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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十一  就労継続支援A型 3 運営に関する基準 (10)厚生労働大臣が定める事項の評価等

労継続支援A型事業所における評価結果の公表義務


記事の概要:
2021年(令和3年)の障害福祉サービス制度改正により、就労継続支援A型事業所には、事業所ごとの運営状況について厚生労働大臣が定める事項の評価(障害福祉サービス基準第196条の3)が義務付けられました。これは、A型事業所自身が定められた項目についてサービス内容を自己評価し、その結果を公表する仕組みです。障害者の方々がより良いサービスを選びやすくすることが目的で、本記事ではその評価制度のポイントをやさしくシンプルに解説します。

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厚生労働大臣が定める事項の評価とは?

厚生労働大臣が定める事項の評価とは、簡単に言えば「A型事業所の自己チェック」です。就労継続支援A型(以下、A型)事業者は、各事業所について年1回以上、自社の運営状況を評価し、その結果を公開しなければなりません(障害福祉サービス基準第196条の3に基づく義務)。この制度は、障害のある利用者さんが「自分に合った良質なサービス」を選べるよう事業所の情報を公開するために導入されました。運営状況を見える化することで利用希望者がサービスを比較しやすくなり、事業者にとってもサービス向上のインセンティブになります。

評価の対象となるポイント(評価項目)

では、具体的にA型事業所はどんな内容を評価するのでしょうか? 評価項目は7つあります。それぞれ専門的な名称がありますが、ここでは簡単にポイントを説明します。

  • 利用者の平均労働時間:A型事業所で働く障害者が一日平均どのくらい働いているかです。平均労働時間が長いほど、十分な就労機会を提供できていると評価されます。
  • 事業の収支状況(生産活動の収支):事業所の収入と支出のバランスを見る項目です。事業収入で利用者への賃金をまかなえていれば経営が安定していると見なされ、逆に賃金が収入を上回る赤字状態が続いていると減点になります。
  • 多様な働き方の制度:利用者それぞれに合った働き方を実現する制度があるかです。例えば在宅勤務の可否、柔軟に働けるフレックスタイムや短時間勤務制度、有給休暇を時間単位で取れる仕組みなど。こうした制度が多いほど高評価です。
  • 職員の支援スキル向上の取組:職員や組織が就労支援のスキルを高めるための努力です。例えば職員研修の受講や先進事業所の見学の実施、人事評価制度の整備、第三者評価の実施など。多様な取組を行うほど評価が上がります。
  • 地域との連携活動:地域の企業や官公庁と協力して、付加価値の高い商品開発や企業での就労、生産活動などを行っているかです。その活動内容や協力先からの意見を報告書にまとめて公表している事業所には加点があります。
  • 経営改善の取り組み状況:行政から経営改善計画の提出指示があった場合に、期限内に提出しているかどうかです。計画を出していなければ大幅な減点となります。
  • 利用者の能力向上の支援:障害のある利用者のスキルアップを支援しているかです。資格取得や職業訓練などのプログラムを実施し、その内容を報告書にまとめて公表している事業所はプラス評価になります。

厚生労働省は各項目ごとに詳細な評価基準と点数を定めていますが、要するに「利用者が安心して働ける環境かどうか」をチェックする仕組みと言えます。

評価結果の公表方法と注意点

自己評価の結果は、必ず一般に公表しなければなりません。公表時期は毎年度4月中が原則(前年度の評価結果を翌4月に公開するイメージ)です。公表方法としてはインターネットでの公開、具体的には事業所ホームページへの掲載が基本です。ホームページがない場合は、自治体の広報誌に掲載してもらう、事業所や支援機関に掲示するなど、利用者や家族が情報を得られる方法であれば構いません。

公表にあたっては、情報のわかりやすさやアクセシビリティにも配慮しましょう。例えば文字だけでなく図や表を使って見やすくする、音声読み上げに対応できるテキスト形式で提供する、専門用語を避けやさしい日本語で説明するといった工夫です。「公表はしたが内容が伝わらない」では意味がありませんので、多くの人に伝わる方法を検討してください。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 年に1回の自己評価を確実に:A型事業所を運営するなら、毎年1回以上は必ず運営状況の自己チェックを行いましょう。評価項目(労働時間や賃金、取組状況など)は日頃から意識し、必要なデータを普段から記録しておくことが大切です。
  • 評価結果の公表を忘れずに:自己評価をしただけで満足せず、その結果をしっかり公表しましょう。原則は毎年4月中の公開です。ホームページがある場合は掲載し、ない場合も自治体の広報や事業所内での掲示など適切な方法で公表します。公表を怠ると義務違反となる可能性があるので注意です。
  • 評価結果をサービス向上に活用:評価項目で低かった部分(例:「職員研修の実施」が不十分だった等)は改善のチャンスです。他事業所の事例も参考にしながら、次年度に向けた改善計画を立てましょう。自己評価と公表はゴールではなくスタートと考えましょう。
  • 法令遵守とリスク管理:普段から法令や基準を守り、重大な指摘を受けないようにしましょう。万一、行政から経営改善計画の提出を求められた(例:賃金未払いなど)場合は、迅速に計画を作成し期限内に提出してください。怠ると減点となり、事業の信用にも関わります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。