指定障害者支援施設等における勤務体制の確保等(基準第42条)の解説
記事の概要:
指定障害者支援施設等を運営するには、スタッフの勤務体制をしっかり整えることが求められます。本記事では、厚生労働省の定める運営基準(基準第42条)にある「勤務体制の確保等」について、ポイントをやさしくシンプルに解説します。勤務表の作成、業務委託の可否、従業者研修の機会確保という3つの点について、指定障害者支援施設等の視点で解説します。
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基準第42条第1項:勤務表による勤務体制の明確化
基準第42条第1項では、指定障害者支援施設等ごとに原則として月ごとの勤務表を作成することが求められています。勤務表とは、従業員のシフトや担当を一覧にした表で、スタッフの勤務体制をはっきり示すものです。勤務表には次のような情報を記載します:
- 勤務時間帯: 各従業者の毎日の勤務開始時刻と終了時刻。
- 常勤・非常勤の別: その職員が常勤(フルタイム)か非常勤(パート)か。
- 管理者との兼務状況: 施設長など管理者を兼ねている場合はその旨。
このように勤務表を整備することで、毎日のスタッフ配置が明確になり、利用者への支援に抜けやムラが出ません。施設内を複数のユニット(グループ)に分けている場合は、ユニットごとに勤務表を作成し、それぞれ誰がいつ勤務するかを示す必要があります。勤務表は職員管理のツールであると同時に、利用者へ安定したサービスを提供する土台となります。
基準第42条第2項:直接支援に関わらない業務の委託
第42条第2項では、施設の従業者自身がサービスを提供するのが原則であり、利用者の介護や支援など直接かかわる業務は自前のスタッフが行うべきだと定められています。一方、利用者の直接介護に関わらない業務であれば、外部の第三者に業務委託(アウトソーシング)することも可能です。例えば洗濯(衣類やシーツを洗う作業)は直接の介護行為ではないため、専門業者への委託が認められる典型例です。
委託できる業務の例としては清掃、洗濯、給食の調理などがあり、委託できない業務には食事介助、入浴介助、排せつ介助などがあります。間接業務は、職員が行わなくてもサービスの質に大きな影響を与えにくいため外部委託が可能です。一方、食事介助や入浴介助など利用者と直接かかわる介護業務は、施設職員が責任を持って行う必要があります。適切に業務委託を活用すれば職員は利用者支援に専念できますが、委託時には契約内容の確認や委託先への指導・連絡を怠らず、サービス品質の維持に努める必要があります。
基準第42条第3項:従業者研修の機会確保による質の向上
第42条第3項では、職員の資質向上(スキルアップ)のために研修の機会を計画的に設けることが求められています。具体的には、福祉・介護分野の研修機関が実施する外部研修や、施設内での内部研修に職員が計画的に参加できるようにする必要があります。「計画的に」とは、思いつきではなく年間計画を立てて定期的に研修を行うことです。
研修のテーマは新人向けの介護技術や安全管理、障害理解など様々です。先輩職員が講師を務める施設内研修や外部講師の招請なども組み合わせ、研修を継続的に行えば職員の知識・技術が向上し、サービスの質向上につながります。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 勤務表の整備: 勤務表は単なるシフト表ではなく、適正な勤務体制を示す重要な書類です。毎月必ず作成・更新し、ユニットごとに勤務表が必要な場合は分けて用意しましょう。
- 業務委託の範囲を理解: 外部に委託できる業務とできない業務の線引きを明確に理解しておきましょう。直接支援に当たる介護業務は委託不可なので自施設の職員で対応し、清掃や洗濯などの間接業務は業務委託を活用して運営負担を減らせます。ただし、契約内容を明確に取り決め、委託後も業務の質に目を配る責任が事業者にはあります。
- 研修計画の策定と実施: 職員研修の実施は基準で義務付けられています。年度ごとに研修計画を立て、新人研修や定期研修を確実に行いましょう。研修で学んだことを職員同士で共有すれば、現場全体のレベルアップにもつながります。
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