができているか」「無理な兼務で現場に負担がかかっていないか」を点検する習慣を持ちましょう。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
