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独習 障害児相談支援 指定基準 | 第二 指定障害児相談支援に関する基準 2  運営に関する基準 (11) ⑨ ⑩

害児相談支援におけるアセスメントと支援計画作成のポイント解説


記事の概要:
障害児相談支援において、相談支援専門員が行う重要な業務として「アセスメント(ニーズ把握のための評価)」と「障害児支援利用計画案の作成」があります。この記事では、この2つのステップについて、最新の基準に基づくポイントをやさしくシンプルに解説します。特に、居宅訪問による面接の重要性や、計画案に盛り込むべき目標設定とモニタリング期間について、専門用語をかみ砕いて説明します。

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アセスメントで押さえておくべきポイント

アセスメントとは、支援計画を立てる前に障害児本人とその家族の状況やニーズを詳しく把握するための評価作業です。相談支援専門員はこのアセスメントを行う際、必ず障害児の居宅(自宅)を訪問して、本人および家族と直接面談することが義務付けられています。普段子どもがどのような環境で生活し、どんな様子なのかを現場で確認することが大切だからです。自宅訪問で生活環境を実地に見ることで、書類や口頭の情報だけでは分からない支援のヒントが得られます。

居宅訪問による面接では、子どもや家族との信頼関係を築くことが何より重要です。初対面ですぐに信頼してもらうのは難しいですが、丁寧に説明し相手の話に耳を傾けることで少しずつ協力的な関係(協働関係)を築いていきます。相談支援専門員は、面接の目的や意図を子ども本人と家族にしっかり説明し、理解と納得を得るよう努めなければなりません。「なぜ自宅訪問して話を聞くのか」「集めた情報をどう支援に活かすのか」をきちんと伝えることで、家族も安心して協力してくれます。

また、相談支援専門員自身も面接のスキルアップに励むことが求められています。子どもとのコミュニケーション技法や、ご家族から本音や困りごとを引き出すインタビュー技法などを研修や経験で磨き、より良いアセスメントができるよう研鑽しましょう。適切なアセスメントによって、支援計画の土台となる課題の把握やニーズの分析が的確に行われ、結果として子どものQOL(生活の質)の維持・向上につながる支援策を考えることができます。

障害児支援利用計画案の作成でのポイント

アセスメントを経て明らかになった情報をもとに、相談支援専門員は「障害児支援利用計画案」を作成します。障害児支援利用計画は、その後の支援サービス提供の指針となる重要な計画であり、子どもの生活の質に直接影響するものです。そのため専門員はその重要性を十分に認識して、責任を持って計画案を作成しなければなりません。

計画案を作る際の第一歩は、子ども本人と家族の希望(どう生活したいか)や、アセスメントで把握された解決すべき課題を明確に整理することです。例えば、「集団活動に参加できるようになりたい」「家族の介護負担を減らしたい」などの希望や、「対人関係でパニックになることが課題」など現状の問題点を洗い出します。その上で、地域で利用できる福祉サービス資源を考慮して、実現可能な支援計画に落とし込む必要があります。ここでいう「指定通所支援」とは、地域の通所型の障害児支援サービス(例:児童発達支援や放課後等デイサービスなど)を指します。地域にどのような事業所・サービスがあるか、その提供体制を踏まえて計画を立てることで、絵に描いた餅ではない実行できる計画になります。

次に、計画案には具体的な目標設定が欠かせません。提供予定の福祉サービスごとに、長期目標(最終的に達成したい状態)と、そこに到達するための短期目標(段階的な目標)を設定し、それぞれの達成予定時期を明確に記載します。長期目標はおおむね1年程度先を見据え、短期目標は数か月スパンで設定することが一般的です。例えば長期目標を「○○ができるようになる」と定めたら、短期目標では「まず△ヶ月で○○の準備段階として△△に取り組む」といった具体的な内容と期限を決めます。このように目標と期限をはっきり示すことで、支援の方向性が誰にでも分かりやすくなり、後から支援の効果を検証しやすくなります。

さらに、計画案には市町村に提案するモニタリング期間も盛り込みます。モニタリング期間とは、計画実施後に定期的に見直しや評価を行うための期間のことです。ポイントは、この期間をサービスの種類だけで機械的に決めないことです。障害児一人ひとりの心身の状態や、相談支援事業者(専門員)が関わる必要性の度合い(関わりの内容・頻度)を考慮して、柔軟に適切な期間を提案する必要があります。一般的な標準モニタリング期間(国の基準で示された「実施標準期間」)というものはありますが、例えば標準が6か月ごとであっても、子どもの状態によってはもっと頻繁に(例えば3か月ごとなど)様子を見て計画を見直した方が良いケースもあります。標準期間はあくまで目安であり、より丁寧な関わりが必要な利用者には標準以上の頻度でモニタリングを行うよう提案しましょう。

設定した長期・短期目標の達成時期に合わせてモニタリングを行うことも大切です。つまり、「○ヶ月後に短期目標を達成する予定」というタイミングに、市町村と連携してモニタリング(面談や計画の効果検証)を実施できるようにしておくのです【※】。そうすることで、その時点で支援計画や提供中のサービス(指定通所支援)の成果を評価し、必要があれば計画の見直しやサービス内容の調整につなげることができます。計画作成時にモニタリングのサイクルまで考えておくことで、Plan-Do-Check-Act(計画・実行・評価・改善)の循環がスムーズに回り、子どもの支援に継続的な質の向上を図れるでしょう。

※モニタリングは通常、市町村がサービス支給決定を行う際にその標準期間(例:6か月ごと等)を設定しますが、相談支援専門員が計画案で提案した頻度も考慮されます。計画段階で適切な提案をすることが重要です。

参考: アセスメントと支援利用計画案作成の主なポイント比較

項目アセスメント (ニーズ把握)支援利用計画案 作成 (計画立案)
目的子どもの生活全般の状況や課題を把握し、支援の基礎情報を集める。子どもと家族の希望や課題に沿った具体的な支援内容と目標を定め、実行プランを作成する。
実施方法必ず居宅訪問し、子ども本人と家族に直接面接。日常生活の様子や環境を現地で確認。アセスメント結果を踏まえて計画を策定。利用可能な地域サービス(通所支援等)を考慮し、書面で計画案を作成。
重要ポイント信頼関係の構築。面接の趣旨を十分説明して理解を得る。面接スキルを磨き的確にニーズを聞き取る。希望と課題を明確化。長期・短期目標と期限を設定。モニタリング期間を柔軟に提案。計画が実現可能であること。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 居宅訪問と信頼関係構築が基本: 相談支援専門員はアセスメント時に必ず障害児の自宅を訪問し、本人・家族と直接面談します。現場で生活状況を確認し、丁寧な説明と傾聴によって信頼関係を築くことが重要です。
  • 希望と課題に即した現実的な計画: 支援利用計画案は家族の希望と障害児の課題を起点に、地域で利用可能なサービス資源を踏まえて策定します。長期目標・短期目標を明確に設定し、実現可能で具体的な支援プランに落とし込みましょう。
  • 柔軟なモニタリング設定とPDCA: 計画案にはサービス提供後のモニタリング期間を提案します。子どもの状態に応じて標準期間にとらわれず柔軟に頻度を決め、目標達成時期に合わせて評価・見直しできるようにします。このPDCAサイクルの視点が継続的な支援の質向上につながります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。