障害児相談支援における「インクルージョンの観点」をわかりやすく解説
記事の概要:
令和6年度(2024年)の制度改正により、障害児相談支援において相談支援専門員が「インクルージョンの観点」を踏まえた情報提供・助言を行うことが求められるようになりました。インクルージョンとは、障害のある子どももない子どもも地域社会で共に育ち、共に生活するという考え方です。この記事では、インクルージョンの意味と、相談支援専門員が具体的にどのような支援を行えばよいのかを、やさしくシンプルに解説します。
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相談支援専門員と障害児相談支援とは?
まず、障害児相談支援とは、障害のあるお子さんやご家族が適切な福祉サービスを利用できるよう支援計画(障害児支援利用計画)を作成し、サービス利用をお手伝いする公的サービスです。この支援計画の作成や見直しの役割を担うのが相談支援専門員です。相談支援専門員は福祉の専門知識を持ち、利用者である障害児の状況や希望を聞き取りながら、どのようなサービスを組み合わせればその子にとって最も適切かを考え、計画を立てます。
相談支援専門員は計画を作成するだけでなく、サービス提供が始まった後も定期的に様子を確認(モニタリング)し、必要に応じて計画の変更やサービスの調整を行います。また、サービス事業者や市町村など関係機関との連絡調整も行い、障害児とその家族が途切れのない支援を受けられるようにする役割も果たします。
インクルージョン(包摂)とは何か?
インクルージョンとは「包含」や「包摂(ほうせつ)」とも訳される言葉で、障害のある人を特別扱いするのではなく、初めから地域社会の一員として受け入れ、ともに生活するという考え方です。障害児の分野におけるインクルージョンは、障害のある子もない子も同じ地域や環境で育ち、学び、遊ぶことを目指します。たとえば、障害のある子どもが地域の保育園や学校で他の子どもたちと一緒に過ごすこともインクルージョンの一環です。
この考え方の背景には、障害の有無に関わらずすべての子どもが共に成長できる社会をつくろうという目標があります。昔は障害のある子どもが専門の施設やクラスに分けられることも多くありましたが、現在ではできるだけ地域の中で共に過ごすことが大切だとされています。そのため、福祉サービスを利用する際もインクルージョンの視点を持つことが重要になっています。
インクルージョンの観点を踏まえた情報提供・助言とは?
今回の制度改正で強調されたのが、相談支援専門員がインクルージョンの観点を踏まえて情報提供や助言を行うことです。具体的には、相談支援専門員が支援計画を作る際に、以下のようなポイントを考慮して情報提供・助言を行います。
障害児の心身の状況や環境に即した支援:お子さん一人ひとり、障害の状態も生活環境も違います。相談支援専門員はまずその子の発達状況や体調、家庭や学校での環境などをよく理解します。その上で、その子に合った支援サービスを考え、適切な情報を提供します。インクルージョンの観点とは、支援を検討する際に障害児ができる限り地域で他の子どもたちと一緒に過ごせるよう配慮することでもあります。
利用者の選択を尊重した助言:相談支援専門員は、障害児本人やご家族の選択も大切にします。インクルージョンを重視しても、最終的にどのサービスを利用するかは本人・家族の希望があります。相談支援専門員は選択肢を広く提示し、利用者が納得して選べるよう助言します。
多様な事業者のサービスを組み合わせる:インクルージョンの実現には、一つの事業者だけでなく様々なサービス提供者との連携が重要です。相談支援専門員は福祉サービス事業所だけでなく、地域の学校・保育所、放課後等デイサービス、医療機関、ボランティア団体など、多岐にわたる資源から必要な支援を検討します。例えば、平日は学校と放課後等デイサービス、週末は地域の子ども会活動に参加するといったように、複数の支援を組み合わせて計画します。こうして複数の事業者が連携することで、障害児が孤立せず地域社会の中で成長できる環境を整えます。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- インクルージョンの基本理念:障害のある子もない子も分け隔てなく共に育つ社会を目指すインクルージョンは、現在の障害児支援の重要な柱です。事業者もこの理念を理解し、日々の支援に取り入れる必要があります。
- 公正中立な情報提供と計画作成:相談支援専門員は特定の事業者に偏らず、多様なサービスを公平に紹介して支援計画を作成することが義務付けられました。利用者本位で、家族の希望に沿った提案を心がけましょう。
- 地域資源との連携強化:インクルージョンを実現するため、福祉サービスだけでなく教育・医療・地域活動など様々な機関と連携する姿勢が求められます。起業を目指す方も、地域の学校や行政とのネットワークを構築し、包括的な支援体制を準備しておくことが大切です。
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