外部サービス利用型グループホームの契約・届出義務と指揮命令のポイント
記事の概要:
外部サービス利用型グループホームでは、入居者の日常的な介護ケアを他の事業者(居宅介護サービス事業者など)に委託する仕組みになっています。そのため、事業開始時の契約・届出義務や業務に必要な指揮命令の内容について、通常のグループホームとは異なるルールが定められています。本記事では、事業開始時に必要な契約および行政への届出義務と、業務委託先への指揮命令の内容とそこに含まれる遵守事項について、やさしくシンプルに説明します。
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事業開始時の契約・届出義務
外部サービス利用型のグループホームを始めるには、まず事前に提携先となる居宅介護サービス事業者との契約を結び、そして所定の届出を行う義務があります。法律上、事業開始前にこの契約・届出を済ませておかなければなりません。これは利用者の介護サービスを外部に委託する特性上、誰が介護を提供するのかを明確にし、行政が把握できるようにするためです。
- 居宅介護事業者との事前契約:外部サービス利用型共同生活援助を提供する場合、グループホームの運営事業者はあらかじめ適切な居宅介護サービス事業者(例:ホームヘルプ事業者)と契約を締結しておく必要があります。入居者に対して日常生活上の介護等を提供する相手が明確であり、事業開始後に滞りなくサービス提供できる体制を整えるためです。
- 行政への届出:契約を結んだら、その契約相手の事業者名や事業所の所在地を記載した書面を作成し、都道府県知事(所轄庁)に提出します。この届出によって、「どのグループホームがどの居宅介護事業者と連携してサービス提供するか」を行政に登録し、サービス提供体制の透明性を確保します。届出はグループホームの指定申請時や事業開始時に必要となる重要書類です。
上記の契約義務(事前契約)と届出義務を怠ると、指定共同生活援助事業者の指定が受けられなかったり、行政指導の対象となったりする可能性があります。したがって、新しくグループホーム(外部サービス利用型)を開設する障害福祉サービス事業者は、開業前に忘れずに契約締結と届出を済ませましょう。
業務に必要な指揮命令の内容と遵守事項
外部サービス利用型グループホームでは、日々の介護業務を委託する居宅介護サービス事業者に対して、グループホーム運営事業者が必要な管理および指揮命令を行うことが法令で定められています。ここでいう「指揮命令」とは、利用者の安全・安心を守るために、委託先のスタッフにもきちんと守らせるべきルールを周知・徹底する管理体制を指します。
特に重要なのが、指揮命令の中に以下のような利用者支援の基本的ルールを確実に含めることです。これらは障害福祉サービス事業全般で求められる遵守事項であり、外部サービス利用型の場合も例外ではありません。グループホームの委託先スタッフであっても、下記の事項は必ず守らなければならないという点を、運営事業者が責任を持って指示・確認します。
- 緊急時の対応方法:利用者に急病や事故など緊急事態が発生した際の対応手順です。具体的には、速やかに医師や救急に連絡する、必要に応じて管理者へ報告する、適切な応急処置を行うなど、入居者の命や健康を守るための対応を含みます。外部スタッフにも非常時対応マニュアルを共有し、迅速に動けるよう指示しておきます。
- 秘密保持(守秘義務):利用者やそのご家族のプライバシーや個人情報を保護することです。業務上知り得た利用者の情報を無断で第三者に漏らさないのはもちろん、記録の取り扱いにも最新の注意を払います。委託スタッフにも、利用者の秘密を守る義務があることを明示し、必要に応じて誓約書を取り交わすなどして徹底します。
- 事故発生時の対応:万一、利用者がケガをしたり事故に遭ったりした場合の対処についてです。まず利用者の安全を確保し、適切な処置を行った上で、速やかに上長や事業所管理者に報告、必要なら医療機関への連絡、行政への届け出といった手順を定めておきます。再発防止策の検討や記録の作成も含め、事故後のフォローまで含めた対応を指示します。
- 身体拘束の禁止:利用者の意思に反して身体を拘束したり隔離したりする行為は、原則として禁止されています。これは人権尊重の観点から極めて重要なルールです。どうしても利用者本人や他者の生命・安全を守るために緊急やむを得ず一時的に拘束等を行う場合でも、事前に方針を定め、必要最小限の方法で、かつ上位機関への報告や記録を残すといった厳格な手続が求められます。委託スタッフにもこの禁止事項と例外時の手順を研修等で周知し、安易に拘束に頼らないよう指導します。
以上のように、グループホーム事業者は委託先の居宅介護スタッフにも自事業所の従業員と同等に高い倫理基準とサービス水準を遵守させる責任があります。そのために、運営規程や委託契約書の中でこれら遵守事項を盛り込み、必要に応じて指揮命令権限を行使できる体制を作っておきましょう。具体的には、契約書に「緊急対応・秘密保持・事故時対応・身体拘束禁止に関して、グループホーム事業者が必要な指示を行える」旨を明記したり、定期的に合同ミーティングや研修を開いて情報共有・指導を行ったりすると効果的です。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 契約・届出はスタートライン:グループホーム開設前に必ず居宅介護事業者との契約を締結し、行政への届出書類を提出します。この手続きは指定申請の要件でもあり、事業開始のスタートラインです。届け出た内容(提携事業者の名前や住所など)に変更が生じた場合も、速やかに追加の届出を行いましょう。
- 信頼できる連携先の選定:居宅介護サービス事業者は、いわば自社と一緒に利用者を支えるパートナーです。実績やサービスの質、緊急時の対応力などを見極めて信頼できる事業者と契約を結びましょう。また契約書にはお互いの役割分担や指揮命令系統を明文化し、トラブル防止に努めます。
- 運営規程とマニュアル整備:運営規程には外部サービス利用型ならではの項目(例えば委託先との役割分担、緊急連絡網、事故時報告フローなど)を盛り込みます。職員向けマニュアルも委託スタッフに共有し、統一的なサービス提供となるよう配慮します。
- 日頃からコミュニケーションを密に:外部のスタッフとも定期的に情報交換や打ち合わせを行いましょう。サービス管理責任者や世話人等と居宅介護事業者のヘルパーとの顔の見える関係を築いておくことで、指揮命令もスムーズに伝わり、緊急時対応もうまく機能します。ちょっとした利用者の体調変化なども共有できる体制が理想です。
- コンプライアンス最優先:緊急対応・秘密保持・事故報告・身体拘束禁止といった遵守事項は、利用者の人権と安全を守る根幹です。委託先であっても違反が起きれば最終的な責任はグループホーム事業者に問われます。普段からスタッフへの教育・研修を行い、コンプライアンス意識を高く維持しましょう。
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