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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十五 共同生活援助 2 設備に関する基準 (4) ユニット

ループホームの「ユニット構造」と設備基準をわかりやすく解説


記事の概要:
グループホーム(共同生活援助)は、障害のある方が少人数で共同生活を送る住まいです。厚生労働省の解釈通知では、グループホームの設備基準において「ユニット構造」という考え方が示されています。簡単に言えば、一つのグループホームをいくつかのユニット(生活単位)に分け、家庭的な環境で暮らせるようにする仕組みです。本記事では、ユニット構造に関する設備基準をやさしくシンプルに解説します。

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ユニット構造とは?少人数ユニットで家庭的な暮らし

グループホームのユニット構造とは、利用者の居住空間をいくつかの小さな単位(ユニット)に分ける考え方です。ユニットは居室(個室)と、その近くにあるリビングや食堂などの共用スペースで構成される一つの生活単位です。言い換えると、ユニットごとにミニ家庭のようなまとまりを作り、利用者同士が家庭的な雰囲気の中で共同生活できるようにします。各グループホームには少なくとも1つのユニットがあることになります。

ユニットごとの入居定員は法律で2人以上10人以下と定められています。ユニットあたり最大10名までの少人数に抑えることで、大人数の施設ではなく家庭的なスケールで生活できるようにする狙いがあります。例えば5人入居のグループホームであれば1ユニット5名ですが、仮に入居者が12名になる場合は6名ずつの2ユニットに分ける、といった形です。なお、グループホーム全体の定員も通常は10人以下ですが、既存建物を転用する特例として最大20人(さらに特に必要と認められれば30人)まで認められるケースがあります。その場合でもユニットごとの定員は10人以下であるため、20人であれば2つ以上のユニットに分かれて生活することになります。

ではユニットをどう作るかですが、建物の種類によってイメージが少し異なります。一般的な一戸建て住宅であれば建物全体で1ユニットを形成するでしょう。一方、マンションなどで複数の住戸を活用する場合、例えば4LDKの一室を借りているならその4LDK全体で1ユニットになります。また、ワンルーム(1K)タイプの部屋が並ぶマンションの場合でも、複数の個室と隣接する一部屋を共用リビングに充てることで1ユニットとして構成することができます。重要なのは、ユニットごとに入居者が互いに顔を合わせ交流できる共用リビング・食堂があり、ユニット内で生活が完結できることです。単に同じ建物に個室が並んでいるだけで交流が無ければ、それはグループホーム本来の「共同して暮らす」趣旨に反します。したがって各ユニットでは、入居者がリビングや食堂で一緒に過ごし、食事をとったり談笑できる空間を設ける必要があります。

ユニットごとの設備基準:お風呂・トイレ・キッチンも原則ユニットごとに

グループホームの設備基準では、日常生活に必要な設備を基本的にユニットごとに備えることが求められています。具体的には、各ユニットごとにお風呂(浴室)、トイレ、洗面所、台所(キッチン)といった生活に欠かせない設備を設置するのが原則です。ユニットとはひとつの生活単位ですから、入居者がそのユニット内だけで入浴・排せつ・食事準備など日常生活が完結できる状態が理想です。たとえば2ユニットあるグループホームなら、浴室やキッチンも2か所用意するのが基本となります。

もっとも、現実的な事情ですべての設備をユニット単位で重複させるのが難しい場合もあるでしょう。そのため通知では「適切なサービス提供に支障がない場合」はこの限りではない、とされています。つまり入居者の生活に問題が出ない範囲であれば、設備をユニット間で共有することも一応許容されています。しかし共有を認める場合でも注意が必要です。厚労省の解釈では、この場合の留意点として「入居者(サテライト入居者を含む)および職員が一堂に会するのに十分な広さ」を共用設備に確保することが挙げられています。簡単に言えば、もし複数ユニットで一つの食堂やリビングを共用するなら、全員(+支援スタッフ)が同時に集まっても狭くない広さが必要ということです。また共用設備は入居者専用であることも重要です。他の事業所の利用者や外部の人が頻繁に出入りするようでは、入居者が安心して過ごせる家庭的な空間とは言えません。ユニットのリビング・食堂・浴室などは、そのユニットの入居者(とスタッフ)が気兼ねなく使えるプライベートな共用空間として設けましょう。

居室(個室)の基準:原則1人部屋・面積7.43㎡以上

居室(入居者の部屋)の基準もユニット構造と並んで重要な設備要件です。グループホームの居室は原則として1人1室の個室を用意します。複数の障害者が同じ部屋に暮らす多床室では、プライバシーや生活リズムの確保が難しいためです。ただし例外的に、入居者本人たちの希望に基づく場合は二人部屋も認められています。典型的には夫婦やきょうだいなどが同じ部屋を使いたいと望むケースです。この場合でも事業者側の都合で一方的に相部屋にすることは許されません。また、仮に二人部屋とする場合には一人あたりのスペースが十分広くなければなりません。二人部屋用の特別な面積基準は明文化されていませんが、「十分な広さを確保すること」が求められています。実務的には、双方のベッドや車椅子が置けて、プライベートな収納や生活スペースも余裕をもって確保できる程度の広さが必要でしょう。

一方、1人部屋の広さについては明確に基準が定められています。居室床面積は7.43平方メートル以上(畳数で言えば4.5畳以上)と規定されています。7.43㎡というのはベッドと収納を置いても生活に支障ない最低限の広さです。実際には「生活の場であることを基本に、収納設備は別途確保するなど私物も置ける十分な広さ」が望ましいとされています。狭すぎる部屋では自分の持ち物を置く場所もなく、快適な暮らしはできません。収納家具を置いてもなおゆとりのある広さを確保しましょう。なお、この面積算定には押し入れ等の収納部分は含めず、純粋な居室空間だけで7.43㎡必要です。

居室の構造にも注意点があります。居室とは「廊下や居間等とつながる出入口があり、他の居室とは明確に区分された空間」と定義されています。簡易なカーテン仕切りやパーティションで部屋を区切っただけでは正式な居室とは認められません。例えば大部屋をカーテンで二区画に分けても、それは二つの居室にはならないということです。必ず壁や扉などで個室として明確に独立させる必要があります。ただし、古い住宅を改修して利用する場合などで構造上どうしても壁ではなく襖(ふすま)等で仕切られているケースもあります。そのような住宅構造上やむを得ない場合には柔軟に認められることもあるとされています。いずれにせよ、入居者が自分の個室として安心できる空間を用意することが大前提です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • ユニット単位の設計:グループホームを開設する際は、建物の間取りをユニット単位で考えましょう。入居者が10名までなら1ユニット、11~20名なら2ユニット…というように少人数グループに分かれて生活できるようにします。それぞれのユニットにリビング・食堂・水回りを備え、ユニット内で生活が完結する設備配置にするのが望ましいです。
  • 居室は基本個室で十分な広さ:入居者のプライバシー確保と快適性のため、1人1室が原則です。各居室は7.43㎡以上を確保し、収納家具等を置いてもゆとりある広さにします。二人部屋を設ける場合は入居者本人の強い希望が前提で、部屋は一人用の倍以上の広さが必要です。また、居室の仕切りは壁や扉などで明確に行い、カーテンで区切っただけの空間は不可となるので注意してください。
  • 家庭的な共用空間づくり:ユニットの共用スペース(居間・食堂など)は全員が集まれる広さを確保しましょう。例えば定員8名のユニットであれば、8人分の食卓と車椅子などを置いても動けるダイニング、ゆったりくつろげるリビングが必要です。共用設備は当該ユニット(またはグループホーム)の入居者専用にし、他の事業所利用者や外部者が頻繁に利用しないよう管理します。家庭的な雰囲気を重視し、入居者が「自分の家」のように落ち着ける空間を演出することが大切です。
  • 申請時のチェックポイント:グループホーム指定申請や指導監査の場面では、これら設備基準の遵守が厳しくチェックされます。物件の間取り図や居室・設備の写真提出を求められることもあります。居室数・面積、設備の数と配置、ユニット区分などが基準通りか事前によく確認しましょう。とくに開業準備段階で物件を選ぶ際には、部屋数や広さが足りるか、リフォームで基準を満たせるかといった点を見落とさないようにしてください。基準を満たしていない状態では指定が受けられず、計画の大幅修正を余儀なくされる可能性があります。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。