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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十五 共同生活援助 2 設備に関する基準 (3) 共同生活住居 後半

害者グループホームのサテライト型住居:通信機器の設置要件と入居定員基準をわかりやすく解説


記事の概要:
障害者グループホーム(指定障害福祉サービス「共同生活援助」)の運営には、サテライト型住居に関する特別なルールがあります。本記事では、厚生労働省の通知文書に基づき、特に ① サテライト型住居と本体住居に必要な通信機器の設置要件(通知項目④)と ② 共同生活住居の入居定員に関する基準(通知項目⑤)にフォーカスして解説します。難しい専門用語は避け、やさしくシンプルに説明します。

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サテライト型住居とは?本体住居との関係

まずサテライト型住居の意味を押さえておきましょう。サテライト型住居とは、グループホームの本体となる住居(以下「本体住居」)から少し離れた場所にある小規模な住まいのことです。通常、サテライト型住居には障害者の方1人が入居し、できるだけ一般の一人暮らしに近い環境で生活します。ただし完全に孤立して暮らすわけではなく、本体住居の入居者やスタッフと日常的に交流や支援を受けられる体制になっています。本体住居とサテライト型住居は原則として車など通常の交通手段で20分程度以内で行き来できる距離に設置されます。例えば、本体住居があるグループホームから歩いたり車で移動して20分以内の場所にあるアパートの一室をサテライト型住居とする、といったイメージです。

サテライト型住居の狙いは、「みんなと一緒のグループホーム生活」と「一人暮らしのニーズ」を両立させることです。将来は自立して一人暮らししたいという障害者の方でも、いきなり完全な一人暮らしは不安が伴います。サテライト型住居なら、本体住居でみんなと顔を合わせて食事や余暇活動に参加しつつ、夜間やプライベートな時間は自分専用の住まいで過ごすことができます。本体住居のスタッフは定期的(原則毎日)にサテライト型住居を訪問し、困りごとがないか確認したり生活支援を行います。このように、本体住居とサテライト型住居は一体的に運営され、利用者が安心して地域で暮らす橋渡しの役割を果たしています。

通知項目④:サテライト型住居と本体住居に必要な通信機器の設置要件

サテライト型住居を導入するグループホームでは、本体住居とサテライト型住居の双方に通信機器を設置することが厚生労働省の通知で求められています。具体的には、「サテライト型住居の入居者から本体住居側へ適切に連絡や通報ができるように、それぞれの住居に必要な通信機器を備えること」と定められています。

この通信機器とは、例えば電話やインターホン、緊急通報装置などが考えられます。難しい設備である必要はなく、通知では「必ずしも本体住居に固定電話を置く必要はなく、携帯電話でも差し支えない」と示されています。要するに、サテライト型住居に住む利用者さんが困ったときや緊急時にすぐ本体住居のスタッフに連絡できる手段を用意しましょう、ということです。逆に言えば、本体住居のスタッフ側も常に連絡を受け取れるようにしておく必要があります。例えば、本体住居の常勤スタッフが携帯電話を持ち、サテライト入居者から電話を受けられるようにしておけば、この要件は満たせます。またサテライト側にも使いやすい電話機や通報ボタンを用意しておくと安心です。

通知項目⑤:共同生活住居の入居定員に関する基準

続いて、グループホームの「共同生活住居の入居定員」についての基準を解説します。共同生活住居とはグループホームで障害者が共同生活を送るための住まいの単位を指し、一般的には一戸の住宅やユニットを意味します。厚生労働省の基準では、1つの共同生活住居に入居できる障害者の人数は原則として「2人以上、10人以下」と定められています。つまり、グループホームは最低でも2人での共同生活になり、一つ屋根の下で暮らせる人数は最大10人までというのが基本ルールです。グループホームは大人数ではなく少人数で家庭的な暮らしを営む場という考えに基づいています。

しかし、例外的にもう少し多い定員を認めるケースも通知で示されています。以下に主なケースとその条件を整理します:

  • ケース①:既存建物を利用する場合(定員上限20人)・・・すでに存在する大きな建物(例えばもともと寮だった建物や空いている介護施設など)をグループホームの共同生活住居として転用する場合は、2人以上20人以下まで入居定員を認める扱いになっています。これは、新築ではなく既存の建物活用を促す経過措置的な意味合いがあります。古い建物を有効活用したい場合、多少大規模でも最大20人まで一つの住居として運営できるということです。ただし20人はあくまで上限であり、それだけの人数が暮らす場合には居室や共有スペースの広さ、人員配置など相応の環境を整える必要がある点は言うまでもありません。
  • ケース②:地域にグループホームが足りない場合(定員上限30人)・・・地域(都道府県)によっては障害者グループホームの数や定員が、行政が計画している水準より不足しているところがあります。そのような供給不足の地域で、かつ都道府県知事が特に必要と認めた場合には、一つの共同生活住居に21人以上30人以下まで入居させることが認められます。要するに「この地域はグループホームが少なくて入居待ちの障害者が多い、だから特別に大人数受け入れ可能なグループホームを作ろう」というケースです。ただしこの特例を使うには行政の事前の承認が必要であり、誰でも自由に30人規模のグループホームを開設できるわけではありません。実務的にも、20人を超える大人数のグループホームはスタッフ体制や設備の確保が非常に大変ですので、本当に地域事情でやむを得ない場合の最終手段と言えます。
  • ケース③:都市部で用地確保が困難な場合(定員上限30人、増員不可)・・・大都市などでは土地や建物を新たに確保することが難しく、既存のグループホームを小さい住居に分割したくても物件が他にないという問題が起こり得ます。そこで、都市部等で土地取得が極めて困難な地域において、すでに入居定員が10人以上あるグループホームの建物を建て替える場合に限り、都道府県知事の特別な承認のもとで2人以上30人以下の入居定員を維持することができます。ただし、この場合でも建て替え後の入居定員は建て替え前(元の建物)の入居定員を上限とする決まりがあります。つまり、建て替えだからといって勝手に定員を増やすことはできず、あくまで「元々大人数だったグループホームをやむを得ず同じ人数規模で続けることを特例的に認める」趣旨です。例えば、定員15名の既存グループホームを老朽化で建て替える際、新しく2か所に分ける土地が確保できないなら、新築後も15名一緒の住居として運営することが認められる、といったイメージです。この特例も都道府県への事前相談と許可が必要になります。

以上のケースを表にまとめると次のようになります:

共同生活住居の種類入居定員の基準条件・備考
原則(新規開設のグループホーム)2人以上~10人以下基本の定員範囲(少人数の家庭的な運営)
既存建物の活用場合2人以上~20人以下元寮・寄宿舎など大規模建物を転用するケース
地域でGH不足・特別に必要な場合21人以上~30人以下地域で供給不足の場合に知事が承認
都市部で分割困難・建て替えの場合2人以上~30人以下 ※上限あり大都市等で代替物件がない場合に知事が承認
※建て替え前と同じ人数まで

グループホーム運営者は、自身の施設がどのケースに該当するかを把握し、定員基準を遵守することが求められます。ほとんどの新規グループホームは原則どおり「1住居あたり2~10人以下」で計画すれば問題ありません。一方、既存の大きな建物を利用したり特例的な大規模ホームを検討している場合は、事前に所轄の行政(都道府県や政令市など)に相談し、基準に合致した運営形態か確認することが大切です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • サテライト型住居と通信機器の設置:サテライト型住居(1人用の分散住居)を運営する場合は、本体住居とサテライト双方に入居者が連絡できる通信手段(電話等)を必ず用意しましょう。固定電話でなく携帯電話でもOKですが、非常時に24時間連絡が取れる体制を整えることが重要です。
  • 共同生活住居の定員基準:グループホーム1住居あたりの入居者数は原則2~10人です。例外として既存の大きな建物では最大20人、地域にGH不足で行政が特に許可した場合は21~30人、都市部で代替がなく既存GHを建て替える場合も従来定員を上限に最大30人まで認められます。それ以外で勝手に定員を増やすことはできません。


※用語解説:本記事では「障害者グループホーム」という一般的な呼称を用いましたが、制度上の正式サービス名は「共同生活援助」です。またサテライト型住居等の基準は厚生労働省通知に基づいており、自治体によって細かな運用が異なる場合がありますので、開設時には必ず所轄行政に最新の基準を確認してください。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。