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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第三(居重同行) 5 基準該当障害福祉サービスに関する基準 (1) (2) (3)

準該当障害福祉サービスとは?従業員数・管理者・設備基準をわかりやすく解説


記事の概要:
障害福祉サービスには、都道府県などから「指定」を受けて運営する事業所が一般的です。ところが、指定を受けるには細かい基準をすべてクリアしなければならず、地方や離島などでは、そのハードルが高すぎてサービスの担い手がいないという問題が長年ありました。

そこで登場したのが「基準該当障害福祉サービス」という制度です。これは、都道府県などから正式な指定は受けていないものの、一定の人員配置や運営体制、設備などを整えている事業者を、市町村が独自に認定して、障害福祉サービスを提供できるようにする制度です。

この制度が生まれた背景には、

  • 過疎地や離島でも最低限のサービスを確保する必要があること、

  • 旧・支援費制度から障害者総合支援法への移行により、従来からサービスを担っていた事業者の継続性を担保する必要があったこと、 などの事情があります。

つまり、「基準該当サービス」は、制度のすき間を埋めるための現実的な対応策として設けられたもので、あくまで例外的・補完的な役割を担っています。

本記事では、この基準該当サービスに必要な「従業員数」「管理者」「設備・備品」の要件について、厚生労働省の通知に基づいてシンプルにわかりやすく解説していきます。障害福祉分野での起業を考えている方にも、現場で運営にあたっている方にも役立つ内容です。

厚労省通知をわかりやすく読み解く

① 従業者の員数の取扱い

基準該当の居宅介護事業所では、「従業者を3人以上確保すること」が最低条件とされています。

ここで気をつけたいのは、「3人以上」というのは単に人数をそろえればいいというだけでなく、勤務時間の長さは問われないという点です。たとえば、短時間勤務の非常勤スタッフであっても、1人として数えられます。つまり、常勤である必要はありません

「それならとりあえず3人形だけ揃えればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、それは誤解です。この「3人以上」というのは、あくまで最低ライン。実際の現場では、利用者数やサービスの内容に応じて、必要な人数をしっかり確保することが前提です。

もう一つ、よくある質問が「サービス提供責任者は常勤でないといけませんか?」というものです。これについても、通知では明確に「常勤でなくてよい」と書かれています。ただし、常勤でなくてもよい=誰でもいいという話ではありません。指定事業所の配置基準を参考にしつつ、サービスの質を担保できる関与体制が望ましいとされています。利用者の状態把握や関係機関との調整を担う重要なポジションだからです。

② 離島その他の地域の取扱い

人材の確保が難しい離島や山村などについては、具体的のどの地域がこれに該当するか基準が設けられています。次の地域が対象です:

分類根拠法令内容
離島振興法指定された離島振興地域
奄美群島振興開発特別措置法奄美群島
山村振興法振興山村
小笠原諸島振興開発特別措置法小笠原諸島
沖縄振興特別措置法特定離島
その他厚労省告示指定地域告示による追加

これらの地域は、厚生労働大臣が「離島その他の地域」として定めた地域一覧に該当します。通知本文では、地域の列挙にとどまっており、具体的に人員配置の緩和措置などが明示されているわけではありません

ただし、こうした地域においては、制度運用上、市町村と協議のうえで柔軟な対応がとられる場合があるのが実情です。実際の人員体制については、地域の事情や市町村の判断により、個別に調整される余地があります。

(2)管理者(基準第45条)

基準該当事業所では、各事業所ごとに管理者を配置することが求められています。管理者は、職員管理、業務運営、法令遵守などの責任を負う重要な役職です。
注目すべきは、通知において「常勤である必要はない」と明記されている点です。これは指定事業所と異なり、非常勤の管理者でも認められるという、柔軟な措置です。
ただし、非常勤であっても名義貸しのような状態ではなく、実質的に管理者としての職務が遂行できているかが問われます。運営責任が果たされていない場合、認定取り消しなどのリスクもあります。
なお、通知では「指定居宅介護の場合と同趣旨」とされており、職責や行うべき内容自体は変わりません。形式は緩和されても、責任の中身は軽くないという点に注意が必要です。

(3)設備及び備品等(基準第46条)

設備や備品に関する取り扱いは、指定居宅介護事業所と「基本的に同趣旨」とされています。
つまり、事業運営に必要なスペースと備品(デスク、電話、書類保管設備など)が最低限そろっていれば良いということです。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 地域ニーズの確認: 基準該当サービスは本来、「サービス提供が不足している地域・分野」のための特例制度です。起業を検討する際は、そのサービスが地域で必要とされ、市町村が登録を認める状況か確認しましょう。既に同種の指定事業所が十分ある場合、基準該当での参入は難しいことがあります。
  • 最低基準の遵守: 必要な従業員数(3人以上)や管理者の配置、設備の確保は必須条件です。人員要件を満たさないと登録できないため、計画段階からスタッフ確保を綿密に行いましょう。特にサービス提供責任者となる人材の確保が重要です。また、管理者は事業運営の要であり、小規模ならサービス提供責任者が管理者を兼ねることも可能です。
  • 柔軟性と将来展望: 基準該当サービスは提供できる内容や対象者が限定されます。将来事業拡大を考えるなら早めに指定事業所の取得を目指しましょう。基準該当は特例措置なので、常にサービスの質と利用者の信頼確保に努めることが大切です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。