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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十五 共同生活援助 3 運営に関する基準 (8)  運営規程

ループホーム運営規程のポイント:基準第211条の3をやさしく解説


記事の概要:
障害福祉サービス(共同生活援助、いわゆるグループホーム)の運営には、「運営規程」というルールブックが欠かせません。厚生労働省の解釈通知によれば、運営規程には事業運営の重要事項を定めることが義務づけられており、その具体項目は基準第211条の3に列挙されています。本記事では、運営規程に盛り込むべき項目のうち、特に第1号:事業の目的および運営の方針、第3号:入居定員、第4号:指定共同生活援助の内容、第10号:その他運営に関する重要事項(地域生活支援拠点等としての位置づけ)の4つに焦点を当てます。

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基準第211条の3 各号の解説

第1号:事業の目的および運営の方針

運営規程の冒頭には、必ず「当事業所は障害福祉サービス法第211条の3に基づく指定共同生活援助事業所である」と明示します。これにより利用希望者は「行政の基準を満たして指定を受けた正式なグループホーム」であることを一目で理解でき、適切な事業所選択の助けになります。その上で、「家庭的な雰囲気で自立支援を行う」など、あなたの施設が目指す支援の方向性を具体的に記載しましょう。

第3号:入居定員

「入居定員」は、そのグループホームに何人まで入居できるか(暮らせるか)を示す定員数です。運営規程では単に総人数を書くのではなく、ユニットや住居ごとの定員と全体の合計定員を定めます。たとえば、主たる共同生活住居6名・サテライト住居2名というように各住宅ごとの定員を示し、さらに事業所全体の合計人数(この例では8名)も明記します。ここで注意すべきは、体験利用の利用者も定員に含まれるという点です。お試し入居(体験利用)のために今まで使っていなかった部屋を活用する場合でも、その人も含めて定員オーバーにならないか確認が必要です。もし空き部屋を体験利用者受け入れに充てるような場合は、新たに定員変更の届出をしなければなりません。定員は行政から指定を受けた許可範囲でもあるため、勝手に超えて運営することはできません。将来的に定員を増やしたり減らしたりする場合は、必ず所定の手続きを踏みましょう。

第4号:指定共同生活援助の内容

「指定共同生活援助の内容」とは、グループホームで具体的に提供する支援サービスの中身を指します。入居者の日常生活を支えるためにどんなサポートを行うのか、項目ごとに具体的に書き出します。主なサービス内容の例として、以下のようなものがあります。

  • 相談援助(日常生活や将来についての相談対応)
  • 介護サービス(入浴、排せつ、食事の介助などの生活面の介護)
  • 健康管理支援(服薬の確認や健康状態のチェック等)
  • 金銭管理支援(金銭の管理方法の助言や見守り等)
  • 余暇活動の支援(余暇の過ごし方の提案や地域交流のサポート等)
  • 緊急時の対応(急病や事故発生時の連絡・付き添いなど)
  • 就労や日中活動の支援(日中の活動先との連絡調整や外出支援等)

各グループホームによって提供内容は異なるため、自事業所で実施している内容を漏れなく具体的に記載することが求められます。たとえば健康管理一つとっても、「服薬管理として毎日服薬チェックを行う」のか「通院同行を月に○回実施する」のかで具体策が違いますよね。このように具体的に書いておけば、利用希望者やご家族もサービス内容を理解しやすくなります。さらに、この第4号の項目には「利用者から受領する費用の種類およびその額」も含まれます。簡単に言えば、入居者が負担する利用料の内訳と金額のことです。家賃(月○円)や光熱水費(実費)、日用品費(○○円程度)といった項目を挙げて、その金額や算定方法を明示します。こうした費用情報も具体的に示すことで、後々のトラブル防止につながります。なお、体験利用を提供している場合は、そのことも運営規程に明記する必要があります。お試し利用を受け入れる旨を書いておけば、「体験利用ってできますか?」といった問い合わせにもスムーズに答えられるでしょう。

第10号:その他運営に関する重要事項(地域生活支援拠点等としての位置づけ)

「その他運営に関する重要事項」は、第1号~第9号に該当しないその他の大事な決まりをまとめる項目です。幅広い内容が含まれますが、特に近年重要なのが「地域生活支援拠点等」としての位置づけです。地域生活支援拠点等とは、障害のある方の地域生活を切れ目なく支えるために各地域に整備されている支援拠点のことです。具体的には、緊急時の受け入れや相談支援、親亡き後の見守りなど、地域で安心して暮らし続けるための機能を担う仕組みを指します。もし自分のグループホームがこの拠点の機能を担うのであれば、その旨を運営規程にしっかりと書き込み、自治体へ届け出て登録してもらう必要があります。たとえば「当事業所は〇〇市の地域生活支援拠点等事業所として、緊急時受入れ支援等の機能を担う」などと明記します。この他にも、「運営に関する重要事項」には苦情解決の仕組みや緊急時対応マニュアルなど、利用者の安心・安全に関わる事柄を追記するケースがあります。各事業所の特色や地域のニーズに応じて、上記の第1号~第9号に盛り込まれない事項でも重要と思われることはここに記載しておくと万全です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 運営規程は事業所の「顔」:運営規程に書かれた内容は対外的にも公開され、利用検討者が目にする可能性があります。単なるお役所向け書類ではなく、自社のサービスの特徴や理念をアピールするカタログでもあると捉えて、丁寧に作り込みましょう。目的・方針が抽象的すぎると他所との違いが伝わらないので、ぜひ自社ならではの強みを織り交ぜてください。
  • 定員管理と届出を徹底:入居定員は人員配置や収支計画にも直結する重要な数字です。開設時に設定した定員から逸脱しないのはもちろん、増員や減員、体験利用者の受け入れ開始など変化があれば速やかに自治体へ届出を行いましょう。行政への届け出は原則10日以内など期限が定められていますので見落とし厳禁です。定員オーバーは指導監査の対象となり得るため、日頃から利用者数の把握と調整を徹底してください。
  • サービス内容と費用は透明性を:提供サービスの範囲や利用者負担費用は、利用者・家族との信頼関係を築く上で透明性が不可欠です。運営規程に詳細を記載しておけば、「ここまでは支援するけど、ここから先は対象外」といった線引きも明確になります。また費用項目についても、後から「あれもこれも追加でお金がかかるの?」と誤解されないよう、最初から具体的に示しておくことが大切です。契約時に交付する重要事項説明書とも内容を一致させ、説明責任を果たしましょう。
  • 地域支援の役割も視野に:地域生活支援拠点等への参加は任意ですが、余力があれば是非検討したいところです。拠点機能を担う場合、先述の通り運営規程への明記と行政への届け出が必要になります。地域の安心拠点となることで事業所の信頼度も向上しますし、緊急時の受け入れ体制整備など事業の幅も広がります。自社の理念が「地域に開かれたグループホーム」であるなら、こうした公的役割を果たすのも有意義でしょう。ただし負担も増えますので、自社の体制と相談しながら決めてください。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。