基準該当サービスにおける「同居家族へのサービス提供制限」と「準用規定」をわかりやすく解説
記事の概要:
障がい福祉サービスの現場では、「同居している家族へのサービス提供は禁止」というルールがあります。これは、ヘルパーが自分の家族(同じ家に住む家族)を支援することを原則として認めない決まりです。しかし、離島や山間部など地域によっては例外的に認められる場合もあります。また、障がい福祉サービスの基準には「準用」という考え方があり、あるサービスのルールを別のサービスにも当てはめて適用しています。この記事では、厚生労働省の通知文書にある「(4)同居家族に対するサービス提供の制限(基準第47条)」と「(5)準用(基準第48条)」について、シンプルにやさしく解説します。事業者や起業を考えている方が知っておくべき重要ポイントもまとめます。
同居家族に対するサービス提供の制限(基準第47条)
同居の家族へのサービス提供は原則禁止です。障がい福祉サービスのルールでは、ヘルパーが自分と同じ家に住んでいる家族にサービスを提供することは、基本的に認められていません。これは、公的なサービスが「身内の手助け」ではなく、あくまでプロのヘルパーによる支援になるようにするための取り決めです。事業者が自分の家族だけを優先的にケアして報酬を得てしまうと、不正やサービスの質の低下につながる恐れがあるため、このような制限が設けられています。
ただし、特別な事情がある場合には例外があります。離島や山間のへき地など、基準該当障害福祉サービスの運営が認められるような地域では、周囲に他のヘルパー事業所がなく、普通の体制では必要なサービス量を確保できないことがあります。そのような場合、市町村(地元の自治体)の判断で例外的に同居家族ヘルパーによるサービス提供が認められることがあります。「この地域では家族がヘルパーとして関わらないとサービスが足りない」と市町村が認めたときだけ、同居の家族による介護が特例として許されるのです。
例外を適用する際の具体的な条件も定められています。市町村が同居家族ヘルパーを特例で認める場合、以下のような点に注意して運用することになっています。
- 事前の届け出と確認: 家族をヘルパーにする場合、そのヘルパーが所属する事業所(※)から居宅介護計画(ケアプラン)の写しなど必要書類を市町村に提出しなければなりません。市町村はそれをチェックし、条件がきちんと満たされていると確認できて初めて、同居家族によるサービス提供を認めます。
- 条件を満たさなくなった場合の措置: 一度認められた後でも、後から「やはり条件を満たしていない」と市町村が判断した場合があります。そのときは特例的なサービス費用の支給を止めたり、すでに支払った費用の返還を求めることになります。ルール違反には厳しく対処されるわけです。
- 他のサービスとの併用: 市町村は、同居家族ヘルパーだけに頼りきりになっていないかもチェックします。他の居宅サービスが適切に組み合わさって提供されているかを点検し、必要に応じて家族や事業者に助言します 。家族ヘルパーだけに負担が集中しないよう、周囲のサービスともバランスを取るよう指導が行われます。
- ヘルパーの勤務時間制限: 家族ヘルパーが自分の家族を介護する時間は、そのヘルパーの総勤務時間のおおむね半分以下に抑える必要があります。この条件は、「仕事としての介護」と「家族の世話」の境界を明確にし、家族だからといって自分の親族ばかりを見て報酬を得る状況を避けるためのものです。地域の実情によっては多少この基準を柔軟に運用してよいともされていますが、基本的には家族だけのケアに偏らないようにする目安となっています。
(※補足)ここでいう事業所とは、「基準該当居宅介護事業所」という、都道府県からの指定は受けていないものの国の定める基準を満たした訪問介護事業所のことです。離島など通常の事業所が不足する地域で、市町村がサービス提供を認めた事業所を指します。
要するに、同居する家族に対するサービス提供は原則NGですが、やむを得ない地域では厳格な条件付きでOKになるということです。起業を考える人にとっては、自分の家族をヘルパーとして使えるかどうかは気になる点かもしれません。しかし、通常は違反行為になるため注意が必要で、もし特例を活用する場合でも自治体としっかり調整しなければなりません。
「準用」(基準第48条)で広がる適用範囲
「準用」とは、ある決まり(ルール)を他の場面にもそのまま当てはめて使うことです。法律用語で難しく感じますが、「○○に関する基準を△△に準用する」という言い方をします。障がい福祉サービスの基準第48条では、この準用のルールが定められています。具体的には、居宅介護(ホームヘルプ)の運営基準を他のサービスにも適用することで、サービスごとにバラバラではなく一貫した基準で運営されるようにしているのです。
では、どのサービスにどんな基準が準用されるのか、ポイントを表にまとめてみます。
(※「基準該当」とは、先ほども触れたように自治体が認めた非指定の事業所という意味です。たとえば「基準該当居宅介護」とは、地域で必要に応じて市町村がサービス提供を認めたホームヘルプ事業所を指します。)
上記のように、基準第48条によって指定居宅介護のルールが他のサービスにもそのまま拡大適用されています。たとえば、離島などで市町村が認めた居宅介護事業所(基準該当居宅介護)であっても、スタッフの配置や運営のルールは通常の居宅介護事業所とほぼ同じ基準を守らなければなりません。同様に、重度訪問介護や同行援護、行動援護といったサービスでも、基準該当事業として行う場合には居宅介護のルール+αのルールを守る必要があります。ここで「+α」と言っているのは、第44条~47条の規定で、先ほど説明した同居家族に関する制限(第47条)なども含まれています 。要するに、どんなサービスであっても基準を緩めることなく、一定の品質を確保する仕組みが準用によって作られているのです。
サービスを提供する側から見ると、「準用」によって他のサービスの基準もしっかり把握しておかなければならないということでもあります。起業希望者にとって、自分が手がけるサービスだけでなく関連する基準全体を理解することが求められるので注意しましょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 同居の家族へのサービス提供は原則禁止であり、違反すれば指定の取消し等、重いペナルティにつながります。家族だからと安易にヘルパー役にすることはできないと心得ましょう。
- 例外として認められるのはサービス不足の地域だけです。離島・山間部などで他に事業者がいない場合に限り、市町村の承認のもとで同居家族ヘルパーが許されます。この場合も厳格な条件付きなので、自治体への事前届出やルール遵守が不可欠です。
- 家族ヘルパーの勤務は「ほどほど」に。特例で家族が介護に携わるときでも、自分の家族ばかりに時間を使いすぎないよう半分以下に抑える決まりがあります。プロの介護サービスとしての客観性を保つためのルールです。
- 「準用」の概念を理解することが大切です。障がい福祉サービス事業を始めるなら、自分のサービス種別の基準だけでなく、関連する他のサービスの基準もチェックしましょう。同じように適用されるルール(例えば人員配置基準や記録の義務など)がないか把握することで、運営上のミスを防げます。
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