就労定着支援における記録整備の義務と実務対応
記事の概要:
障害福祉サービス事業を運営するには、さまざまな記録をきちんと残しておくことが法律で求められています。特に「記録の整備」(基準第206条の11)では、事業所の従業者や設備、支援内容などに関する記録を文書で整備し、重要なものは少なくとも5年間保管することが定められています。本記事では、この規定のポイントをやさしくシンプルに解説します。
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記録の整備とは?
「記録の整備」とは、障害福祉サービス事業所で事業運営やサービス提供に関する記録をしっかり残すことです。例えば、従業者(職員)の情報、施設・設備や備品の管理記録、会計データなど、事業所に関わる様々な事項について文書で記録しておく必要があります。これは法律(障害者総合支援法に基づく基準省令)で定められた義務であり、記録を残すことで事業運営の透明性や利用者へのサービスの質を確保します。
記録の種類と保存期間
事業所が残すべき記録のうち、サービス提供に関する重要な記録については、法律で最低5年間の保存が義務付けられています。これは、支援を提供した日から5年間は記録を保管しておく必要があるという意味です。以下は、就労定着支援事業所で特に保管が求められる主な記録と、その保存期間の例です。
上記のような記録は最低でも5年間は保存しなければなりません。5年という期間は、行政からの給付費の請求やサービス内容の確認などが後から求められる可能性に備えた期間です。もし記録がないと、トラブルが起きた際に適切な対応ができなかったり、事業所の信頼を損なったりする恐れがあります。
他機関との連携時の記録も忘れずに
記録の整備には、他の支援機関との連携状況の記録も含まれます。就労定着支援事業者は、利用者が他の支援機関(例えば就労支援センターや医療機関など)を利用している状況を把握した場合や、それら他機関と情報共有(連絡調整)を行った場合には、その内容を利用者のケース記録にまとめて残すことが必要です。こうした連携の記録を一元化しておくことで、支援者間で利用者の状況を共有しやすくなり、途切れのない支援(継続的なフォローアップ)につながります。また、後から見直したときに「どの機関とどんな連携をしたか」がすぐに分かるので、事業者自身の振り返りや報告にも役立ちます。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 記録はすべて文書で残す: 従業者名簿や設備一覧から、日々の支援内容まで、口頭や記憶だけに頼らず必ず書面(紙や電子データ)で残しましょう。
- 重要記録は5年間保管: 支援計画やサービス提供記録、苦情・事故対応の記録など重要なものは最低5年間保管するルールがあります。古い記録もすぐ取り出せるよう整理して保管しましょう。
- 情報連携も記録する: 利用者が他のサービスを利用していたり、他機関と連絡をとった場合は、その内容も忘れず記録します。支援の引き継ぎや証拠を残すためにも、連携内容をケース記録にまとめましょう。
- 記録ルールを徹底する: スタッフ全員に記録の重要性とルールを共有し、定期的に記録漏れがないか確認します。記録の徹底はサービスの質向上や監査対策にもつながります。
