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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十 就労移行支援 1 人員に関する基準 (4) 認定指定就労移行支援事業所の従業者の員数

定指定就労移行支援事業所の職員配置基準をわかりやすく解説【基準第176条】


記事の概要:
厚生労働省が定める就労移行支援の職員配置基準(基準第176条)に基づき、認定指定就労移行支援事業所で必要となる職員の配置ルールを解説します。記事本文では制度の概要から各職種ごとの配置基準、人数計算の例や職員の兼務可否等についてやさしくシンプルに解説します。

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制度の概要(認定指定就労移行支援とは)

就労移行支援とは、障害のある方が一般企業などへの就職を目指すために必要な訓練や支援を行う障害福祉サービスです。利用者は原則2年間(※延長あり)通所して、職業訓練や就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けます。

その中でも認定指定就労移行支援事業所(いわゆる「養成型就労移行支援」)は、国家資格の取得をめざす特別な就労移行支援事業所です。例えば視覚障害のある方が「あん摩マッサージ指圧師」や「はり師・きゅう師」(鍼灸師)といった資格を取得して就職できるよう、国家試験の受験に必要な教育カリキュラムを提供します。こうした養成型の就労移行支援を行う事業所を都道府県知事等が認定し、「認定指定就労移行支援事業所」として指定します。通常の就労移行支援(一般型)とは対象やカリキュラムが異なるため、職員配置基準にも一部違いがあります。

各職種ごとの配置基準(基準第176条)

認定指定就労移行支援事業所を運営するには、満たすべき人員配置基準があります。解釈通知においては、特に以下の職種について言及されています。

  • サービス管理責任者(サビ管) … 提供する支援の質を管理する責任者です。原則として事業所ごとに1名配置し、常勤(フルタイム)かつ専任で従事することが求められます。サービス管理責任者は、利用者ごとの支援計画の作成・進捗管理やスタッフへの指導・連携調整を行います。就労移行支援では他の障害福祉サービスと同様、利用者60人につき1人以上の配置が基準であり、通常は1事業所に1名配置すれば足ります(定員が61人以上の大規模事業所は増員が必要)。なお、管理者とサービス管理責任者は要件を満たせば一人二役で兼務することも可能です。例えば管理者自身がサービス管理責任者の資格を持っている場合、両方の役割を兼ねるケースがあります(ただし業務に支障が出ないことが前提です)。
  • 職業指導員 … 利用者に対し職業上の技能指導や訓練を行うスタッフです。認定指定就労移行では特に資格試験合格に向けた学習支援や、職業人として自立するための指導も担います。配置基準としては後述の生活支援員と合わせて利用者10人につき1人以上配置する必要があります。さらに職業指導員だけでなく最低1名は生活支援員も配置しなければなりません(各職種それぞれ1名以上)。職業指導員に求められる資格は法律上必須のものはありませんが、職業訓練や教育の経験がある人材が望ましいでしょう。
  • 生活支援員 … 利用者の生活面での支援や相談支援を担当するスタッフです。日常生活の課題解決や対人スキル向上の支援、生活リズムのサポートなどを行います。配置基準は職業指導員とセットで利用者10人につき1人以上(常勤換算)であり、それぞれの職種に最低1名ずつ配置が必要です。職業指導員と生活支援員を合わせた人数で基準を満たす計算をしますが、両職種のうち少なくとも1人は常勤でなければなりません。言い換えると、職業指導員と生活支援員のどちらかにはフルタイムスタッフを置く必要があります。生活支援員にも特定の必須資格はありませんが、福祉やカウンセリングの知識・経験があると望ましいです。
  • 就労支援員 … 就労支援員は、利用者が働く場所を見つけたり、仕事を続けるための調整を専門に行うスタッフです。具体的には、企業への求人開拓や実習先の調整、応募書類の準備サポート、面接同行、就職後の職場訪問による定着支援などを担当します。配置基準は、利用者の数を15で割った数以上(常勤換算)の就労支援員を置くことが求められています。たとえば利用者が15人なら「15÷15=1人」、30人なら「30÷15=2人」となり、それぞれ少なくとも1名、2名の就労支援員を配置しなければなりません。利用者が16人以上29人以下の場合は「16÷15=1.06…→切り上げて2人」とし、2名配置が必要です。

職種兼務の可否と留意点

認定指定就労移行支援事業所の職員は原則として専従、つまりその事業所の業務に専念することが求められます。しかし、利用者支援に支障がない場合にはこの限りではなく、一定の兼務が認められています。

職業指導員と生活支援員については、それぞれ別の役割ですが資格要件に明確な区別がないため、小規模事業所では柔軟に業務分担しながら両方の支援を1~2名のスタッフで賄うことも現実にはありえます。ただし法令上は「職業指導員も生活支援員も最低1名ずつ配置」と規定されているため、形式上は別々の職種として届け出る必要があります。要するに、一人の職員をもって両職種の配置要件を同時に満たすことはできない(1人で2役分を充当して「各1名配置した」とみなすことはできない)点に注意してください。例えば1人の職員が「職業指導員兼生活支援員」という肩書きを持っていても、人員基準上は職業指導員1名・生活支援員1名という扱いにはできず、もう一人生活支援員として登録された職員を置く必要があるということです。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 最低基準の遵守:職員配置基準は法律で定められた最低限守るべきラインです。利用者数に応じて職員数(常勤換算)を計算し、常に基準を下回らないよう人員を確保しましょう。
  • 職員配置基準の計画的な充足:新規に障害福祉サービスで起業する際は、指定申請時に人員基準を満たす職員を揃えておく必要があります。採用計画を立て、必要資格・経験を持つ人材を事前に確保しましょう。例えば認定指定就労移行支援を始めるなら、管理者とサービス管理責任者(資格要件あり)は早めに内定させておき、職業指導員と生活支援員も利用定員に見合った人数を雇用予定に組み込んでおきます。非常勤スタッフを活用する場合でも、初めから常勤スタッフ1名以上は配置しなければなりません。
  • フルタイム職員の確保:職業指導員・生活支援員については「どちらか一方を常勤にする」という要件があるため、少なくとも1名は常勤職員として配置する必要があります。事業所運営の要となる人材(サービス管理責任者や利用者支援のリーダー格)を常勤で雇用し、安定したサービス提供体制を築きましょう。常勤職員がゼロでは基準を満たせない点に注意してください。
  • 兼務による柔軟な運営:人員基準を満たしつつ人件費負担を抑えるために、一人で複数の役割を兼ねることも検討できます。例えば管理者がサービス管理責任者を兼務したり、職員が資格取得支援の講師役を兼ねたりすることは制度上可能です。ただし兼務が行き過ぎて現場が回らなくなれば本末転倒なので、職員の負荷や支援クオリティに目を配りながら運用してください。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。