障害児支援利用計画案の説明・同意と支援計画書交付の解説
記事の概要:
障害児相談支援(計画相談支援)の現場では、サービス担当者会議の終了後に障害児支援利用計画案を関係者で確認し、保護者等から文書による同意を得ることが求められます。同意を得て確定した障害児支援利用計画は、できるだけ早く本人・家族とサービス提供事業所に交付され、全員で内容を共有する必要があります。本記事では、この「計画案の説明・同意取得」と「計画書の交付・連携強化」のポイントについて、やさしくシンプルに解説します。
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サービス担当者会議後の計画案説明と同意取得
サービス担当者会議とは、相談支援専門員(障害児相談支援を行う専門員)が、障害児支援利用計画案について関係する福祉サービス提供事業所の担当者を招集して話し合う会議です。この会議で各専門職の意見を踏まえて計画案を調整した後、その計画案の内容を障害のあるお子さん本人やそのご家族に対して説明します。重要なのは、口頭で説明するだけではなく、文書で同意を得ることです。具体的には、計画案の内容に保護者が署名・押印する形で確認し、書面により同意をいただきます。これによって、計画案が正式に承認され、サービス利用計画が確定します。保護者の同意取得は法律上の義務であり、同意がなければ計画を進めることはできません。同意をもらった日時や方法はしっかり記録し、後日のために保存しておくことが望ましいでしょう。
短くまとめると、サービス担当者会議後には以下のステップを踏みます。
- 計画案の説明: 相談支援専門員が障害児本人・家族に計画案をわかりやすく説明します。専門用語はできるだけ避け、支援内容や目的を丁寧に伝えます。
- 文書による同意: 説明後、計画案にご家族の理解・了承を得たら、書面で同意をもらいます。計画案の同意欄に署名をいただくか、別途同意書にサインしてもらう方法が一般的です。
- 計画の確定: 文書同意が得られた時点で障害児支援利用計画が正式に確定します。ここまでが同意取得のプロセスとなります。
確定した障害児支援利用計画の交付と共有
保護者の同意を得て確定した障害児支援利用計画は、遅滞なく(できるだけ早く)関係者へ交付する必要があります。具体的には、障害児本人・ご家族と、サービス提供事業所の各担当者に計画書を配布します。ここで重要なのは、単に紙を配るだけでなく、内容を十分に説明して共有することです。相談支援専門員は計画書を交付する際に、その計画の趣旨(狙い)や具体的なサービス内容、役割分担について各担当者にしっかり説明します。それにより、例えばデイサービスや訪問支援を提供する事業所側のスタッフが、自分の提供するサービスが計画全体の中でどのような位置付けであるかを理解できます。
計画書の共有により、家族と事業所スタッフ、相談支援専門員の三者が一体となって障害児の支援に取り組む土台ができます。お互いが同じ計画書を持ち、同じ方向を向いて支援にあたることで、サービスの重複や抜け漏れを防ぎ、より質の高い支援が実現します。また、計画書には支援目標やサービス内容、役割が明記されていますので、後々のモニタリング(経過観察)でも「当初の計画通りに進んでいるか」「目標に進捗はあるか」を振り返りやすくなります。
障害児支援利用計画の確定後に行うこと
- 計画書を障害児本人・家族に手渡し、内容を再確認する
- 計画書を各サービス提供事業所の担当者にも配布する
- 提供者ごとに、自分のサービスの役割を計画内で説明し合う
- 全員で計画の目的と支援方針を共有し、一丸となって取り組む
サービス提供事業所との連携強化と情報交換
障害児相談支援では、相談支援専門員とサービス提供事業所(例:児童発達支援や放課後等デイサービス事業所)の連携がとても大切です。計画書交付後も、一方向の伝達で終わらせず双方向の情報交換を行うことが推奨されています。実は、障害児通所支援事業所(デイサービス等)の基準にも、「事業所は相談支援事業者に対して個別支援計画を交付しなければならない」と定められています。つまり、デイサービス側で作成する個別支援計画(各事業所が立てる利用者支援計画)を、相談支援専門員にも渡す必要があるのです。これによって、相談支援専門員が作成した障害児支援利用計画と、事業所ごとの個別支援計画が相互に共有されることになります。
さらに、お互いのモニタリング結果(支援の経過や成果に関する記録)を交換したり、相互の会議に出席するなどして連携を深めることも重要だとされています。例えば、デイサービス事業所が開催する支援検討会に相談支援専門員が参加したり、その逆に相談支援専門員が開催するサービス担当者会議に事業所スタッフが出席するといった取り組みです。こうした顔の見える連携を継続することで、支援の質がさらに向上し、情報伝達のタイムラグや行き違いを防ぐことができます。行政通知でも「計画書及びモニタリング結果を交換し合い、互いの会議に出席することで連携を一層促進することが重要である」と強調されています。
最後に、書類の保管義務について触れておきます。作成した障害児支援利用計画やサービス担当者会議の記録などは、法律に基づき5年間保存しなければなりません。これは事業所の運営基準で定められたルールで、監査などにおいて適切に記録が保管されているか確認されます。電子データで保存する場合も、相手方(保護者)の承諾を得て適切な方法で行う必要があります。日々の業務で書類が増えていきますが、保存期間と保管場所の管理を徹底し、必要なときにすぐ取り出せるようにしておきましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 計画案の説明と書面同意は必須: 相談支援専門員はサービス担当者会議後、計画案を障害児本人や保護者に丁寧に説明し、必ず文書で同意を得ること。同意なしに計画を進めることはできません。
- 計画書の速やかな交付と共有: 確定した障害児支援利用計画書は、遅滞なく本人・家族と関係するサービス提供者全員に交付します。交付時には計画の目的・内容を十分説明し、全員で支援方針を共有しましょう。
- 事業所との綿密な連携: 相談支援専門員とサービス提供事業所はお互いに計画書やモニタリング結果を交換し合い、必要に応じて互いの会議にも参加します。双方向の情報共有で支援の質を高め、計画書類は5年間保存するなどコンプライアンスも遵守します。
【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。
