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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十九 地域移行型ホーム 1 地域移行型ホームの特例

域移行型ホームの特例制度とは?背景と要件をやさしく解説


記事の概要:
地域移行型ホーム(地域移行支援型ホームとも呼ばれます)は、障害のある方が長年過ごした入所施設や病院から地域の暮らしへ移るための通過的な居住の場を提供する新しい障害福祉サービス制度です。背景には、日本の障害福祉が長く施設中心だった反省があり、近年は脱施設化(施設から地域生活への移行)が強く推進されています。グループホーム(共同生活援助)は、まさにこの脱施設化を象徴する受け皿であり、地域移行やノーマライゼーション(障害のある人が地域で当たり前に暮らすこと)の体現として位置づけられています。つまり、グループホームは施設に替わる新しい暮らしの場であり、障害福祉制度のキーワードでもあります。

しかし、現実には入所施設や精神科病院で長期入所・長期入院している障害者も多く、すぐに一般の地域生活へ移行することが難しいケースがあります。例えば、精神障害のある方が何年も病院に入院している場合、退院していきなり地域で暮らすのは不安も大きいでしょう。そうした課題に対応するため、国は「脱施設化」の移行支援策として、病院や施設の近くで一時的に地域生活を体験しながらスムーズに移行できる場を用意する狙いを持ちました。この狙いのもと創設されたのが地域移行型ホームの特例制度です。

国の創設目的は大きく二つあります。ひとつは「脱施設化」の推進です。入所施設や病院から地域への出口を作ることで、障害者が地域で生活できるよう支援することが目的です。もうひとつは地域生活支援の充実で、グループホーム等の地域資源が不足している地域に対して柔軟な制度を設け、地域全体の障害福祉サービス(特に共同生活援助=グループホーム)の量を底上げする狙いがあります。このように、地域移行型ホームは「入所者を地域へ送り出す仕組み」と「地域で支える仕組み」の双方を兼ね備えた制度なのです。

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地域移行型ホームとは何か

地域移行型ホームとは、既存の障害者支援施設(入所施設)や精神科病院の敷地内にグループホーム(共同生活援助)の住まいを設置することを国が特別に認める仕組みです。通常、グループホームは入所施設や病院の敷地から離れた地域の中に設置するのが原則ですが、地域移行型ホームでは一定の条件を満たす場合に限り、施設や病院の敷地内にグループホームを作ることができます。これが「特例」と呼ばれるゆえんです。

地域移行型ホームは障害福祉サービス上は「共同生活援助」(グループホーム)の一種にあたります。ですから、基本的な運営はグループホームと同じで、少人数での共同生活を支援員の援助を受けながら行う場です。ただし通常のグループホームと異なり、利用できる人は長期入所・入院者など地域生活への移行に特に支援が必要な障害者に限定されています。また、利用期間も原則2年以内とされ、長くてもおおむね最大で3年程度までに地域生活へ巣立つことを目指す「通過型(トランジショナル)」のホームです。例えば「2年間で一人暮らしできる状態に移行する」ことを目標に、期間を区切って支援を行います。利用期間中も、地域生活へ移るための訓練や準備を継続して行うことが求められており、地域移行型ホームそのものがゴールではなく次のステップへの中間地点という位置づけです。

要するに、地域移行型ホームは病院や施設から地域への橋渡しとなるグループホームです。長期入院の精神障害者や、入所施設で暮らしてきた知的障害者などが、急に地域で暮らすのが不安な場合に、一時的にこのホームで地域生活のリハーサルを行います。ホームは病院敷地内などにあるため、急な体調不良時にも病院にアクセスしやすく安心感がありますし、病院スタッフもフォローしやすいというメリットがあります。その一方で、居住環境自体はできるだけ一般のアパートやグループホームに近い形態とし、プライバシーの確保された空間で自立生活の練習ができるよう工夫されています(構造的な独立性の確保などが求められています)。このようにして、本人の不安を和らげつつ円滑に地域生活へ移行できることを目指した仕組みなのです。

特例として認められるための要件

地域移行型ホームの特例は誰でも自由に使えるわけではなく、国が定めた厳格な要件をすべて満たす必要があります。ここでは、その主な要件である「(1) 障害福祉計画の量未達+知事の判断」「(2) 定員削減の要件」「(3) 住居数と定員の条件」について、それぞれわかりやすく解説します。

(1) 障害福祉計画の量未達+知事が特に必要と認めた場合

まず第一の要件は、「地域のグループホーム供給量が不足しており、都道府県知事が特に必要と認める場合」であることです。ここでいう「量」とは都道府県が策定する障害福祉計画に定められたグループホーム(共同生活援助)の整備目標量のことです。各都道府県は計画で「グループホームを何人分整備する」という目標を掲げています。しかし地域によっては目標に達しておらず、十分なグループホーム数が確保できていないところもあります。

地域移行型ホームの特例を使うには、その地域のグループホーム定員数が計画目標に満たない状況である必要があります。例えば「本県では計画目標500人に対し現状400人分しかグループホーム定員がない」などのケースです。さらに、その上で都道府県知事が「特に必要だ」と認めることが必要です。言い換えると、単に目標未達というだけでなく、行政の判断として「この地域には施設から地域への移行を促進するため特例的なグループホームがどうしても必要だ」というお墨付きをもらう必要があります。

この要件(1)を満たさない地域では特例の利用そのものができないため、まずは自分の地域の計画達成状況を確認することが第一歩です。

(2) 定員削減の要件(入所施設・病院のベッド数削減)

次の要件は、「入所施設または病院の入所定員の減少を伴うこと」です。簡単にいえば、地域移行型ホームを設置するなら、その分だけ元の施設・病院の定員(ベッド数)を減らしなさいという条件です。これは、特例を悪用して単に施設の敷地内に居住スペースを増やし、「実質的な定員を増やしてしまう」ことを防ぐ目的があります。地域移行型ホームはあくまで既存の入所者を地域に移すための受け皿であり、施設や病院の規模を拡大するものではないという考えです。

具体的には、国の通知でケースごとの定員削減ルールが示されています。以下の表にまとめたとおり、転用する建物の種類によって削減しなければならない定員数が異なります。

転換する建物の種類(ケース)病院/施設の定員削減のルール
施設・病院本体の一部をグループホームに転換する場合GH入居定員1人につき、本体定員を1人削減
敷地内の職員寮・看護師寮など別棟をグループホームに転換する場合GH入居定員2人につき、本体定員を1人削減(原則)
敷地内の障害者福祉ホーム等をグループホームに転換する場合定員削減は不要(削減しなくてもよい)

  • ケース①:もし入所施設や病院の建物そのもの(一部または全部)を地域移行型ホームに作り替えるなら、その施設・病院の定員をホームの定員と同じ人数だけ減らす必要があります。例えば病院の病棟の一部を改修してホームにする場合、ホームの定員が5人なら病院の許可病床数も5床減らす、といったイメージです。1人ホームに入れたら1人ぶん病院のベッドを無くす計算で、1対1の削減とも言われます。これによって「病院に入院していた5人がホームに移って暮らす=病院の入院定員も5人分縮小される」形となり、確実に脱施設化に繋がるわけです。
  • ケース②:病院や施設の敷地内にある職員寮・看護師寮など、もともと入所者が暮らす場ではない別の建物をホームに転用する場合は、原則としてホーム定員2人に対し、本体定員1人の削減で足りるとされています。例えば職員寮をホームとして6人が暮らせるようにした場合、施設本体の定員は3人分減らせばOKということです(2対1の割合)。ケース①よりも少ない削減で済む分、比較的緩和された条件と言えます。これは元の建物が入所者向けではなく遊休資産の活用という側面が強いため、施設側の負担をやや軽減して特例を使いやすくする配慮と考えられます。
  • ケース③:敷地内にある障害者福祉ホームや生活訓練施設など、従来から入所定員を持つ福祉施設をホームに転換する場合は、定員削減をしなくてもよいとされています。これらの施設は元から比較的小規模で地域移行に近い性格を持つため、転用しても既存定員を減らす必要まではないと判断されたのでしょう。たとえば昔ながらの「精神障害者福祉ホームB型」等をグループホームに衣替えする場合には、定員カウントはそのままで構わないということです。

以上のように、地域移行型ホームを設置するときは必ず何らかの形で本体施設の定員を削減する必要があります。特にケース①ではホーム定員と同数の削減が求められるため、運営側には思い切ったベッド削減と入所者の地域移行決断が必要です。一方でケース②や③のように活用できる建物がある場合は、比較的少ない削減でホームをスタートできるため、事業者にとってハードルが下がります。いずれの場合も「定員を削ってでも地域に移行させる」という決意が求められる点では共通しており、この特例制度が本気で脱施設化に取り組む場合のみに許される措置であることが伺えます。

(3) 住居数と定員の条件(4~30人ルール)

三つ目の要件は、「地域移行型ホームの定員は4人以上30人以下であること」です。定員とは、ホーム全体で受け入れる入居者の数です。国の基準では、特例であっても最低4名以上の入居定員が必要とされています。逆に上限は30名までとなっており、通常のグループホーム(おおむね定員20名程度)の上限よりも大きめに設定されています。これは、例えば病院の敷地内に複数の住居ユニットをまとめて設置するケースなども想定しているためです。実際に一つの地域移行型ホーム事業所で、敷地内の別棟にいくつかの住居(ユニット)を設け、その合計が20~30人規模になることも認められます。

定員に関する条件によって、地域移行型ホームは最低でも4人規模、最大でも30人規模の範囲で運営されることになります。小さすぎると効率が悪く、大きすぎるとまたミニ施設化してしまう恐れがあるため、この範囲に収めてバランスを取っていると考えられます。利用者同士が共同生活を営むというグループホーム本来の趣旨からしても、極端に少人数ではなくある程度の人数規模(4人以上)は必要ですし、逆に30人を超えると施設的な運営になりかねないため上限が定められています。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 既存建物の有効活用:特例を活用すれば、入所施設や病院が持っている遊休スペースをグループホームとして活かすことができます。例えば使われていない職員寮や、かつて利用者が住んでいた福祉ホーム棟などがあるなら、それを改修して地域移行型ホームにできます。新たに土地や建物を取得するコストを抑えられ、福祉で起業する際の初期投資の負担軽減にもつながるでしょう。ただし、建物の改修にあたっては消防法やバリアフリーなどの基準を満たす必要がありますし、場合によっては居室面積基準の緩和措置などの特例適用部分について行政と確認する必要があります。
  • 「知事が必要と認める」ための実務対応:前述のように、特例適用には行政(都道府県知事)の判断が欠かせません。事業計画段階から都道府県の障害福祉担当部署との相談を密に行いましょう。具体的には、自社(自施設)のある地域で障害福祉計画の目標値に対しグループホーム定員がどの程度不足しているかデータを集めます。また、対象とする入所者・入院者の状況(例:長期入院者○名が地域移行希望、待機中の人がいる等)も把握しておきます。これらを基に「地域ニーズが高く、我が社が地域移行型ホームを設置することが地域全体にとって有益です」という提案資料を作成し、行政に説明すると良いでしょう。知事が必要性を認めるかどうかは定性的な判断も含まれるため、地域の関係者の声(例:家族会や自治体関係者からの後押し)を集めておくことも有効です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。