就労選択支援における「評価及び整理の実施(基準第173条の7)」のポイント
記事の概要:
就労選択支援は、厚生労働省が新たに設けた障害福祉サービスです。障害のある人が「働きたいけれど、自分に合う働き方がわからない…」という悩みに対して、短期間の作業体験と専門家による評価(アセスメント)を通じて、本人に適した就労先や支援の選択を手助けします。本記事では、厚生労働省の通知文書で示された「(2)評価及び整理の実施(基準第173条の7)」の内容を中心に、そのポイントをやさしくシンプルに解説します。
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就労選択支援とは?
就労選択支援は障害者総合支援法にもとづき、障害のある方が自分に適した働き方を選ぶためのサポートを行う制度です。法律上は、短期間の作業などを通じて働く上での適性や能力を評価し、働く希望や必要な配慮事項を整理し、その結果に基づいて関係機関と連絡調整を行うサービスと位置付けられています。簡単に言えば、ごく短い期間で仕事の体験と専門的な評価を行い、その人に合った就職先や支援サービスの選択につなげるものです。
背景には、障害のある人が一度就労継続支援A型・B型などの作業所を利用し始めると、ずっと同じ場所に留まりがちになる課題がありました。就労選択支援は、こうした固定化を防ぎ、次のステップへ進む後押しをするために創設されたのです。
「評価及び整理」の実施(基準第173条の7)のポイント
就労選択支援では、利用者一人ひとりについて評価(アセスメント)と情報の整理を行います。まず、事業者(就労選択支援事業所)は以下のような項目について利用者の状況を把握します:
アセスメントは対面で行い、利用者の作業や対人コミュニケーションの様子を直接観察することが重視されます。ただし、ケース会議での検討や結果の説明など対面が難しい場面ではオンライン(テレビ電話等)の活用も可能です。
また、他の機関(例:障害者職業センター)が過去1年以内に行った評価結果があれば、その情報を参考にできます。ただし、その評価で不足・更新が必要な内容があれば、事業者が追加で評価を行って補う必要があります。
利用者の状況に大きな変化(環境や健康状態の変化等)があった場合は、前回の評価から1年経過していなくても再度評価を行えます。常に新しい情報で利用者の状態を把握するようにしましょう。
なお、関係機関と連携してケース会議(カンファレンス)を開く際には、共有する前に本人の書面同意を得る必要があります。個人情報の取扱いには十分配慮してください。
さらに、就労選択支援事業所は計画相談支援事業所(サービス等利用計画を作成する相談支援機関)と密接に連携します。評価結果は本人の同意のもと速やかに計画相談支援員と共有され、サービス等利用計画の見直しに活用されます。これにより、評価結果に基づいて利用者が就労移行支援や就労継続支援など次に適したサービスにつながりやすくなります。
関係機関との連絡調整等(基準第173条の8)の概要
指定就労選択支援事業者は、毎日の支援内容を記録することが義務付けられています。この記録には、その日提供した支援がどんな内容だったかを具体的に書き留めておく必要があります。もし、基準で決められている支援内容の一部が実施されていない場合、その支援が「適切に行われた」と認められず、報酬(支払われる料金)を受け取れないことになります。例えば、就労選択支援の一環としてアセスメントや支援が一部省略されている場合、それに対する報酬は算定されません。
ただし、利用者の都合で支援が途中で中断された場合(例えば、利用者が体調不良で支援が中止になった場合など)は、このルールが適用されず、報酬は引き続き算定されます。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 評価すべき項目は多岐にわたる:就労選択支援事業者は、障害の種類や程度、就労希望、必要な配慮、適切な作業環境など、様々な評価項目を把握する必要があります 。
- アセスメントは対面での観察が基本:利用者の作業やコミュニケーションを直接観察し、その様子を踏まえて評価します。対面での実施が原則ですが、オンライン活用も可能です 。
- 他機関の評価結果を活用できる:障害者職業センターなど、他機関で1年以内に実施されたアセスメント結果を参考にすることができます。その場合、不足している部分は追加で評価を行います 。
- 利用者の状況に変化があった場合、再評価を実施:利用者の健康状態や生活環境に大きな変化があった場合には、前回の評価から1年が経過していなくても再度アセスメントを行います 。
【免責事項】
