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独習 障害児相談支援 指定基準 | 第二 指定障害児相談支援に関する基準 2  運営に関する基準 (3) 

定障害児相談支援におけるサービス提供拒否の禁止とは?


記事の概要:
指定障害児相談支援とは、障害のある子どもが必要な福祉サービスを利用できるよう、サービス利用計画(障害児支援利用計画)を作成したり、関係機関との連絡調整を行ったりする相談支援サービスです。このサービスを提供する指定障害児相談支援事業者(市町村から指定を受けた事業者)は、原則として利用申込を断ることができません。特に、障害の程度が重いことや利用者の所得が少ない・多いことを理由にサービス提供を拒否することは禁止されています。本記事では、この「サービス提供拒否の禁止」(児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の運営基準 第7条)の内容をやさしくシンプルに解説します。

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サービス提供拒否の禁止とは?

サービス提供拒否の禁止とは、指定障害児相談支援事業者は正当な理由なく利用申し込みを断ってはいけないという原則です。障害のあるお子さんやその保護者が相談支援を求めた場合、事業者は基本的にそれに応じなければなりません。これは、障害児とその家族が公平に必要な支援を受けられるようにするための重要な原則であり、利用者の権利を守るために設けられています。

特に強調されているのが、「障害の重さ」や「所得の多少」による差別的な扱いの禁止です。例えば、「障害が重いから対応が大変そう」「家が低所得だから利益にならない」といった理由で利用を断ることは明確に禁止されています。家庭の経済状況に関わらず、障害のある子どもには必要な相談支援サービスを提供する義務があるのです。

提供を拒否できる正当な理由は?

現実には事業者側にも物理的・技術的な制約があります。そこで、基準では正当な理由があれば例外的にサービスの申込みを断ることが認められています。その正当な理由となり得るケースは以下の4つです。

  • 定員オーバーの場合: 現在のスタッフ数や受け入れ枠では新たな利用申込に対応しきれない場合
  • サービス提供地域外の場合: 利用希望者(障害児)の居住地がその事業所の通常のサービス提供エリア外である場合
  • 対象外の障害種別の場合: 事業所の運営規程で主な対象障害の種類を定めており、その範囲に含まれない障害の子から申し込みがあった場合
  • 適切な支援が困難な場合: その他、当該障害児に対して自社で適切な相談支援を提供することが難しい事情がある場合

上記のような正当な理由があれば、例外的にサービス提供の申し込みを断ることが認められます。ただし、これら以外の理由での拒否は認められません。障害の重さや利用者の所得といった理由は正当な理由に含まれないため、そうした理由での提供拒否はできない点に注意しましょう。正当な理由でやむを得ずお断りする場合でも、可能であれば他の事業所を紹介するなど、利用者の不利益を最小限にする配慮が望まれます。

体制整備加算を算定している場合の注意点

指定障害児相談支援事業者の中には、障害児への支援体制を強化した事業所として体制整備加算を算定しているところもあります。体制整備加算とは、以下のような特定の支援体制を整えている事業所に対して報酬に上乗せされる加算の総称です。

  • 行動障害支援体制加算(強度行動障害のある子どもへの支援体制強化)
  • 要医療児者支援体制加算(医療的ケアが必要な子どもへの支援体制強化)
  • 精神障害者支援体制加算(精神障害のある子どもへの支援体制強化)
  • 高次脳機能障害支援体制加算(高次脳機能障害のある子どもへの支援体制強化)

これらの加算を算定している事業者は、「自社は上記のような特性を持つ障害児に対応できる体制があります」ということを示していることになります。したがって、該当する障害特性を持つ子どもからの相談支援の申込みに対して、「その障害特性には対応できない」といった理由でお断りすることはできません。例えば、行動障害支援体制加算を算定しているなら強度行動障害のあるお子さん、要医療児者支援体制加算を算定しているなら医療的ケア児のお子さんの申込みを「対応困難」として断るのは認められないということです。

要するに、特別な支援体制があるとして加算を受けている以上、いざその支援を必要とする子どもが来たときにサービス提供を拒否するのは契約上・道義上許されないというわけです。事業者はその点を十分に留意し、責任を持って対応する必要があります。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 基本は断らない: 指定障害児相談支援事業者は原則として利用申込を断ることができません。障害の程度が重いことや利用者の所得の多寡を理由にサービス提供を拒むことは禁止されています。
  • 拒否できるのは正当な理由がある場合のみ: 定員超過、サービス提供地域外、事業所が対象外とする障害分野の申込み、その他適切な支援が困難な場合など、限られたケースでのみ例外的に提供拒否が認められます。
  • 特別な支援加算を受けているなら責任を果たす: 行動障害支援体制加算などの体制整備加算を算定している事業所は、対応を謳っている障害特性を理由に利用申込を断ることはできません。加算に見合った支援体制を整え、実際にそのニーズに応えることが求められます。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。