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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第九の二 就労選択支援 3 運営に関する基準 (1) 実施主体

定就労選択支援の実施主体(基準第173条の6)をわかりやすく解説


記事の概要:
厚生労働省が発表した「指定就労選択支援」に関する基準の中から、事業者の実施主体(基準第173条の6)の要件について、やさしくシンプルに解説します。指定就労選択支援は令和7年(2025年)10月施行の新サービスで、サービス提供を希望する事業者には一定の経験と実績が求められます。

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実施主体とは何を指す?

「実施主体」とは、そのサービスを実際に提供する事業者のことです。つまり指定就労選択支援事業者としてサービスを運営できるのは、法律で決められた要件を満たす事業者だけです。厚生労働省の通知によれば、指定就労選択支援の実施主体となれるのは次のような事業者です。

  • 就労移行支援や就労継続支援を行っている指定障害福祉サービス事業者で、過去3年以内に少なくとも3名の障害者を新たに一般企業(通常の事業所)へ就職させた実績がある事業者。
  • 上記と同等の障害者就労支援の経験・実績があると都道府県に認められた事業者。具体的には、以下のような機関が該当します。
    • 障害者就業・生活支援センター事業の受託法人(障害者の就労と生活を支援する公的センター)
    • 自治体(市区町村)設置の就労支援センター(自治体運営の障害者就労サポート機関)
    • 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)による障害者職業能力開発訓練事業を行う機関 など

要するに、「すでに障害者の就労支援で成果を出している事業者だけが、この新サービスを提供できる」ということです。全く実績のない新規参入者がいきなり指定就労選択支援を始めることは想定されていません。既存の就労支援事業所が、自社のサービスにこの新メニューを追加するイメージです。

特例:新規事業者や地域事情への配慮

では、「うちの事業所は開設してまだ2年だけど、3人の就職実績はある」という場合や、「地域にまだ誰も就労選択支援をやっていないので、自分がやりたい」という場合はどうでしょうか? 実はこのようなケースに配慮した特例規定も設けられています。

  • 開設から3年未満の事業所でもOK:就労移行支援事業所などの運営期間がまだ3年に満たない場合でも、その間に合計3名以上を一般就労に結びつけた実績があるなら、指定就労選択支援の実施主体要件を満たすとされています。短期間であっても結果を出していればチャンスがあります。
  • 地域に事業所がない場合の特例:もし同じ市町村内に就労選択支援事業所が一つもない場合は、過去10年間の中の任意の連続する3年間で合計3名以上の就職実績があれば認められます。つまり、少し昔の実績でも、地域の空白を埋める事業者であれば柔軟に評価してもらえるということです。

これらの特例によって、意欲ある事業者が地域で新サービスを立ち上げやすくなる措置が講じられています。ただし、これらはあくまで初回指定を受けるための経過措置です。指定後もサービスの質を維持し、次回の更新時に必要となる要件を満たし続ける努力が重要です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 指定就労選択支援は経験者向けのサービス:運営できるのは、既に障害者の就労支援で成果を出した実績がある事業者に限られます。最低でも直近3年間で3名以上の就職支援実績が必要です。
  • 新規参入は実績作りが鍵:全くの新規でこのサービスだけを始めることは難しいです。まずは就労移行支援など他の障害福祉サービスで実績を積みましょう。運営歴が浅くても3名の就職者を出していれば指定申請は可能です。
  • 地域ニーズに応えるチャンス:あなたの地域に就労選択支援事業所がないなら、自社の過去の実績(10年以内の連続3年で3名以上)をアピールすることで認可を得られる可能性があります。地域の障害者支援の空白を埋める事業として期待されます。
  • 継続的な取り組みが必要:指定を受けることがゴールではありません。サービス提供開始後も利用者の就職支援に努め、更新時までに実績を積み重ねておくことが大切です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。