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独習 障害児相談支援 指定基準 | 第二 指定障害児相談支援に関する基準 2  運営に関する基準 (25) 

害児相談支援事業所における虐待防止体制のポイント


記事の概要:
指定障害児相談支援事業所(障害のある子どもと家族を支援する事業所)には、職員による虐待防止対策の強化が義務付けられています。具体的には、虐待防止委員会の設置、職員研修の実施、そして虐待防止担当者の配置が求められています。本記事では、厚生労働省(現在はこども家庭庁)から発出された解釈通知の内容に基づき、これら新たな基準のポイントをやさしくシンプルに解説します。

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虐待防止委員会の役割と設置方法

虐待防止委員会とは、事業所内で虐待を未然に防ぐために設置する組織です。その役割は大きく3つあります。

  • 計画づくり:虐待防止のための研修計画や職場環境の見直し計画、さらには事業所独自の虐待防止指針(ガイドライン)を策定します。日々の支援現場で問題が起きないよう、計画段階から対策を練る役目です。
  • チェックとモニタリング:職場環境を点検し、「虐待が起きやすい要因はないか?」を常に確認します。例えば、職員のストレスが溜まっていないか、長時間労働など過度な負担がないか、苦情対応は適切か、といった点をチェックします。定期的なモニタリングにより、リスクの芽を早めに発見することが目的です。
  • 事案発生後の検証と再発防止策:万が一、虐待やその疑いが発生してしまった場合、事案の検証(何が問題だったのか調査すること)を行い、二度と起こさないための再発防止策を検討・実行します。発生後の対応を適切に行うことで、同じ過ちを繰り返さない仕組みづくりを担います。

委員会を設置する際は、まずメンバー各自の責任と役割を明確にしましょう。また事業所内から専任の「虐待防止担当者」(後述します)を必ず1名決めておく必要があります。さらに、委員には事業所スタッフだけでなく、利用者や家族の代表、福祉の専門知識を持つ第三者(外部有識者)なども可能な範囲で参加してもらうことが望ましいとされています。外部の視点を入れることで客観的な意見が得られ、より良い対策につながります。

委員会は法人全体で1つ置けばよく、必ずしも事業所ごとに別々に作る必要はありません。例えば小規模な事業所で人手が足りない場合は、運営法人単位で統一の委員会を設置することも可能です。事業所の規模に応じて無理のない形態を検討してください。ただし、委員会で話し合った内容や決定事項は必ず全従業員に周知徹底することが重要です。せっかくの対策も、職員が知らなければ意味がありません。

委員会は年に1回以上の開催が必要です。最低開催人数について法令上の決まりはありませんが、管理者(事業所の責任者)と虐待防止担当者(必置)が参加していれば有効に機能するでしょう。会議では前述の役割に沿って計画の進捗確認や新たな課題の検討を行い、その結果を全職員へ伝達します。

ポイント:懲罰ではなく未然防止

虐待防止委員会の活動目的は、情報共有による未然防止と再発防止です。仮に職員による不適切な支援や虐待疑いのケースが起きても、それを基に職場環境や対応を改善し、次に活かすことが主眼となります。決して従業員を罰する場ではないことを忘れないでください。この点を誤解すると、職員が萎縮して本当の問題が隠れてしまう恐れがあります。あくまで建設的に、「どうすれば利用者の安全と尊厳を守れるか」をみんなで考える場として運用しましょう。

なお、委員会で行った対応や会議録は適切に記録し、5年間の保存が義務付けられています。後から検証できるよう、記録を残す習慣も大切です。

参考:委員会で想定される取組み例

具体的な委員会活動としては、例えば次のようなものが考えられます。

  • 虐待防止の職員研修計画の策定と実施状況の管理
  • 職員の勤務環境やストレス状況のチェック、苦情への対応状況の確認
  • 虐待防止に関するチェックリストを用いた自己点検結果の集計・分析し、改善策を検討
  • 万一事故や虐待疑い事案が発生した際の対応の振り返り(検証)と再発防止策の協議
  • 必要に応じて他の事業所や関係機関との情報共有・連携による対策強化

こうした取組みを通じて、事業所全体で虐待防止に取り組んでいきます。

職員への虐待防止研修の実施

職員研修もまた、虐待防止の柱です。解釈通知では、全ての従業者(職員)に対し定期的に研修を行い、知識の普及啓発を図るよう求めています。

研修内容は、まず虐待防止の基礎知識が中心となります。例えば「障害者虐待防止法の基本」「虐待の兆候やリスク要因の理解」「倫理や人権尊重」など、職員として知っておくべき基本事項です。また、各事業所で独自に虐待防止の指針(ガイドライン)を定めている場合は、その内容を踏まえた実践的な研修も行いますcfa.go.jp。現場でどう行動すべきか、指針に沿って具体的に学ぶことが大切です。

研修の頻度は少なくとも年1回以上、つまり毎年度に1回は実施する必要があります。さらに、新しく職員を採用したときには必ず入職時に虐待防止研修を行うことも義務付けられています。新人職員が現場に出る前にしっかり教育し、虐待防止の意識を根付かせる狙いがあります。

研修は事業所内で行う内部研修でも、外部の研修会に職員を参加させる形でも構いません。例えば、地域の相談支援専門員協議会や基幹相談支援センター等が開催する研修に参加するのも有効です。同じ分野の他事業所の職員と交流しながら学べるため、視野が広がるメリットもあります。

研修を実施した際は、その内容や日時、参加者などを記録し、これも5年間保管しなければなりません。行政から実地指導等で確認を求められることもありますので、記録簿の整備を怠らないようにしましょう。

虐待防止担当者の配置

虐待防止担当者とは、文字通り事業所における虐待防止対策の責任者です。基準では相談支援専門員の中からこの担当者を配置する決まりになっています。相談支援専門員とは、障害のある方やご家族の相談支援や計画作成を担う有資格者で、指定障害児相談支援事業所には必置の専門職です。つまり事業所の専門スタッフが防止担当のリーダーとなり、委員会や研修の中心となって対策を推進します。

担当者に選ばれた人、そして事業所の管理者(管理者=施設長や所長など経営責任者)は、可能であれば都道府県等が実施する虐待防止に関する研修を受講することが望ましいとされています。厚生労働省通知では具体的に「地域生活支援事業の実施について」(平成18年通知)の定める研修への参加が挙げられています。平たく言えば、行政主催の専門研修に参加して最新の知識や他施設の取組事例を学び、自事業所の対策に活かしてほしいという趣旨です。

虐待防止担当者は単なる名義上の担当ではなく、委員会の専任メンバーとして計画策定から職員指導まで中心的役割を果たすことになります。現場の状況をよく把握し、職員からの相談を受けたり指導・助言を行ったりする立場ですので、相談支援専門員としての経験やコミュニケーション能力を存分に活かしていただきたいところです。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 虐待防止委員会の設置と年1回以上の開催:必ず委員会を立ち上げ、少なくとも年に1度は開催しましょう。小規模事業所では法人全体の委員会でも対応可能です。委員会での検討結果は全職員に周知し、職場で情報共有することが肝要です。
  • 職員研修の計画的実施と記録:全職員を対象に年1回以上の虐待防止研修を実施し、新人には入職時研修を行います。研修内容・参加者等はしっかり記録し、少なくとも5年間保管しておきましょう。
  • 相談支援専門員を虐待防止担当者に配置:事業所の相談支援専門員から虐待防止担当者を任命します。担当者および管理者は積極的に行政の研修を受講し、最新知見を事業所の虐待防止策に反映させるよう努めましょう。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。