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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第七(重度障害者等包括支援) 3 運営に関する基準 (1) (2)

定重度障害者等包括支援の運営基準とは?基準第130条・131条をやさしく解説


記事の概要:
指定重度障害者等包括支援とは、最も重い障害のある方でも地域で安心して暮らし続けられるよう、複数の障害福祉サービスをまとめて提供する制度です。常に介護が必要な障害者を対象に、居宅介護や生活介護など様々なサービスを一体的に提供します。その運営にあたっては法律で定められた基準(運営基準)を守る必要があります。本記事では、厚生労働省の通知文書「指定重度障害者等包括支援の運営基準」に基づき、基準第130条と基準第131条を中心に、重度障害者等包括支援事業の運営上のルールをやさしくシンプルに解説します。

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① 基準第130条:実施主体(誰がサービス提供者になれるか)

基準第130条では、重度障害者等包括支援を行う事業者(サービス提供者)の資格について規定しています。簡単に言えば、「重度障害者等包括支援の事業者になりたければ、あらかじめ他の障害福祉サービス事業者か障害者支援施設として指定を受けている必要がある」ということです。法律の条文では「指定重度障害者等包括支援事業者は、指定障害福祉サービス事業者又は指定障害者支援施設でなければならない」と定められています。つまり、新たに重度包括支援を始めたい場合、まず居宅介護や生活介護など何らかの障害福祉サービスの指定事業者になるか、障害者支援施設を運営していなければならないということです。これは重度包括支援が多方面のサービスを包含する特殊な制度であり、十分な経験や基盤のある事業者でないと適切な運営が難しいためです。※なお、「療養介護」事業者や一部の特殊なグループホーム等は除かれますが、一般的な事業者の方はまず他のサービスで指定を受けることが前提と覚えておきましょう。

② 基準第131条:事業所の体制(必要な3つの体制条件)

基準第131条では、重度障害者等包括支援を提供する事業所に求められる3つの運営体制について規定されています。以下の3点がポイントです。

  • 随時連絡対応: 利用者からの連絡にいつでも対応できる体制を整えておくこと。重度の障害がある方の日常では緊急の呼び出しや相談が起こり得ます。例えば夜間や早朝でもスタッフが電話等で対応できるオンコール体制を用意し、利用者や家族が困ったときにすぐ連絡・相談できるようにしておく必要があります。
  • 複数サービス提供: 2種類以上の障害福祉サービスを提供できる体制を確保すること。重度包括支援は一人の利用者に対して複数のサービスを包括的に提供する仕組みです。そのため事業所は、自社で複数のサービスを実施するか、他の事業者へ委託してでも複数サービスを提供できる体制を持たなければなりません。例えば自社で居宅介護しか行っていない場合でも、提携先に生活介護サービスを委託することで、利用者に両方のサービスを提供できるようにするといった対応が必要です。
  • 医療機関連携: 対象利用者の障害特性に応じた専門医のいる医療機関との協力体制を持つこと。重度包括支援の利用者は、人工呼吸器の装着や重度の知的障害を伴うなど、医療的ケアや専門的知識が必要なケースが多くあります。そのため事業所は、利用者の主たる障害に詳しい専門医がいる病院やクリニックとあらかじめ連携関係を結んでおくことが求められます。具体的には、緊急時に医療相談ができたり、定期的に健康状態について意見をもらえたりするような協力関係を築いておくと安心です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 事業開始には前提条件が必要: 重度障害者等包括支援は単独では始められません。必ず他の障害福祉サービス事業の指定や障害者支援施設の運営実績が必要です。新規起業の場合は、まず居宅介護や生活介護などの事業指定を取得し、その延長として重度包括支援の指定を目指す形になります。一足飛びに包括支援だけを始めることはできない点に注意してください。
  • 24時間対応とスタッフ確保: 利用者からの緊急連絡に24時間対応できるよう、オンコール体制や夜間・休日の連絡手段を整備しましょう。スタッフのシフト管理や緊急時のマニュアル準備が重要です。また、サービス提供責任者など必要な人員配置基準も満たす必要があります(重度包括支援ではサービス提供責任者を1名以上配置することが義務付けられています)。
  • 多機能なサービス提供体制: 重度包括支援では一人の利用者に対し複数のサービスを組み合わせて提供します。自社で全て賄えない場合は、他事業者との連携や業務委託契約を検討しましょう。例えば、在宅系サービスと通所系サービスを組み合わせるには、通所サービス事業所とのネットワーク作りが不可欠です。提供するサービスごとに必要な設備・人員基準を満たすことも忘れずに確認してください。
  • 医療との連携強化: 対象となる障害者の状態に応じて、協力医療機関を選定しましょう。利用者がALS等で人工呼吸器を使用しているなら神経内科や呼吸器内科の専門医、重度の知的障害や自閉症がある方なら精神科医や発達障害の専門医、といった具合に適切な専門医とのパイプを作ります。協力医療機関との連絡体制や緊急搬送時の手順も事前に取り決めておくと安心です。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。