グループホームの立地基準と事業所単位をわかりやすく解説
記事の概要:
共同生活援助(いわゆるグループホーム)を運営・起業しようとする方に向けて、重要な二つの基準「立地に関する基準」(指定基準第210条第1項)と「事業所の単位に関する基準」(同第2項)について解説します。グループホームは障害のある方が地域で家庭的に暮らす場ですが、どこに設置できるのか(立地)や、事業所はどういった単位で指定されるのか(事業所単位)といった点で疑問をお持ちの方も多いでしょう。本記事では厚生労働省の省令解釈通知をもとに、やさしくシンプルに説明します。この記事を読むことで、グループホームの設置場所の考え方や、一つの事業所で複数の住宅を運営する仕組みについて実務的なポイントがわかります。
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グループホームの「立地に関する基準」とは
まず「立地基準」とは、グループホームをどんな場所に設置すべきかを定めた基準です。指定基準第210条第1項では、グループホームについて次のように規定されています:
「グループホームの利用者が家庭的な雰囲気の下でサービスを受け、地域との交流を図れるよう、住宅地または住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流機会が確保される地域にあり、かつ、入所施設または病院の敷地外に設置することが基本である。」
簡単に言えば、グループホームは普通の住宅街の中やそれに近い環境に作り、巨大な入所施設や病院の敷地内には作らないようにしましょうということです。家庭的な雰囲気と地域の人とのつながりが大切なので、周囲に家族や地域住民が暮らしていて交流しやすい場所を選びます。また、「入所施設」とは多くの人が生活する入居型の大規模施設(例えば障害者支援施設など)を指し、そうした大規模施設や病院の敷地内にはグループホームを置かないのが原則という意味です。
なぜ住宅地で、施設の敷地内はNGなの?
グループホームは障害のある人の「住まい」です。できるだけ家庭的な雰囲気を感じられ、地域社会の一員として自然に暮らせる場所であることが理想です。もし大病院の敷地内や大規模な入所施設と同じ敷地にグループホームを作ってしまうと、どうしても周囲が“施設感”の強い環境になりがちです。そうなると、地域の普通の暮らしから切り離され、利用者が24時間その施設だけで生活が完結してしまう恐れがあります。そこで立地基準では、「地域に溶け込める場所」にグループホームを設けるよう求めているわけです。
ただし、これはあくまで原則(基本的な考え方)です。実際には、この基準は各都道府県が条例で定める際の参考基準(参酌すべき基準)とされています。つまり、自治体ごとに地域の事情を考慮して運用されます。自治体によっては「同じ建物内に介護施設とグループホームが同居していてもOK」と判断するところもあれば、「入所施設や病院だけでなくデイサービス事業所と敷地が一緒なのもNG」と厳しく見るところもあります。大切なのは、計画中のグループホームが本当に家庭的で地域と交流できる運営になりそうかどうかを、自治体(都道府県知事など)が総合的に判断することだと通知でも示されています。ですから、事業者や起業希望者の方は、自分のグループホームを作りたい場所がこの趣旨に合っているかどうか、自治体に相談して確認することが重要です。
グループホームの「事業所の単位に関する基準」とは
次に「事業所の単位」についてです。指定基準第210条第2項では、グループホーム事業所の範囲(単位)が定められています。この基準は一言でいうと、「グループホームの指定(許可)は建物ごとではなく、一定の地域内の複数の住宅をまとめて一つの事業所として行える」という考え方です。
個々の建物で許可を取る必要はない?
従来、1つの建物ごとに個別に指定(許可)を取らなければならないサービスもありますが、グループホームは違います。一定の地域内にある複数の共同生活住居をまとめて、一つの「指定共同生活援助事業所」として指定を受ける仕組みになっています。たとえば、同じ市町村内や近接したエリアに本体のグループホーム(主となる住居)と、そこから少し離れた場所にサテライト型のグループホームを設ける場合でも、一つの事業所として一括で指定できます。事業者から見ると、一つの会社・法人が運営する近隣の複数住宅をまとめて一つの事業所単位として扱えるイメージです。
この仕組みのメリットは、柔軟に小規模な住宅を複数運営できることです。一軒の大きな建物に多数が暮らすより、地域に点在する小規模な住まいをいくつか用意したほうが家庭的で住みやすい場合があります。事業所単位の基準によって、事業者はそうした小さな住宅(ユニット)を本体+サテライトという形で運営できます。
サテライト型住居とは?
サテライト型住居とは、本体グループホームから離れた場所にある小規模な住居のことです。本体と常に密接に連携しつつ運営されるため、スタッフ派遣や支援の連動が図られています。サテライト住居は主たる事務所から概ね30分以内で行き来できる範囲に設置するのが望ましいとされ(交通手段や地域事情を考慮して柔軟に判断)、本体1箇所につき設置できるサテライトは原則2箇所まで(本体入居定員が4人以下ならサテライト1箇所まで)など制限もあります。つまり、「近くの地域で本体とサテライト、合わせて一つのグループホーム事業所」という運営形態です。
なお、「一定の地域内」とは明確に○○km圏内と決まっているわけではなく、通知では地域の実情に応じて判断するよう求められています。極端に遠く離れた住居を一つの事業所にまとめるのは難しいですが、現実的にスタッフや利用者同士の交流・支援が可能な範囲であれば一つの事業所として認められるケースが多いでしょう。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 住宅街など地域交流しやすい立地に:グループホームは家庭的な雰囲気を重視し、できるだけ周囲に一般の住宅や地域住民がいる環境に設置する。入所施設(大規模施設)や病院の敷地内は原則避ける。
- 入所施設と同じ建物でも運営趣旨が重要:立地基準は一律の禁止ではなく、グループホームの趣旨(地域交流や家庭的環境)が守られるかがポイント。自治体ごとに判断が異なるため、計画段階で管轄自治体に確認を。
- 一事業所で複数住宅を運営可:事業所単位の基準により、一定エリア内の複数のグループホーム住居をまとめて一つの事業所として指定可能。本体+サテライト方式で柔軟に運営できる。
- 住居は距離と数に制限あり:サテライト型住居は主たる事務所から概ね30分圏内が望ましく、本体1つに対し最大2つまで(条件による)といった制約がある。無理に遠方まで広げず、支援が行き届く範囲で計画する。
- 自治体と事前相談を忘れずに:立地条件や事業所範囲の解釈は自治体によって細部が異なる場合がある。開設前に必ず所轄の自治体(障害福祉担当課等)に計画を相談し、基準を満たす運営形態か確認しておくことが成功の鍵。
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