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独習 障害者支援施設等 指定基準 | 第三 指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準 3 運営に関する基準 (41) 

害者支援施設の指定基準 第44条「非常災害対策」をやさしく解説


記事の概要:
本記事では、障害者支援施設の設備及び運営基準に定められた第44条「非常災害対策」の内容を、やさしくシンプルに解説します。障害者支援施設(障害者総合支援法に基づく入所施設)の運営者や開業予定者が、第44条で何を求められているのか正しく理解できることを目的としています。

障害者支援施設の設備及び運営基準第44条では、災害や緊急時に備えて施設がとるべき対策が定められています。条文をかみ砕くと、主に次のようなポイントがあります。

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1. 消火設備など必要な防災設備を設置すること

まず施設には、消火設備をはじめとした「非常災害に際して必要な設備」をきちんと備え付ける義務があります。簡単に言えば、火事や災害時に役立つ設備をあらかじめ用意しておくということです。例えば、各所に消火器を設置したり、煙探知機(火災報知器)やスプリンクラー、防火シャッター、非常灯などを法令に従って備える必要があります。これらの設備は消防法などで設置基準が細かく決められており、施設の規模や構造によって求められるものが異なります。大切なのは法律で定められた防災設備を漏れなく設置し、常に使える状態に維持することです。

2. 非常災害対策計画(緊急時の具体的計画)を策定すること

次に、非常災害対策計画と呼ばれる緊急時の対応計画を作成する義務があります。これは、火災や地震、水害など様々な災害が起きたときに「誰が」「何を」「どのように行うか」を具体的に決めておく計画書です。たとえば以下のような内容を含めます。

  • 消防計画の作成: 消防法施行規則で定められた「消防計画」を作成します。これは火災が起きた際の社内対応をまとめたもので、どの職員が119番通報をするか、初期消火は誰が担当するか、避難誘導の役割分担などを定めます。なお、一定規模以上の施設では防火管理者の選任と消防計画の届け出が義務付けられています(専門的な部分は消防署に確認しましょう)。
  • その他の災害への備え: 火災以外にも、地震や台風・豪雨による洪水、土砂災害などを想定した計画を立てます。例えば、地震時の避難経路や避難場所、津波が来る可能性がある地域では高台への避難手順、台風時の浸水対策などです。非常食・飲料水や医薬品の備蓄場所、停電時の連絡手段なども計画に含めておきます。

この計画は職員みんなで共有し、定期的に見直すことが大切です。災害時の対応を文字にしておくだけでなく、実際に機能する計画にするには日頃の訓練や周知が必要だからです。

3. 関係機関への通報・連絡体制を整備すること

非常災害時の通報および連絡体制をあらかじめ整えておくことも、第44条で求められています。これは、緊急時に速やかに外部へ助けを求めたり情報共有したりできるようにする準備です。具体的には次のような取り組みが考えられます。

  • 消防署や警察への通報手順: 火災や重大事故が発生した際、すぐに119番通報できるように電話の位置や外線発信の手順を確認し、どの職員が通報役になるか決めておきます。また、警報設備が自動で消防に通報する仕組み(自動火災報知設備の連動通報等)がある場合も、その動作を定期的に点検します。
  • 日頃から関係機関と連携: 普段から地域の消防署や消防団、警察署、近隣の住民とも顔の見える関係を築いておくことが重要です。例えば、地元の消防訓練に参加したり、消防署の防火指導を受けたりしておくと良いでしょう。こうした連携により、万一火災等が起きたときに消火や避難の協力を得やすくなる体制を作れます。また、避難先として近隣の学校や公民館を想定している場合は、それら施設の管理者とも事前に話し合い連携しておくと安心です。

要するに、非常時に外部と素早くつながる仕組みを用意しておくということです。職員への周知も含め、いざというときに慌てず対応できる連絡網を整備しましょう。

4. 定期的に避難訓練・救出訓練を実施すること

最後に、施設では定期的に避難訓練や救出訓練などの非常時対応の訓練を行う義務があります。机上の計画だけでなく、実際に訓練を重ねることで職員も利用者も非常時の動きを身につけることができます。

  • 避難訓練: 少なくとも年に1~2回は、火災を想定した避難訓練を行いましょう。館内放送や非常ベルを実際に鳴らし、職員が利用者役を誘導して建物外の避難場所まで避難します。夜間想定(職員が少ない時間帯の想定)や地震想定の訓練も交えて行うと、より実践的です。
  • 消火・救出訓練: 初期消火の訓練として、水消火器や訓練用消火器を使った消火練習を行います。消防署による消防訓練に参加させてもらうことも効果的です。また、避難が難しい利用者を救出する訓練も重要です。車いす利用者の階段介助方法や、避難用担架・避難椅子(エレベーターモーター付き車椅子など)の使い方を練習しておきます。複数職員での抱きかかえ搬送の手順なども訓練で確認します。

訓練結果は記録し、反省点があれば非常災害対策計画にフィードバックして改善しましょう。訓練の積み重ねによって非常時にも落ち着いて対応できる力が養われますし、いざというときパニックを防ぐことができます。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 法令で必要な防災設備を確認・設置: 消火器や非常ベルなど、消防法や建築基準法で設置が義務付けられている設備を漏れなく備えましょう。新規開業時には消防計画の届出や防火管理者の選任も必要なので、所轄の消防署に事前に確認してください。
  • 非常災害対策計画を作成・更新: 施設の特性や地域の災害リスクに合わせた緊急時対応マニュアルを作成します。計画は書類棚にしまい込まず、定期的に見直して最新の状態に保ちましょう。
  • 関係機関との情報共有: 開業前から地元の消防署に相談し、施設の平面図や避難経路を共有しておくとよいでしょう。避難訓練に消防職員に立ち会ってもらったり、地域の防災訓練に利用者と参加したりすることで、顔の見える関係づくりを意識します。緊急時の連絡先リスト(消防、警察、自治体担当部署など)も作成し掲示しておきましょう。
  • 職員教育と訓練の計画: 年間の防災研修計画を立て、新人研修や定期研修で必ず非常時対応を取り上げます。避難訓練の日程をあらかじめ年度計画に入れておき、実施後は職員間で振り返りを行いましょう。訓練結果は記録し、必要なら計画を修正します。
  • 利用者への配慮: 利用者にも簡単で構いませんので避難訓練への参加を促し、非常ベルや避難方法に慣れてもらいます。また、避難時に特に支援が必要な利用者(車いす利用者や寝たきりの方等)は誰がどうサポートするか平時から決めておき、その支援方法について職員同士で共有・練習しておきましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。