障害児相談支援における利益誘導の禁止と中立性確保のポイント
記事の概要:
障害児相談支援の現場では、支援計画を立てる際の公平さがとても重要です。そのため、指定障害児相談支援事業者には利益誘導の禁止というルールがあります。これは、相談支援員や管理者が自社の利益のために特定の事業所のサービスばかり利用者にすすめたり、サービス紹介の見返りに金品を受け取ったりすることを禁じる決まりです。本記事では、児童福祉法に基づく基準第26条「指定障害児通所支援事業者等からの利益収受等の禁止」の内容を、やさしくシンプルに解説します。
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管理者による特定サービス偏重の禁止(基準第26条第1項)
基準第26条第1項では、指定障害児相談支援事業所の管理者が、支援計画(障害児支援利用計画)の作成・変更にあたり、特定の福祉サービス事業者のサービスだけを組み込むようスタッフに指示することを禁止しています。簡単に言えば、「管理者は自分の会社グループのサービスばかり計画に入れるよう命じてはいけない」ということです。支援計画はあくまで障害のある子どもの課題やニーズに沿って作られるべきものであり、事業者側の都合で内容が歪められてはいけません。例えば、管理者が同一法人系列のデイサービスや放課後等デイサービスだけを利用するよう相談支援専門員に指示した場合、それは子どものニーズから外れてしまう可能性が高い上に、他の事業所のサービス利用を事実上妨げる行為となります。このような利益優先の誘導は、公正なサービス選択の機会を奪ってしまうため、明確に禁止されています。
相談支援専門員による不当なサービス指示の禁止(基準第26条第2項)
基準第26条第2項では、相談支援専門員(計画作成を担当するスタッフ)自身が、障害のある子どもや保護者に対して特定の福祉サービス事業者のサービスだけを使うよう促すことを禁止しています。こちらも第1項と同じく、公正中立な立場で相談支援を行うための規定です。相談支援専門員は利用者本位で最適なサービスを一緒に考える役割ですが、仮に自分の所属法人や取引のある事業所だけを強く勧めてしまうと、子どもにとってより良い別のサービス利用の機会を奪いかねません。例えば、相談支援専門員が「うちの関連施設だけ使えばいいですよ」といった具合に特定の事業所のみを利用するよう指示すれば、それは子どもの課題解決に適した支援ではなく、結果的に他のサービス利用を妨げる偏った提案になってしまいます。このような行為も当然ながら禁止されており、相談支援専門員は常に中立な立場で利用者に選択肢を提示することが求められます。
サービス紹介と引き換えの金品授受禁止(基準第26条第3項)
基準第26条第3項では、指定障害児相談支援事業者およびその従業者が、障害のある子どもに特定の事業者のサービスを利用させる見返りとして、その事業者から金品その他の経済的な利益を受け取ることを禁じています。平たく言えば、「サービスを紹介する謝礼としてお金や贈り物(いわゆるキックバック)を受け取ってはいけない」というルールです。例えば、ある放課後等デイサービスから「利用者を紹介してくれたら紹介料を支払います」と持ちかけられても、相談支援事業所の側でそれを受け取ることは法律で禁止されています。相談支援の公正中立を確保するため、経済的な利害関係が支援内容に影響を及ぼすのを防ぐのがこの規定の目的です。万一、金品の授受による癒着が発覚すれば、行政から指導や場合によっては指定取消など厳しい処分を受ける可能性があります。事業運営の信頼性を守るためにも、サービス紹介に絡む金銭授受は禁止事項であることを徹底して遵守しましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 支援計画は子どものニーズ第一: 障害児支援利用計画は子どもの課題解決とニーズに基づいて作成します。自社の都合で特定のサービスばかり盛り込むことは許されません。
- 相談支援の公正中立を遵守: 相談支援専門員や事業所の管理者は、中立な立場で利用者に最適なサービス選択を支援する義務があります。自社系列のサービスだけを利用させるような偏った誘導は禁止です。
- 金銭・物品のやり取りは禁止: 利用者の紹介やサービス利用の見返りに金銭や物品をやり取りする行為(紹介料やキックバック)は厳禁です。違反すれば行政処分など事業継続に支障が出る可能性があるため、遵守徹底が必要です。
【免責事項】
