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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十一  就労継続支援A型 3 運営に関する基準 (9)運営規程

労継続支援A型における運営規程の重要ポイント


記事の概要:
本記事では、就労継続支援A型事業所の運営規程について、厚生労働省の「省令解釈通知」で示された指定基準第196条の2に基づく重要ポイントを解説します。就労継続支援A型とは、一般企業での雇用が難しい障害者の方に雇用契約に基づく就労の場を提供する福祉サービスです。その運営に欠かせない「運営規程」には何を定めればよいのか、特に利用定員や生産活動・賃金・工賃・労働時間、そして通常の事業の実施地域といった項目について、やさしくシンプルに説明します。

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各項目の内容と留意点(逐条解説)

運営規程の13項目について、それぞれどんな内容を定めればよいのか説明します。特に④利用定員、⑥生産活動・賃金・工賃・労働時間、⑦通常の事業の実施地域は重要ポイントなので詳しめに解説します。

  1. 事業の目的及び運営の方針:まず事業所の使命や目標を書く部分です。例えば「障害者の自立した社会生活の実現を支援すること」を目的に掲げ、そのための基本的な運営姿勢(利用者本位の支援を行う等)を明記します。これにより事業所の方向性を誰もが理解できるようにします。
  2. 従業者の職種、員数及び職務の内容:どのようなスタッフを何名配置し、それぞれが何を担当するかを定めます。例えば「管理者1名(運営全般の統括)、サービス管理責任者1名(個別支援計画の作成等)、職業指導員◯名、」など具体的に記載します。適切な職員配置はサービスの質を保つために重要です。
  3. 営業日及び営業時間:サービスを提供する曜日や時間帯を示します。平日だけでなく土曜提供する場合や、年末年始の休業日なども記載します。例えば「営業日:月~金(祝日除く)、営業時間:9時~17時、サービス提供時間:1日あたり4~6時間」など具体的に決めておきます。利用者や家族が利用可能な時間を把握するためにも明確にしましょう。
  4. 利用定員:利用定員とは、指定就労継続支援A型事業所において、同時に指定就労継続支援A型の提供を受けることができる利用者の数の上限を指すものであり、事業所運営のキャパシティを明確に示す重要な指標です。この定員を定めることで、一度に受け入れ可能な利用者数が明確となり、人員配置や作業スペース、設備投資の計画を立てやすくなります。
    例えば定員を20名と設定すれば、原則として20名を超えて同時に支援を行わないよう、サービス運営の適正化につながります。
    なお、同一事業所内に複数の「指定就労継続支援A型」の単位を設置している場合には、各単位ごとに利用定員を別々に定める必要があります。
    この措置により、単位間で利用者数が混同されず、個々の支援プログラムに応じた適切な定員管理が可能となります。
  5. サービス内容(生産活動)及び費用:事業所で行う主なサービス内容を記します。また、利用者から徴収する費用があればその種類と金額も明示します。障害福祉サービスでは原則サービス利用料の1割負担がありますが、それ以外に例えば給食費や作業着代など利用者負担となる費用がある場合はここに記載します。利用者にとって事前に費用がわかることは安心につながるので、漏れなく示しましょう。
  6. 生産活動に係る賃金・工賃及び労働・作業時間:これは重要な項目です。A型事業所では利用者と雇用契約を結び働いてもらうため、賃金(給与)を支払います。賃金とは雇用契約に基づく給与で、最低賃金以上を保障する必要があります。一方「工賃」とは本来B型事業所で使われる用語で、雇用契約のない利用者に対する成果報酬のことです。A型の運営規程では、利用者に支払う賃金について月給制か日給制か時間給かなど、その支払い形態を明記します。例えば「賃金:時間給 ○○円(最低賃金以上)を支払い、月末締め翌月○日支給」等と書くことが考えられます。また利用者の労働時間・作業時間も定めます。例:「利用者の勤務時間は1日5時間、週5日(週合計25時間程度)」や「作業時間帯は10時~16時(休憩1時間)」など具体的に示します。これは就業規則(労働者の勤務条件を定めた規程)と同内容であることを示すことでも足ります。賃金と労働時間を明確にしておくことで、利用者の労働条件がきちんと守られるようにします。特に最低賃金の確保や長時間労働になりすぎないよう配慮が必要です。
  7. 通常の事業の実施地域:その事業所が通常サービスを提供する地域を指します。例えば「○○市およびその周辺地域」「△△県全域」といった形で、客観的に地域が特定できるように記載します。この地域設定は、利用希望者の受け入れ調整などで参考にされます。基本的には事業所の所在する地域を中心に設定しますが、広域から利用希望がある場合に絶対の制限というわけではありません。ただし遠方からの利用は通所が困難になるため、地域外の申込みがあった場合には地元の事業所を案内するなど検討が必要です。通常の実施地域を明確に定めておくことで、対象地域の関係機関との連携や利用希望者への対応方針がぶれないようにできます。
  8. サービスの利用に当たっての留意事項:利用者がサービスを利用する上でのルールや注意点です。例えば「無断欠席をしない」「体調不良時は早めに連絡する」「作業中の安全ルールを守る」といった事項を定めます。また利用開始時に説明する契約内容や守秘義務に関することなど、利用者が知っておくべきこともここに含まれます。これらを運営規程に書いておくことで、利用者との間でサービス利用上の約束事を共有できます。
  9. 緊急時等における対応方法:利用者の急な病気やケガ、事故、トラブルなど緊急時の対応手順を決めておきます。例えば「体調不良時は速やかに近隣の医療機関へ連絡・受診させ、保護者にも連絡」「災害時は職員が安全を確認し避難誘導を行う」などです。非常時の連絡網や対応責任者も明記しておくと良いでしょう。緊急対応策を準備しておくことで、万一の際にも落ち着いて対処できます。
  10. 非常災害対策:地震や火災など大規模災害に備えた計画です。避難場所や避難経路、安否確認の方法、非常食や備蓄品の管理、定期的な防災訓練の実施について触れておきます。例えば「避難場所は○○公園、連絡方法は安否確認用メール網を使用」「年2回防災避難訓練を実施」など具体的に決めます。災害発生時に利用者の安全を確保し被害を最小限にするため、事前の備えが重要です。
  11. 主たる対象障害者の種類(該当する場合のみ):事業所が特に対象者の障害種別を限定する場合に記載します。通常A型事業所は身体・知的・精神など幅広い障害の方を受け入れますが、もし「主に精神障害のある方を対象とする」といった方針がある場合はここに明示します(特に定めない場合、この項目は「特定しない」で構いません)。対象を明確にしておくことで、自社の得意分野に合った支援が提供できるメリットがあります。
  12. 虐待防止のための措置:利用者に対する虐待(身体的・心理的虐待や放置など)を防ぐための取り組みを定めます。具体的には虐待防止委員の設置、全職員への虐待防止研修の実施、相談体制の整備、職員による定期的な面談やチェックなどが考えられます。また万が一虐待の疑いが発生した際の通報手順(行政や第三者機関への報告)も決めておくと安心です。利用者が安心して働ける環境を守るため、虐待防止策は事業運営上欠かせません。
  13. その他運営に関する重要事項:上記以外で事業所ごとに特に定めておきたい事項があれば記載します。例えば「個人情報の保護に関すること」「ボランティア受け入れに関する方針」「利用者家族との連絡方法」など、その事業所の運営上重要な決まりを補足できます。必要に応じて項目を追加し、事業運営の透明性を高めましょう。

なお、就労継続支援A型では、単に働く場を提供するだけでなく、利用者の知識・能力を高める訓練や、自立した日常生活・社会生活を送るための支援も行う必要があります。そのため、原則として利用者本人が事業所まで自力で通所することが基本ですが、公共交通機関の利用が難しい場合や障害の程度で自力通所が困難な場合には、送迎サービスを実施するなど、利用の円滑化に向けた配慮を検討することが求められます。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 運営規程提出・届出:運営規程は指定申請時に必ず提出し、内容に変更があった場合は速やかに変更届を提出して常に最新の状態を保つ必要があります。
  • 13項目網羅の重要性:運営規程には13項目を網羅的に定めなければ基準違反となります。なかでも、留意事項通知にて触れている「生産活動の内容・賃金・労働時間」「利用定員」「実施地域」などは重要項目と言えます。
  • 現実的な利用定員設定:利用定員は事業所の職員配置や設備に見合った現実的な数字を設定し、増員を検討する際は人員基準や収支バランスを考慮したうえで、行政への変更手続きを忘れずに行いましょう。
  • 賃金条件の明確化:A型事業所では利用者と雇用契約を結ぶため、賃金は最低賃金以上を保証し、月給・日給・時間給などの支給形態を明記して労働法規を遵守した適正な労働条件を示します。
  • 実施地域の設定:実施地域は事業所がサービス提供を想定するエリアを客観的に明確化し、遠隔地からの利用希望がある場合は利用者の負担も踏まえて対応を検討してください。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。