就労継続支援A型における「利用者及び従業者以外の者の雇用」とは?
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就労継続支援A型事業所では、障害のある利用者(サービス利用者)だけでなく、障害のない一般の人を一緒に働かせることはできるのでしょうか? 本記事では、厚生労働省の通知にある「(8)利用者及び従業者以外の者の雇用(基準第196条)」について、やさしくシンプルに解説します。
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「利用者及び従業者以外の者」とは?
まず、「利用者及び従業者以外の者」とは、その事業所の利用者でもスタッフ(従業者)でもない人のことです。就労継続支援A型事業所で働く障害者以外の一般の従業員を指し、ここでは便宜上「外部作業員」と呼びます。例えば、A型事業所がパン工房を運営している場合、障害のある利用者さん以外に、健常者の作業スタッフを雇うケースがこれに当たります。
外部の人を雇用できるの?
はい、雇用できます。ただし、法律で決められた上限内に限られます。厚生労働省の通知によると、就労継続支援A型事業所は外部作業員を利用定員の規模に応じた数まで雇用できると定められています。ここでいう「利用定員」とは、その事業所が同時に受け入れ可能な障害者の数(定員数)のことです。事業規模に見合った範囲であれば、障害のない人もスタッフとして雇って生産活動に従事させることが可能なのです。
雇用できる人数の上限はどれくらい?
外部作業員として雇用できる人数の上限は事業所の利用定員(定員数)によって異なります。法律上は次のように区分されています:
- 定員10~20人の場合:定員数の50%まで(半数まで雇用可能)
例:定員10人なら5人まで、20人なら10人まで
- 定員21~30人の場合:10人または定員数の40%のいずれか多い方まで
例:定員30人なら40%は12人なので12人まで雇用可能
- 定員31人以上の場合:12人または定員数の30%のいずれか多い方まで
例:定員50人なら30%は15人なので15人まで雇用可能
つまり、小規模な事業所ほど外部作業員を多めに雇うことが認められていますが、大規模になるほど割合が抑えられ、常に障害者が職場の中心となるよう配慮されています。なお、この上限人数には管理者や職業指導員・生活支援員など法律で配置が義務付けられているスタッフ(基準第186条の従業者)は含みません。これらのスタッフは別途必要数を配置した上で、追加の戦力として外部作業員を雇うことができるという仕組みです。
なぜ人数に制限があるの?
就労継続支援A型は「障害者に働く場を提供すること」が目的の事業です。そのため、事業所が障害のない人ばかりになっては本末転倒です。法律で外部作業員の人数制限を定めることで、障害のある利用者の雇用機会が守られるようにしています。厚生労働省も通知の中で、事業所は利用者のためのものであることに鑑み、障害者以外の人を雇う場合はその人数によって利用者の賃金や工賃が下がらないよう十分配慮することと注意喚起しています。要するに、健常者の作業員を増やしすぎて障害者の仕事が奪われたり、給料が減ったりしないようにしましょう、ということです。
実務上のポイント
実際に事業運営する上では、外部作業員の雇用比率に気を付けることが重要です。定員に対する外部作業員の割合が上記の基準を超えてしまうと、運営基準違反となり指定取消し等のリスクもあります。新規にA型事業を立ち上げる際は、事業計画の段階で「自社が雇用できる健常者スタッフは何人までか」を算出し、その範囲内で人員計画を立てましょう。また、既存の福祉作業所(福祉工場)からA型事業所に移行する場合で、すでに基準以上の外部作業員を抱えているケースでは、一定期間内に基準を満たす計画を提出すれば暫定的に超過を認める特例もあります。しかしこれは例外的措置ですので、基本は常に基準範囲内で運営することを心がけてください。
事業者・起業希望者が押さえるべきポイント
- 障害者以外の人も雇用可能:就労継続支援A型では、利用者でもスタッフでもない一般の人(健常者)を作業員として受け入れることができます。ただし、事業所ごとに定められた定員に応じた上限人数までという制限があります。
- 上限人数の目安:小規模事業所(定員10~20人)は定員の約半数まで、中規模(21~30人)はおよそ4割(最低10人)まで、大規模(31人以上)はおよそ3割(最低12人)までと覚えておきましょう。法定スタッフ(管理者・支援員など)は別枠なので、この上限には含まれません。
- 利用者の利益を最優先:障害者の働く場が主役であることを忘れずに。健常者ばかり増やして利用者の仕事機会や賃金(工賃)が減ってしまう事態はNGです。外部作業員の雇用はあくまで補助的に行い、利用者の就労支援と事業運営のバランスに配慮しましょう。
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