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独習 障害児相談支援 指定基準 | 第二 指定障害児相談支援に関する基準 2  運営に関する基準 (18) 

害児相談支援事業者に求められる業務継続計画(BCP)とは


記事の概要:
指定障害児相談支援事業者(障害のある子どもの相談支援を行う事業所)には、感染症や自然災害の発生時にもサービスを止めないための「業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」の策定と、それに基づく従業員への研修・訓練の実施が義務化されました。本記事では、この新しい義務の内容と目的をやさしくシンプルに解説します。

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業務継続計画(BCP)義務化の背景と目的

近年の新型コロナウイルス感染症の流行や地震・豪雨などの自然災害を踏まえ、障害福祉サービス事業所でも業務継続計画(BCP)の整備が強く求められるようになりました。BCPとは、緊急時にも事業を継続・早期再開するための計画のことで、例えば感染症が広がったり大災害が起きたりしても、利用中の障害児や家族への相談支援サービスを途切れさせないよう備えるものです。事前にこの計画を策定し、非常時に何をすべきか決めて平時から準備しておくことで、いざというとき対応できます。

2024年4月の報酬改定では、このBCPの策定が指定障害児相談支援事業所の義務として明文化されました。これにより、すべての指定事業者は自社のBCPを持ち、従業員にも周知・訓練することが欠かせません。

業務継続計画に盛り込むべき内容

では、具体的にBCPにはどのような内容を盛り込む必要があるのでしょうか。厚生労働省や各自治体のガイドラインでは、主に次のようなポイントが挙げられています。

重要業務と役割分担の明確化:非常時に優先して継続すべきサービスや業務、およびその責任者・担当者をあらかじめ決めておきます。職員同士の緊急連絡網や、行政・医療機関など関係機関の連絡先も整備します。

緊急時対応手順の策定:感染症発生時や災害発生時の具体的な対応手順を定めます。例えば感染症なら利用者・職員の健康管理や感染拡大防止策、災害なら避難誘導や安否確認の方法など、状況別に対応フローを用意します。

物資・人員の備え:マスクや消毒液、非常食といった物資の備蓄リストを作成し、平時から必要量を確保します。緊急時に職員が不足する場合を想定し、他事業所との相互応援協定など人員確保策も検討します。

研修・訓練の計画:策定したBCPを形骸化させないよう、定期的に従業員への研修やシミュレーション訓練を行う計画を立てます。研修ではBCPの内容を周知し、訓練では非常時の対応を実地で練習します。

上記のような項目を盛り込んだBCPを作成しておけば、非常時にも「何を誰がやるか」が明確になるため、サービス継続に向けた素早い対応が可能になります。また、計画策定や訓練の実施は他のサービス事業者と協力して行っても構いません。地域の事業所同士で合同訓練を行うなど、ネットワークを活用して単独では難しい部分を補い合うこともできます。

全従業員への周知と研修・訓練の実施

BCPは作るだけでなく、従業員全員に内容を周知し、定期的に研修・訓練を行うことが求められています。緊急時にはスタッフの連携が不可欠ですから、可能な限り全職員が参加できる形で訓練を実施することが望ましいとされています。研修と訓練はそれぞれ少なくとも年1回以上の実施が推奨されており、シミュレーション訓練では想定シナリオに沿って職員の役割分担や対応手順を確認します。訓練方法に決まりはありませんが、机上演習だけでなく非常用設備の操作や避難経路の確認など実践的な練習も取り入れると効果的です。訓練結果は記録し、次回の計画見直しに役立てましょう。

業務継続計画を作らないとどうなる?(未策定時のリスク)

「BCP作成は手間だし後回しでいいのでは?」と考えるのは危険です。BCPを作っていない事業所は基本報酬の減算対象となり得ます。2024年度の報酬改定では業務継続計画未策定減算が新設され、感染症指針や災害時の計画が整っていない場合に基本報酬が1~3%カットされる可能性があります。一定の取組みを行っていれば令和7年3月末までは減算が猶予されますが、早めにBCPを整備しないと報酬減収につながりかねません。

行政上のペナルティだけでなく、実際に災害や感染症が起きた際に準備不足だと、利用者の安全が脅かされ事業所の信用失墜にもつながります。BCPがなければ対応が後手に回ってサービス提供が途絶える恐れもあります。利用者の安心と事業継続のため、BCP策定と研修の実施は最優先で取り組むべき課題です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 2024年4月から障害児相談支援事業所にBCP策定が義務化:感染症や災害時にもサービス提供を継続・早期再開するため、業務継続計画(BCP)の策定が法律で求められています。
  • BCPの周知徹底と年1回以上の研修・訓練が必須:策定した計画は全従業員に共有し、少なくとも年に1度は非常時を想定した訓練(シミュレーション)を実施しましょう。全職員が緊急対応の役割を理解していることが理想です。
  • 未策定だと報酬減算などリスク大:BCP未策定の事業所には行政による報酬減算措置があり、有事への備えが不十分だと利用者の安全も脅かされます。経過措置期間中に計画を整備し、見直しを行いましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。