指定障害児相談支援の運営規程とは?
記事の概要:
本記事では、事業所ごとに定めることが義務付けられている「運営規程」について、最新の制度改正内容も踏まえてわかりやすく解説します。運営規程とは、事業運営の基本ルールを定めたものです。児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の基準では、8項目にわたる重要事項を運営規程に盛り込むよう求めています。特に職員体制や虐待防止策、地域生活支援拠点等に関する事項は押さえておくべきポイントです。本記事を読めば、やさしくシンプルな言葉で運営規程の要点が理解でき、「なるほど!」と思える知識が身につきます。
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運営規程に定めるべき内容とは
運営規程には、指定障害児相談支援事業所の運営に関する重要な事項を網羅する必要があります。具体的には基準第19条で定められた8つの項目を含める必要があります。主な項目は以下のとおりです(②~④および一部⑤⑥は詳細解説が解釈通知においては省略されています)。
- 事業の目的・運営方針(第1号):事業所が提供する障害児相談支援の目的や基本的な運営の方針を明記します。
- 職員の職種・員数・職務内容(第2号):事業所に配置する職員の種類、人数および担当業務の内容を定めます(後述)。
- 営業日・営業時間(第3号):事業所の開所日や相談受付時間など、サービス提供の日時に関する事項です。
- 提供する支援内容と利用料(第4号):行う相談支援の具体的な内容や、利用者負担(利用料)があればその額等を記載します。
- サービス利用の手続等(第5号・第6号):利用申込から契約、提供方法、苦情対応など、サービス利用に関する手順や留意事項です(苦情対応は虐待防止策の一部としても後述)。
- 虐待防止のための措置(第7号):後述する利用者虐待の未然防止策について、具体的な取り組みを定めます。
- その他運営上の重要事項(第8号):自治体から地域生活支援拠点等に指定されている場合はその旨など、上記以外の重要事項を含めます。
以上のように運営規程には幅広い項目を網羅しますが、以下では特に重要なポイントである職員体制・虐待防止策・地域生活支援拠点等に関する記載について詳しく見ていきましょう。
職員の職種ごとの員数と役割の明記
運営規程の中でまず重要なのが職員体制の明確化です。具体的には、事業所に配置する職員を「相談支援専門員」「相談支援員」「その他の従業者」といった区分ごとに分けて、それぞれ何人配置するか(員数)とどのような職務を担当するかを記載します。例えば、相談支援専門員〇人以上、相談支援員〇人以上といった形で記載し、それぞれの役割(サービス利用計画の作成や相談対応など)を明示します。
特に留意すべきは、職員の「員数」(人数)の書き方です。職員数は日々変動する可能性があるため、運営規程では最低基準を満たす範囲で「○人以上」といった表記が認められています。これは業務負担を軽減する観点から、毎回規程を変更する手間を省くための柔軟な措置です。例えば「相談支援専門員 2人以上配置」と記載すれば、2人を下回らない限り規程の変更なしに対応できます。なお、この緩和措置は利用者への重要事項説明書(基準第5条に基づく書面)に記載する場合も同様に適用できます。
虐待防止のための措置を運営規程に組み込む
近年特に重視されているのが、障害児への虐待防止策を事前に規程で定めておくことです。障害者虐待防止法(平成23年法律第79号)では、障害者への虐待を未然に防ぐ対策や、万が一虐待が発生した場合の対応策が規定されています。しかし指定障害児相談支援事業所では、より実効性を高めるために、これら虐待防止のための取り組みをあらかじめ運営規程に明文化することが求められています。事業者は利用者への虐待を早期に発見し迅速かつ適切に対応できるよう、具体的な体制を整備しておく必要があります。
運営規程に定める具体的な虐待防止策としては、次のような内容が挙げられます。
- 虐待防止責任者の選任: 事業所内で虐待防止に関する担当責任者(窓口)を予め決めます。誰が責任を持って対応に当たるか明確にしましょう。
- 成年後見制度の利用支援: 判断能力が不十分な障害児や保護者を支援するため、必要に応じて成年後見制度の利用をサポートする体制を整えます。例えば、成年後見制度の情報提供や家庭裁判所手続きの支援などです。
- 苦情解決体制の整備: 利用者や家族からの苦情や相談を受け付け、適切に処理する苦情解決の仕組みを設けます。苦情窓口の設置や、苦情対応の手順を定め、問題の早期発見にもつなげます。
- 職員研修の実施: 職員に対して定期的に虐待防止に関する研修を行い、知識の共有と意識啓発を図ります。研修計画や方法も運営規程に記載し、計画的な人材育成に努めます。
- 虐待防止委員会の設置: 法令に基づき、事業所内に虐待防止委員会を設置しておくことも重要です。この委員会で定期的に虐待防止のための対策を検討し、必要な改善策を講じます。
以上のような措置を事前に規程へ盛り込むことで、万が一の際にも組織として迅速かつ適切な対応が可能となります。単にルールとして書くだけでなく、実際に機能する体制づくりが大切です。
地域生活支援拠点等に指定された場合の明記
運営規程の最後のポイントは、地域生活支援拠点等に関する記載です。もしあなたの事業所が市町村により「地域生活支援拠点等」として位置付けられている場合は、その旨を運営規程にはっきりと明記しなければなりません。これは運営規程の「その他運営に関する重要事項」(第8号)に該当します。
地域生活支援拠点等とは何か? 簡単に言えば、障害の重い方が親亡き後も地域で安心して暮らせるよう、地域全体で支えるために設けられた拠点や仕組みのことです。例えば、緊急時の一時預かりや、施設・病院から地域生活への移行支援など、障害者の地域生活を支えるための機能を持つ場所や体制を指します。自治体は障害福祉計画に基づき、こうした拠点の整備を進めています。
事業所が市町村から地域生活支援拠点等に指定された場合、運営規程に「当事業所は○○市の地域生活支援拠点等に指定されています」といった記載をすることになります。拠点等として果たす役割(例えば「緊急時対応」や「相談支援機能」など)がある場合は、それも併せて示すことで、事業所の責務とサービス内容が明確になります。新規に事業を立ち上げる方は、自身の事業所が該当するかどうかを自治体に確認し、該当するなら忘れずに規程へ記載しましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 運営規程は必須書類: 障害児相談支援事業を行うには、基準第19条で定められた8項目を網羅した運営規程の整備が義務です。指定申請時にも提出が求められる重要書類なので、抜け漏れなく作成しましょう。
- 職員配置は柔軟に記載: 規程には相談支援専門員など必要職種とその人数・役割を明記します。人数は最低基準を満たす範囲で「○人以上」と表記できるので、実情に応じた柔軟な記載が可能です。
- 虐待防止策と拠点指定の明記: 虐待防止委員会の設置や苦情対応窓口など、虐待予防の取り組みを具体的に規程へ盛り込みます。また、事業所が地域生活支援拠点等に指定されている場合は、その旨を明記し、自らの役割を明確化しましょう。
【免責事項】
