重度訪問介護におけるサービス提供責任者の資格要件と留意点についてやさしく解説
記事の概要:
重度訪問介護事業を始めるうえで欠かせないのが、サービス提供責任者(サ責)の資格要件です。サービス提供責任者とは、訪問系の障害福祉サービス事業所で介護サービスの計画作成やスタッフの指導・調整を担う中心的な存在です。この記事では厚生労働省の資料に基づき、重度訪問介護のサービス提供責任者になるために必要な資格と、運営上事業者が留意すべきポイントをやさしくシンプルに解説します。
サービス提供責任者に求められる資格要件とは?
まず、重度訪問介護事業所には常勤で1人以上のサービス提供責任者を配置する必要があります。そのサービス提供責任者になるには、次のいずれかの資格・要件を満たしていることが条件です:
- 介護福祉士(国家資格を持つプロの介護職)であること。
- 介護職員実務者研修を修了していること。
- 介護職員基礎研修を修了していること(2012年まで実施されていた介護の基礎研修課程修了者)。
- 居宅介護従業者養成研修1級課程(旧ホームヘルパー1級)を修了していること。※介護保険の訪問介護員1級研修修了者も含まれます。
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を修了後、3年以上介護の現場で働いた経験があること。
- 看護師等などの資格を持っていること。
上記のいずれかに当てはまれば、その人は重度訪問介護のサービス提供責任者として配置できます。例えば、一番上の国家資格である介護福祉士は当然サ責になれますし、介護福祉士ほどの資格がなくても、一定の研修を修了していれば対象になります。また、ヘルパー2級に相当する初任者研修しか持っていない場合でも、介護の実務経験が3年以上あればサ責になれるという点がポイントです。
さらに看護師等の医療系有資格者については補足があります。看護師や准看護師、保健師の資格を持つ人は、介護分野の研修課程(上記の1級課程や初任者研修など)の多くが免除されているため、3年以上の介護経験は不要とされています。つまり、極端に言えば介護現場の経験が浅い看護師でもサービス提供責任者になることが制度上可能です。ただし介護現場のマネジメントには医療知識だけでなく介護現場での経験も重要ですので、現実には看護師等がサ責になる場合でも介護の現場経験があることが望ましいでしょう。
初任者研修修了+実務経験3年とはどんな条件?
居宅介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級に相当)を修了し、介護の仕事に3年以上携わった人は、重度訪問介護のサービス提供責任者になる資格要件の一つを満たします。この「3年以上の介護等の業務に従事」とは、文字通り通算で3年間以上介護の現場で働いた経験があることを指します。考え方としては、介護福祉士(国家資格)の受験要件における実務経験とほぼ同じ基準で数えます。
研修と経験の順番は問いません。初任者研修を先に修了してから経験を積んでも、先に介護の実務経験を積んで後から研修を受けても大丈夫です。要は、サービス提供責任者として配置される時点で研修修了資格と3年分の実務経験の両方を満たしていれば問題ありません。
なお、サービス提供責任者の実務経験に含められるのは、基本的に「仕事として行った介護業務」の期間です。したがって、ボランティアとして活動した期間は原則として実務経験には含みません。例えば、無償の介助活動や、有償ボランティアであっても正式な雇用契約のない活動時間は、通常は3年の経験にはカウントされないので注意しましょう。
ただし、例外的な扱いもあります。将来、障害福祉サービスの指定事業者になる見込みの団体で、NPO法人格を取得する前に継続的な介護支援活動を行っていた場合、そのボランティア活動期間は特例として実務経験に算入しても構わないとされています。要するに、後にNPO法人など正式な事業者となるグループで地道に続けてきた介護支援の経験であれば、「見習い期間」として3年の中に含めても良いということです。この特例は、重度訪問介護の現場でボランティアから事業化へ移行するケースを想定した救済措置と言えます。
ただし、この特例で算入したボランティア期間については注意点があります。たとえ重度訪問介護のサービス提供責任者要件上は実務経験として認められても、介護福祉士国家試験の受験資格における「実務経験3年」には充当できません。介護福祉士試験ではボランティア期間は経験年数に含められない決まりがあるためです。つまり、特例でサービス提供責任者の要件を満たしたとしても、その期間をもって介護福祉士の受験要件をクリアしたことにはならないので、ご自身のキャリア計画の上では注意してください。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 有資格者の確保計画:重度訪問介護事業を立ち上げる際は、サービス提供責任者となる人材の確保が最優先事項です。介護福祉士など資格保持者を早めにリクルートし、人員基準をクリアしましょう。初任者研修のみの人を充てる場合も、必ず3年以上の実務経験があることを確認します。
- 資格証と経験証明の準備:指定申請や運営指導では、サービス提供責任者の資格証明書や実務経験を証明する書類の提出を求められることがあります。介護福祉士証、研修修了証、雇用証明(在職証明)などを事前に揃えておきましょう。
- スタッフの育成と研修:現時点で要件を満たす人材が少ない場合でも、将来的にサ責候補となるスタッフを育成する視点が大切です。働きながら実務者研修を受講させたり、介護福祉士資格の取得を支援したりすることで、事業拡大に備えて人材の質を底上げできます。新人スタッフにも継続的に研修機会を提供し、「資格+経験」の両面で成長できる環境を作りましょう。
