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独習 障害福祉サービス 指定基準 | 第十一  就労継続支援A型 1 人員に関する基準

労継続支援A型:職業指導員・生活支援員の人員基準


記事の概要:
就労継続支援A型は、障害のある方が安定して働ける場を提供する障害福祉サービスです。一般の会社で働くことが難しい人でも、サポートを受けながら働く機会を得て、自立した生活を目指せるようにすることが目的です。こうしたA型事業所を運営・起業するには職業指導員と生活支援員の配置など、法律で定められた人員基準を守らなければなりません。本記事では、この就労継続支援A型の制度趣旨・理念・背景を簡単に紹介し、厚生労働省の通知文書にある職業指導員・生活支援員の人員基準について、やさしくシンプルに解説します。

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就労継続支援A型とは?制度の目的と背景

就労継続支援A型(以下、A型)は、障害を持つ方が雇用契約を結んで働くことのできる福祉サービスです。簡単に言えば、一般企業で働くのが難しい障害のある人に対して、会社と社員の関係を結び、給料をもらいながら働ける職場を提供する制度です。例えば、体力やコミュニケーション面で一般企業での勤務が難しい人でも、A型事業所なら支援スタッフの助けを受けつつ自分のペースで働けます。その結果、社会参加や経済的自立(自分で収入を得て生活すること)を後押しすることがA型の理念です。

背景として、2013年の「障害者総合支援法」施行時に就労継続支援A型が創設されました。従来からあった就労継続支援B型(雇用契約のない形態)との大きな違いは、A型では利用者が事業所と雇用契約を結ぶ点です。つまりA型利用者は法律上「労働者」として位置づけられ、働いた時間に応じて最低賃金以上の給与を受け取ります。これにより障害のある方でも一般の労働者と同じように権利を持ち、安定した収入を得られるよう支援しています。A型事業所は、このように「働く場の提供」と「収入の保障」を通じて障害者の自立をサポートする重要な役割を担っています。

職業指導員と生活支援員ってどんな役割?

A型事業所で働く利用者を支えるスタッフとして、「職業指導員」と「生活支援員」の2つの職種が必ず置かれます。職業指導員は、利用者と一緒に作業をしながら仕事の技術指導や職業訓練を行う役割です。利用者がその人なりの力を発揮できるように、例えば作業手順を教えたり、生産活動で必要なスキルを丁寧にサポートしたりします。一方、生活支援員は、利用者の日常生活面の支援を担当する役割です。身だしなみや健康管理といった身の回りの世話から、作業中のちょっとした困りごとの手助けまで、生活全般にわたって利用者を支援し、自立を促します。簡単に言うと、職業指導員が「仕事の先生」なら、生活支援員は「暮らしのサポーター」のような存在です。両者が連携して利用者の働くことと暮らすことの両面を支え、安心して働ける環境を整えています。

職業指導員・生活支援員の人員配置基準をやさしく解説

それでは、A型事業所における職業指導員・生活支援員の人員配置基準(配置ルール)について、具体的に見ていきましょう。厚生労働省の定める基準では、次のようなポイントが規定されています:

利用者10人につき職員1人以上を配置すること(常勤換算)

※「常勤換算」とは、非常勤(パート)職員の勤務時間を合計し、フルタイム職員何人分に相当するか計算する方法です。例えば週20時間勤務のパート2人は常勤換算で1人分になります。法律では、この常勤換算による人数で、利用者の数を10で割った数以上の職員を置くよう求めています。簡単に言えば、利用者10人につき最低1人の支援スタッフが必要ということです。利用者が20人なら2人以上、30人なら3人以上…といった具合に、利用者が増えればそれに応じてスタッフも増やさなければなりません。

職業指導員と生活支援員をそれぞれ最低1名ずつ配置すること

上記の「10人に1人」という人数は、職業指導員と生活支援員の合計人数についての決まりですが、どちらか片方だけを置けばよいというわけではありません。法律上、職業指導員も生活支援員も両方とも各1名以上は配置する必要があります。極端な例ですが、職業指導員だけ2人で生活支援員が0人、といった体制は認められません。必ず両方の職種の職員を置いて、利用者の仕事面と生活面の両方をサポートできるようにする狙いがあります。

少なくとも1名以上の常勤(フルタイム)職員を含めること

職業指導員と生活支援員のスタッフの中には、最低1人は常勤職員(フルタイムで働く人)を含めなければなりません。つまり全員が非常勤(パート)ではダメで、誰か一人はフルタイム勤務のスタッフが必要です。常勤職員がいることで、安定した支援体制を維持しやすくなるための条件です。

以上が基準の主な3点です。加えて細かい決まりとして、職業指導員・生活支援員の必要人数の計算は「利用者である障害者の人数」に基づいて行うと定められています。A型では利用者全員が事業所と雇用契約を結んで働いていますが、仮に雇用契約を結んでいない利用者がいる場合でも人数に含めて計算しますよ、という意味です(専門的には「雇用関係の有無を問わず」と表現されています)。要は利用者の数が基準だと押さえておけば大丈夫です。

なお、現在A型事業所の人員配置基準には「10:1」と「7.5:1」の二通りがあります。先ほど説明したのは通常の10:1基準ですが、より手厚く利用者7.5人につき職員1人以上配置するパターンも存在します。人員体制を手厚くすると事業所が受け取る報酬単価(利用者1人あたりの給付額)が上がる仕組みで、余裕があれば7.5:1で運営する事業所もあります。ただし最低ラインとして求められるのは10:1ですので、起業当初はまずこの基準を確実に満たすことが大切です。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 最低2名の職員確保:就労継続支援A型事業を開始するには、必ず職業指導員1名以上+生活支援員1名以上を配置しなければなりません。利用者が少なくても両職種が必要であり、事実上スタッフ2名体制が最低条件です。またそのうち1名は常勤にする必要があるため、人件費や採用計画に入れておきましょう。これを満たさないと事業所の指定許可がおりず開業できません。
  • 利用者数と職員数のバランス管理:開業後も人員配置基準を維持し続けることが重要です。利用者の増減に対して職員の常勤換算人数が不足しないよう、1人当たり10人の割合を下回らない職員配置を意識しましょう。万一、スタッフが退職したり病休したりして基準を割り込むと、早急な補充が必要です。基準を満たせない状態が続くと、報酬の減額(人員欠如減算)などペナルティの対象になります。事業運営上、人員配置は常に余裕をもって計画し、安定したサービス提供体制を確保することが大切です。

【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。