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独習 障害児相談支援 指定基準 | 第二 指定障害児相談支援に関する基準 2  運営に関する基準 (20)

定障害児相談支援事業所における衛生管理と感染症対策委員会の設置義務


記事の概要:
指定障害児相談支援事業所では、スタッフの衛生管理や感染症対策が法律で定められています。特に2024年4月からは感染症の発生予防・まん延防止に関する取り組みが義務化され、対応が強化されています。本記事では、基準第22条「衛生管理等」の内容と、その実務上のポイントをやさしくシンプルに解説します。感染症対策委員会の設置、感染症対策の指針策定、従業者への研修・訓練など、最新ルールをわかりやすくまとめています。

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衛生管理の基本ルール(スタッフと設備の清潔保持)

まず、指定障害児相談支援事業所の基本的な衛生管理ルールです。事業者はスタッフの清潔保持と健康管理に必要な対応を行わなければなりません。また、事業所内の設備や備品についても常に衛生的な状態を保つよう努めることが求められます。例えば、手洗いの徹底や消毒の実施、清掃による環境整備など、日頃から清潔な職場環境づくりに取り組みましょう。このような基本的衛生管理は、サービスの質と安全を確保する土台となります。

感染症対策委員会の設置(ア)

感染症の発生を予防し、まん延を防止するために感染症対策委員会を設置することが求められます。感染症対策委員会とは、事業所内で感染症予防・拡大防止策を検討する委員会です。以下にポイントをまとめます。

  • 幅広い職種と専門知識: できるだけ幅広い職種のメンバーで構成し、感染症対策の知識を有する人(外部専門家の参加も望ましい)を含めることが推奨されています。これにより、多角的な視点で効果的な対策を議論できます。社内に専門知識がない場合でも、地域の保健所や医療専門家と連携しアドバイスを受ける体制を整えると良いでしょう。
  • 役割分担と責任者: 委員会メンバーそれぞれの責任と役割分担を明確に決め、加えて専任の感染対策担当者(インフェクションコントロール担当)をあらかじめ指名しておきます。担当者は感染症情報の収集や委員会運営の中心となり、現場での対策実行をリードします。
  • 開催頻度と方法: おおむね6か月に1回以上、定期的に開催する必要があります。インフルエンザ流行期など感染リスクが高まる時期には、必要に応じて随時開催しましょう。また委員会は対面に限らず、オンライン会議(テレビ電話装置等)の活用も可能です。小規模事業所など設備が整っていない場合でも、ウェブ会議システム等を借用して実施すれば問題ありません。障害のある方が参加する場合には、その障害特性に応じて情報保障(例えば文字通訳やゆっくり話す等)を行い、参加しやすい工夫をします。なお、既存の他の会議体(例えば衛生委員会等)があれば感染対策委員会と一体的に運営しても構いません。複数のサービス事業者で共同開催するなど他事業者と連携して取り組むことも認められています。

感染症予防・まん延防止のための指針策定(イ)

感染症対策委員会で話し合った内容を踏まえ、事業所ごとの「感染症予防およびまん延防止のための指針」を作成することも義務付けられました。この指針(ガイドライン)には、平常時と感染症発生時それぞれの場合における具体的な対策を定めます。

  • 平常時の対策: 感染症が流行していない通常時から、事業所内での衛生管理策を規定します。例えば、「職員による手洗いや消毒の徹底」「マスク着用など標準予防策の遵守」「事業所内の清掃や換気のルール」など、日常業務で実践すべき感染予防策を盛り込みます。また利用者と対面で接する相談支援業務においても、必要に応じてアクリル板の設置や面談室の換気設備整備など、環境面での配慮も記載すると良いでしょう。
  • 発生時の対応: 万一、事業所内や関係者で感染症の疑い・発生があった場合の手順も決めておきます。具体的には、「感染発生時の連絡体制(保健所や利用者家族への報告手順)」「感染が広がらないための措置(消毒の強化、濃厚接触者の一時待機措置等)」「サービス提供の継続・休止判断基準」「行政機関や地域の関係部署との連携方法」を定めます。例えば、利用者や職員に感染が判明した場合に誰がどこへ報告するか、休業や在宅勤務への切り替え基準、防護具の配布方法など、緊急時に即座に動ける具体策を書面化しておきます。
指針を作る際は、厚生労働省が公表している「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」などを参考に、盛り込むべき事項の検討を行うとよいでしょう。平時・有事それぞれで何をすべきか例示が載っているため、自事業所に合った形で取り入れてください。完成した指針は事業所内で共有し、職員全員が内容を理解している状態にしておくことが大切です。

職員研修とシミュレーション訓練の実施(ウ)

策定した感染症対策の指針を絵に描いた餅で終わらせないよう、職員への研修とシミュレーション訓練も定期的に行います。

  • 職員向け研修: 事業所の全従業者を対象に、感染症予防・まん延防止に関する研修を少なくとも年1回以上実施することが望まれます。研修内容は、手洗いや消毒方法・マスクの正しい着用法といった感染対策の基礎知識から、事業所のガイドラインで定めた衛生管理ルールの再確認まで含めます。新人職員を採用した際には、早期に感染対策研修を行い、組織として一定水準の知識・意識を共有しましょう。研修を行った際は、実施日時や内容を記録に残しておくことも必要です(指導監査の際に確認される可能性があります)。なお研修方法は、先述の厚労省マニュアルの教材を活用したり、外部講師を招いたり、事業所内の職員が講師役となる等、実情に応じて工夫できます。重要なのは継続して定期開催し、職員全員の意識向上とルール遵守の徹底につなげることです。
  • 感染症発生を想定した訓練: 平時から、感染症発生時を想定したシミュレーション訓練も少なくとも年1回以上実施することが求められます。机上の空論ではなく、実際に発生した場合を想定し、職員がどう動くかを練習しておくことで、いざという時に素早く適切な対応が可能となります。訓練では、指針に定めた手順に沿って通報連絡の手続きや利用者対応のロールプレイを行ったり、非常用備品(マスク、消毒液、ガウン等)の使用方法確認、他機関との連絡テストなどを実践します。例えば、ある職員が感染した想定で「誰が保健所に連絡するか」「他の職員・利用者への周知方法」「事業継続か一時休止かの判断フロー」をシナリオに沿って動いてみるのです。訓練結果は記録し、課題が見つかれば指針やマニュアルを更新して改善します。定期的な訓練により、職員の緊急対応スキルを高め、利用者の安全を守ることにつながります。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 感染対策委員会の設置と運営 – 指定障害児相談支援事業所ごとに感染症対策委員会を立ち上げ、半年に1回以上の定期開催を行いましょう。外部有識者の参加や担当者の選任など、組織的な感染症対策の体制づくりが重要です。オンライン会議の活用や他事業者との合同開催も可能なので、小規模事業所でも工夫して実践してください。
  • 感染症予防・まん延防止の指針策定 – 事業所内の感染症対策ガイドラインを作成し、平常時の衛生対策と感染発生時の対応手順を明文化して共有しましょう。手洗い・消毒など日常ルールから、万一感染者が出た場合の通報・消毒・業務継続計画まで網羅します。厚労省発行のマニュアル等を参考に、自社の実情に合った指針を用意することが求められます。
  • 定期的な研修と実地訓練の実施 – 職員全員に対し年1回以上の感染症対策研修を行い、知識のアップデートと衛生意識の向上を図りましょう。新人職員にも早期教育が必要です。また、毎年シミュレーション訓練を実施して、感染症発生時の対応手順を職員に体得させておきます。研修・訓練の実施状況は記録し、必要に応じて指針を見直すことで、常に実効性のある計画にブラッシュアップしていくことが大切です。


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