共生型障害福祉サービス(短期入所)の基準をやさしく解説
記事の概要:
障害福祉サービス事業者や起業希望者向けに、本記事では「共生型障害福祉サービス」に関する最新の基準をやさしくシンプルに解説します。特に厚生労働省通知に示された指定事業者が満たすべき基準(基準第125条の2・第125条の3)と準用(基準第125条の4)のポイントを説明します。
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共生型障害福祉サービスの基準とは?
共生型障害福祉サービスとは、高齢者向けなど他制度で指定を受けた事業所(介護保険の短期入所施設や小規模多機能型居宅介護など)が、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスも併せて提供できる仕組みです。同じ事業所で高齢者と障害児者が一緒にサービスを利用できる点が特徴です。この共生型サービスを行うには、通常の障害福祉サービス事業と同等の基準を満たす必要があります。ただし、一部の基準には共生型向けの特例的な緩和や調整があります。
以下では、(1)指定事業者が満たすべき人員・設備等の基準と、(2)適用される基準(準用)について順番に説明します。
(1) 指定事業者が満たすべき基準(基準第125条の2・125条の3)
共生型サービスを提供したい事業者には、次のような人員や設備の条件が課されています。これは、高齢者向け施設等が共生型短期入所を行う場合の特例基準です。
- 職員の配置人数:サービス提供に当たる職員の数は、障害のある利用者と高齢者など他制度の利用者を合わせた合計の利用者数に対して十分でなければなりません(=高齢者と障害児者を全部合わせても職員が足りる状態であること)。
- 設備の基準(居室面積など):障害のある利用者が使う居室や宿泊室の広さについて基準があります。例えば高齢者向け短期入所施設なら、利用者1人あたり10.65㎡以上の居室スペースを確保する必要があります。また、小規模多機能型居宅介護事業所等で共同の宿泊室を使う場合は、1人あたり約7.43㎡以上の広さが目安とされています(複数人部屋でも一人ひとり必要な空間を確保すること)。
- 技術的支援の確保:障害のある方に適切なサービスを提供するために、専門的な支援や助言を受けていることも求められます。既に障害者向けサービスを行う事業所などからノウハウ提供や指導を受け、障害児者への対応力を高めておく必要があります。
以上をまとめると、「十分な職員配置」「利用者に見合った居室等の広さ」「専門機関からの技術的支援」という3点が重要です。
(2) 準用される基準と適用除外(基準第125条の4)
共生型サービスでは、上記の特例以外は通常の障害福祉サービスと同じ基準が適用されます(=準用)。運営規程の整備、管理者の配置、虐待防止や緊急時対応など、基本的な運営基準はすべて順守する必要があります。
一方で一部の規定は適用除外または緩和されています。代表的なものは次の2点です。
- 利用定員の扱い:通常は障害者のみの利用定員制限がありますが、共生型では高齢者施設側の定員内であれば、高齢者と障害児者の合計人数で定員を管理します。日によって高齢者○名+障害者○名と利用者の内訳が変わっても、合計が定員以内なら問題ありません。
- サービス提供空間の共有:高齢者と障害児者が同じフロアや居室でサービスを利用でき、専用のスペースを分ける必要がありません(※安全面の設備基準は従来どおり満たす必要があります)。
共生型サービスでは、高齢者と障害児者が「同じ場所でサービスを受ける」ことを前提に、通常の障害福祉サービスよりも規則がゆるく設定されています。特に、「利用定員」についてのルール(基準第123条第3号)が見直されました。通常は障害者向けのサービスであれば障害者だけの定員が決まっていますが、共生型サービスの場合、高齢者と障害児者を合わせた人数で管理してよい、という柔軟な仕組みに変更されました。つまり、日によって障害児者と高齢者の人数が変わっても、合計が決められた人数を超えなければ問題ない、という仕組みです。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 既存資源の活用:新たな専用施設を用意する必要はなく、現在の高齢者施設や設備をそのまま活用できます。ただし、バリアフリー化や一人あたりのスペース確保など、障害者受け入れに必要な環境整備は事前に確認・対応しましょう。
- 人員の確保と研修:利用者が増える分、十分な職員数の確保が不可欠です。スタッフには障害特性に関する基礎知識の研修を行い、必要に応じて専門家から助言を受ける仕組みも用意しておきましょう。
- 定員管理の徹底:高齢者と障害児者を合わせた合計定員を厳守することが大前提です。日々の利用予約をしっかり調整し、定員オーバーにならないよう注意しましょう。
